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第144首 月を見ても
つきはただ むかうばかりの ながめかな こころのうちの あらぬおもいに
夜の空に月が輝いている。
美しいその姿を、楽しめない。
ただ目を向けて眺めているというだけ。
せっかく月を見ているというのに、どうしても別のことを考えてしまう。
それはあの人のこと。
今頃何をしているんだろう。
【ちょこっと古語解説】
○ながめ……ここでは単に「眺めること」の意だが、「物思いにふけること」の意もおさえておきたい。
○かな……詠嘆を表す助詞。「~だなあ」くらいの訳。
○あらぬ……「ほかの・別の」の意。
月はただ向かふばかりのながめかな心のうちのあらぬ思ひに(風雅和歌集)




