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第132首 旅の空から
わかれても いくありあけを しのぶらん ちぎりていでし ふるさとのつき
離れずにいられたときでさえ、あの人と見た有明の月が慕わしかった。
別れたら何度その月を恋しく思うか知れない。
きっと帰って来る、と約束して故郷を出た。
あの人も有明の月を見て、わたしを思い出してくれるだろうか。
【ちょこっと古語解説】
○有明……夜が明けてもまだ空に残っている月。
○しのぶ……思い慕う、意。
○らむ……本来は、現在推量の助動詞で、「今頃~しているだろう」くらいの訳だが、ここでは、単なる推量の意で、「これから~だろう」くらいの訳。
○契り……元の形は「契る」で、約束する、の意。
○し……元の形は「き」で、過去を表す助動詞。
○古郷……生まれ故郷、のこと。
わかれても幾有明をしのぶらむ契りて出でし古郷の月(続千載和歌集)




