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第106首 恋心の行方
こいしなん ゆくえをだにも おもいいでよ ゆうべのくもは それとなくとも
君を思って、その思いが過ぎて、僕はまもなく死ぬだろう。
そのときには、せめて思い出してほしい、この恋心の行く先を。
僕の思いは、まっすぐに君の元へと飛ぶだろう。
夕空にそれらしい雲なんか見えないかもしれない。
それでもなお、僕の思いは君のそばにある。
【ちょこっと古語解説】
○む……推量を表す助動詞で、「~だろう」の意。
○ゆくへ……行き先、のこと。
○だに……「せめて~だけでも」と最小限の限度を表す。
○夕べ……夕暮れどき、のこと。
恋ひ死なむゆくへをだにも思ひ出でよ夕べの雲はそれとなくとも(続拾遺和歌集)




