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第142首 悩ましい月
まちいでても いかにながめん わするなと いいしばかりの ありあけのそら
有明の月を見てぼくのことを思い出してほしい――。
あの人がそんなことを言ったばかりに夜を明かしてしまった。
一人きり、月を待つ。
いざ有明の月を眺めたら、どんな気持ちになることだろう。
【ちょこっと古語解説】
○いかに……どのように、の意。
○ながめ……元の形は「ながむ」で、ここでは「眺める」の意だが、「物思いにふける」という意味もある。
○む……推量の助動詞。「~だろう」くらいの訳。
○有明……まだ月が空に残っているうちに夜が明ける、その頃の夜明けのことをいう。
待ち出でてもいかにながめむ忘るなといひしばかりの有明の空(続後拾遺和歌集)




