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第129首 雲の思い出
いまさらに そのよもよおす くものいろよ わすれてただに すぎしゆうべを
何ということもなく過ごしていた夕暮れ時。
ふと見上げると、美しくはかない色に染まる雲。
昔、彼女と付き合っていたころのことを、今、思い出してしまった。
【ちょこっと古語解説】
○世……「世の中・世間」という意味もあるが、ここでは、男女の仲、のこと。恋の和歌ではこの意味も覚えておきたい。
○もよほす……「引き起こす・誘い出す」の意。
○し……元の形は「き」で、過去を表す助動詞。「~た」くらいの訳。
○夕べ……「夕暮れどき・夕方」のこと。
今更にその世もよほす雲の色よわすれてただに過ぎし夕べを(玉葉集)




