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第10首 恋を拒んで
みるめなき わがみをうらと しらねばや かれなであまの あしたゆくくる
(小野小町)
あなたはまるで無駄なことをしている漁師のよう。
海藻さえ生えない海岸に足がだるくなるまで通っている。
そんなに通ってきても、わたしはあなたに会うつもりなんかないのよ。
【ちょこっと古語解説】
○みるめ……二つの語を掛けている。一つは、「海松布」で、海藻の一種。現在は食用としてはちょっと馴染みが無い感じ。もう一つは、「見る目」で、見るが「会う」という意味であることから、「会う機会」くらいの意味になる。
○ばや……第5首、6首に同じ。「~だからだろうか」の意。
○かれ……「離れる」の意。
○あま……「漁師」の意。女性に限られない。
○足たゆく……足をだるそうにして。
見るめなき我が身をうらと知らねばやかれなであまの足たゆくくる
(古今和歌集)




