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第136首 月を記念に
つきをだに みしよのかげと おもいいでよ ちぎりのすえは あらずなるとも
せめてあのときの月のことだけでも覚えていてほしい。
思い出してほしい、ぼくたちが過ごした夜の面影として。
一緒になろう、と交わした誓い。
その約束が、叶えられないことがあったとしても。
【ちょこっと古語解説】
○だに……「せめて~だけでも」と、最小限の限度を表す助詞。
○見しよ……「見」は、元の形は「見る」で、ここでは、単に視界に入れる意ではなく、男女が共に夜を過ごす・結婚する、意である。「し」は、過去を表す助動詞。「よ」は「夜」のこと。全体で、「わたしとあなたが過ごした夜」くらいの訳。
○かげ……面影。心に思い浮かべる顔や姿のこと。
○契り……約束のことで、ここでは、男女の間の恋の約束のこと。
○あらず……「あら」は元の形は「あり」で、何かが存在すること。「ず」は打消を表す助動詞。全体で、「存在しない」くらいの訳。
○とも……逆接仮定を表す助詞で、「たとえ~としても」くらいの訳。
月をだに見しよのかげと思ひ出でよ契りの末はあらずなるとも(続千載和歌集)




