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第115首 夢にできず
わすれねよ ゆめぞといいし かねごとを などそのままに たのまざりけん
忘れてしまいましょう、このことは夢として……。
あの夜二人で言い交わした約束の言葉。
どうしてあの言葉通りにしなかったのだろう。
夢として忘れていさえすれば、今これほど苦しむことはなかったのに。
【ちょこっと古語解説】
○ねよ……元の形は「ぬ」で、完了を表す助動詞、その命令形。「~てしまえ」くらいの訳。
○かねごと……前もって言っておく言葉。約束のこと。
○など……どうして。
○たのま……元の形は「たのむ」で、「頼りにする」
○ざり……元の形は「ず」で、打消を表す助動詞。
○けむ……過去の推量を表す助動詞。「~ただろう」くらいの訳。
忘れねよ夢ぞと言ひしかねごとをなどそのままにたのまざりけむ(新後撰和歌集)




