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第104首 涙の責任は
おもいかね なおよにもらば いかがせん さのみなみだの とがになしても
あなたへの思いがあふれて、それは時に涙となってあらわれる。
それを見とがめられて、この恋心が世の中にもれてしまったらどうしよう。
世にもれたのは、わたしがもらした涙のせい。
でも、わたしが泣いたことのせいばかりにしていてもしようがない。
どうしてわたしが泣いているのか、その理由こそ問題なのだから。
【ちょこっと古語解説】
思ひかね……「かね」の元の形は「かぬ」で、「~することに耐えられない」の意。全体で、「思うことに耐えられない」くらいの訳となり、ここでは、「あなたをただ思い続けることが苦しくて耐えられない」という意味か。
なほ……そのまま、の意。
もらば……「もら」の元の形は、「もる」で、「(秘密などが)他に知られる、ばれる」の意。「ば」は、仮定を表す助詞で、「~したら」の意。全体で、「他に知られたら」くらいの訳。
とが……過失、の意。
思ひかねなほ世にもらばいかがせむさのみ涙のとがになしても(続拾遺和歌集)




