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第13首 恋を隠そう
きみがなも わがなもたてじ なにわなる みつともいうな あいきともいわじ
(詠み人知らず)
きみがぼくを好きだとか、ぼくがきみを好きだとか、そんなことを言いふらすつもりはないよ。
難波に、港の御津があるだろう。
その「みつ」じゃないけど、ぼくを「見つ」、つまり、ぼくに会ったなんてことは言わないでくれ。
ぼくもきみに会ったなんてことは言わないから。
【ちょこっと古語解説】
○君が名も我が名も立てじ……「名を立つ」で、「付き合っているという噂が立つ」の意。「じ」は、打消意志を表す助動詞で、「~するつもりはない」という意味。第3首に同じ。全体で、「あなたの噂もわたしの噂も立てるつもりはない」くらいの訳。
○難波……現在の大阪市にあった港。
君が名も我が名も立てじ難波なる見つともいふな逢いきともいはじ
(古今和歌集)




