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第128首 思い通りに
あうたびに これやかぎりと おぼえしを げにありはてぬ なかとなりぬる
あの人と会って夜を共にするたび考えていた。
もしかしたら今夜が最後なのかなって。
そんなことを思っていたら、本当にそうなってしまった。
途中で終わってしまう仲に。
【ちょこっと古語解説】
○逢ふ……単に会うだけではなく、男女が夜を共に過ごすことまで指す。
○や……疑問を表す助詞。
○おぼえし……「おぼえ」は、元の形は「おぼゆ」で、「思われる」という意味。「し」は、元の形は「き」で、過去を表す助動詞。全体で、「思われた」くらいの訳。
○げに……本当に。
○ありはてぬ……「ありはて」は、元の形は「ありはつ」で、「最後まで持続する」意。「ぬ」は、元の形は「ず」で、打消を表す助動詞。全体で、「最後まで持続しない」という意。
○中……仲、のこと。
○ぬる……元の形は「ぬ」で、完了を表す助動詞。「~た、~てしまった」くらいの訳。
逢ふたびにこれや限りとおぼえしをげにありはてぬ中となりぬる(玉葉集)




