第14首 再会後の恋
いそのかみ ふるのなかみち なかなかに みずはこいしと おもわましやわ
(紀貫之)
神社にお参りに行った帰り道のことだった。
長く続く道の先にきみの姿を見た。
もう二度と会うことはないと思っていたのに。
もしも再会しなかったら、今頃、きみのことを恋しいと思っただろうか。
いや、再会してしまったからこそ、かえってきみのことが恋しいんだ。
【ちょこっと古語解説】
○石上、布留……奈良県天理市の地名。石上神宮という有名な神社がある。
○なかなかに……「かえって」の意
○見ずは……「ずは」で、「もし~しないなら」の意。「見」は、「見る」で、「会う」の意だから、「見ずは」で「もし会わないなら」くらいの訳になる。
○ましやは……「まし」は「反実仮想」という用法の助動詞で、「もしも~だったら―だろう」という意を表します。「やは」は、「反語」という用法で、「…だろうか、いや…ではない」という、何かを尋ねるふりして否定してしまう自己完結的な用法。二つ合わせて、「もしも~だったら…だろうか、いや…ではない」くらいの訳になります。
石上布留の中道なかなかに見ずは恋しと思はましやは
(古今和歌集)




