103/297
第102首 知る前の昔
きみをまだ みずしらざりし いにしえの こいしきをさえ なげきつるかな
あなたと出会って恋に落ちたの。
楽しくて嬉しくて喜びにあふれる日々。
でも、この頃では、ため息ばかり。
恋が素晴らしいことばかりじゃないことを知ったわ。
まだあなたと出会っていなかった昔。
今では、その頃のことが恋しい。
何も知らなかったときの方がかえって今よりも幸せだったかも。
そう思うと、それさえもため息の原因。
【ちょこっと古語解説】
○し……元の形は「き」で、過去を表す助動詞。
○いにしへ……昔、のこと。
○つる……元の形は「つ」で、完了を表す助動詞。
君をまだ見ず知らざりしいにしへの恋しきをさへ歎きつるかな(続古今和歌集)




