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第118首 人知れぬ涙
はるさめの さわへふるごと おともなく ひとにしられで ぬるるそでかな
春の空から雨が沢へと降る。
その音の静けさ。
空にならって、わたしもひそやかに泣く。
その声は、誰に聞こえることもない。
【ちょこっと古語解説】
○さは……谷川、のこと。あるいは、湿地、のこと。
○ごと……「~のように」の意。
○人……この和歌では「他人」の意だが、和歌で「人」とあったら、まず「恋しいあの人」の意でとらえるのがよい。
○で……「~ないで」の意。
○袖……和歌で袖が出てきたら、涙を表現するものとしてとらえておく。袖は涙を拭うためにあります。
春雨のさはへふるごと音もなく人に知られで濡るる袖かな(玉葉集)




