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第145首 乱れ髪の心
ゆめかなお みだれそめぬる あさねがみ またかきやらん すえもしらねば
昨夜あの人と会ったことは夢なのだろうか。
二人過ごした時間のはかなさを思うと心乱れてしまう。
その心を映したように乱れるわたしの髪。
この髪をまたあの人がなでてくれる将来があるのか分からない。
【ちょこっと古語解説】
○か……疑問を表す助詞。
○なほ……やはり、の意。
○みだれそめ……元の形は「みだれそむ」で、「乱れはじめる」の意。
○ぬる……元の形は「ぬ」で、完了を表す助動詞。「~た・~てしまった」くらいの訳。
○かきやら……元の形は「かきやる」で、「髪をすく」こと。
○む……婉曲を表す助動詞で、訳には表れない。
○末……将来、のこと。
○ね……元の形は「ず」で、打消を表す助動詞。
○ば……ここでは、「~なので」と原因・理由を表す助詞。
夢かなほみだれそめぬる朝寝髪またかきやらむ末もしらねば(風雅和歌集)




