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第105首 恋は続いて
おもうにも よらぬいのちの つれなさは なおながらえて こいやわたらん
彼女のことをいくら思って苦しんでもそれで死んでしまうわけじゃない。
この命の無情。
このまま生きながらえて、彼女のことを恋し続け、これからも苦しむことになるのだろうか
【ちょこっと古語解説】
○よらぬ……「よら」の元の形は「よる」で「(心が)寄る、傾く」の意。「ぬ」の元の形は「ず」で「~ない」という打消しの意。全体で、「(心が)傾いてくれない」くらいの訳。
○つれなさ……ある状態にうまく連動してくれない様子を表す。無関係だ、の意。ここでは、死にそうなくらい彼女のことを思っているのに、実際には死なないことを、「命のつれなさ」と表現している。
○ながらへ……元の形は、「ながらふ」で、「生きながらえる」の意。
○や……疑問を表す助詞。
○わたらむ……「わたら」は元の形が「わたる」で、何かが続く意。「む」は推量を表す助動詞。全体で、「続くのだろうか」くらいの訳。
思ふにもよらぬ命のつれなさは猶ながらへて恋ひやわたらむ(続拾遺和歌集)




