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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

世間知らずの白髪の少女と古代魔法都市(絶望と再生の物語)「あなたが見ている世界。それは、本当に本当の世界ですか?」

作者: 結衣と姉



挿絵(By みてみん)





「彼女に味方は、いなかった⋯⋯⋯。」






昔、世界の片隅に王族であるアルファ・トレント・ヘクマティアルという白髪(しろかみ)の少女がいました。その両親は戦争で戦死してしまい、彼女は一人で暮らすことになりました。彼女は名前をみゆき・トレント・ヘクマティアルに変えました。14歳でした。



挿絵(By みてみん)



古代に1つの魔法都市がありました。





そこには、生まれながらに魔法を使える者と生まれながらに魔法を使えない者がいました。






魔法を使えない者は、迫害され、逮捕され、処刑されていました。




挿絵(By みてみん)

(始まりの地)




しかし、1人の少女がいました。彼女は、幻想魔法で、巨大な都市をつくり、魔法を使えない者たちをかくまっていました。しかし、彼女のこの行為は、魔法都市の者たちからは、奇異の目で見られていました。



挿絵(By みてみん)




みゆきの幻想魔法が生み出した都市は、まるで蜃気楼のように、朝日にきらめき、夕焼けに染まる、どこまでも広がる白亜の都だった。




建物は、現実にはありえない曲線を描き、空中に浮かぶ庭園では、見たこともない花々が咲き乱れていた。




この都市は、ただの巨大な隠れ家ではなかった。みゆきの強い想いが具現化した、魔法を持たない者たちにとっての理想郷だったのだ。




都市の中央には、巨大なクリスタルが輝き、そこから発せられる柔らかな光が、都市全体を温かく包み込んでいた。このクリスタルは、みゆきの魔力の源であり、都市のエネルギー供給を担っていた。




住人たちは、みゆきの魔法によって生み出された清潔な水と、空から降り注ぐ光によって生かされていた。




仕事は、それぞれの得意なこと、例えば、植物の世話、道具の修理、子供たちの教育など、争いのない穏やかなものだった。




みゆきは、彼らの心の声に耳を傾け、誰もが安心して暮らせるように、常に都市の細部まで気を配っていた。






[街の朝の風景]




井戸端会議: 朝早く、共同の井戸に水を汲みに来た女性たちが、顔見知り同士で挨拶を交わし、その日の天気や家族の出来事などを話しながら和やかに水を汲む。魔法が使えないため、皆で協力して重い桶を運ぶ。



挿絵(By みてみん)



パン焼きの煙: 早朝からパン屋の竈からは香ばしい煙が立ち上り、焼き立てのパンを求める人々が列を作る。




魔法のオーブンはないため、職人が薪の火加減を丁寧に調整しながらパンを焼いています。



挿絵(By みてみん)



子供たちの準備: 親たちは、魔法の力を使わずに、子供たちの服を丁寧に畳んだり、お弁当を一つ一つ手作りしたりする。




子供たちは、親に手伝ってもらいながら、少しでも早く遊びに行こうと支度を急ぐ。



挿絵(By みてみん)



職人たちの準備: 大工は、前日に研いだばかりのノミや鉋を大切に道具箱にしまい、今日の仕事場へと向かう。



挿絵(By みてみん)



鍛冶屋は、朝一番に炉に火を入れ、金属を熱する準備を始める。彼らの手仕事が街の生活を支えています。




挿絵(By みてみん)




[市場や商店街の賑わい]




魚屋の威勢のいい声: 新鮮な魚を並べた魚屋の主人が、威勢のいい声で客引きをする。




「今日の魚は脂が乗ってるよ!」「おまけしておくよ!」といったやり取りが、活気を生み出す。



挿絵(By みてみん)



八百屋の品定め: 色とりどりの野菜や果物が並んだ八百屋では、主婦たちが一つ一つ手に取って品質を確かめ、今日の献立を考えながら品定めをする。




「このトマト、すごく甘そうね」「おまけしてね」といった会話が日常的に行われる。



挿絵(By みてみん)



手芸店の賑わい: カラフルな糸や布が並んだ手芸店では、女性たちが集まって、編み物や裁縫の話に花を咲かせている。




魔法の道具はないけれど、彼女たちの指先から様々な美しいものが生まれる。



挿絵(By みてみん)



大道芸人のパフォーマンス: 広場では、魔法を使わない大道芸人が、ジャグリングやアクロバットなどのパフォーマンスを披露し、集まった人々を楽しませている。




子供たちの歓声や、大人たちの笑顔が溢れている。




挿絵(By みてみん)



[住居の様子]




暖炉を囲む家族: 夜、一家団欒のひととき。暖炉の火を囲んで、子供たちは今日あった出来事を楽しそうに話し、親たちは優しく耳を傾ける。魔法の暖房はないけれど、家族の温かい触れ合いが心を温める。



挿絵(By みてみん)



手作りの家具: 部屋には、住人たちが自分たちで作った木製の家具が置かれている。




少しばかり不格好だけれど、使い込むほどに愛着が湧く。




壁には、家族の写真や子供たちの描いた絵が飾られ、温かい雰囲気を醸し出している。



挿絵(By みてみん)



工夫を凝らした台所: 台所では、魔法の調理器具の代わりに、工夫を凝らした道具が使われている。




手動の泡立て器や、火加減を調整しやすい竈など、先人の知恵が詰まった道具たちが、美味しい料理を生み出します。



挿絵(By みてみん)



ランプの灯り: 夜になると、家々の窓には温かいランプの灯りが灯る。魔法の照明はないけれど、その優しい光は、住人たちの心を安らげ、穏やかな眠りを誘う。




挿絵(By みてみん)



[仕事の様子]




織物職人の手仕事: 機織り機の前で、織物職人が丁寧に糸を操り、美しい布を織り上げていく。




魔法の力は借りず、熟練の技と根気で、人々の生活を彩る布地を生み出す。



挿絵(By みてみん)



木工職人の工房: 木の香りが漂う工房では、木工職人がノミや金槌を使い、一つ一つ丁寧に家具を作り上げていく。




注文主の要望に応えるため、細部にまでこだわり、魂を込めて作品を制作する。



挿絵(By みてみん)


農家の収穫: 広大な畑では、農家の人々が汗を流しながら作物を収穫している。




天候に左右されながらも、土と向き合い、丹精込めて育てた作物は、街の人々の食卓を豊かにする。



挿絵(By みてみん)



行商人の声: 天秤棒を担いだ行商人が、街の隅々まで声を届けながら、様々な商品を売り歩いている。




「新鮮な野菜はいかがですか?」「丈夫な日用品揃ってますよ!」といった声が、街の活気を支えている。



挿絵(By みてみん)




[祭りやイベント]




手作りの飾り付け: 祭り当日、街の住民たちは、色とりどりの紙や布を使って、街中を華やかに飾り付ける。




魔法の装飾はないけれど、皆で協力して作り上げた飾り付けは、温かみと活気に溢れている。




屋台の賑わい: 祭りには、様々な屋台が並び、焼きそばや綿あめ、手作りの玩具などが売られている。




魔法の力を使わずに作られた食べ物や玩具は、素朴ながらもどこか懐かしい味わいがある。




盆踊りの輪: 夜になると、広場では盆踊りの輪ができる。




老若男女が手をつなぎ、太鼓や笛の音に合わせて踊り、互いの交流を深める。




魔法の演出はないけれど、皆で踊る一体感が、大きな喜びを生み出す。




手作りの演劇: イベントでは、住民たちが自分たちで脚本や衣装、舞台装置などを手作りした演劇が上演される。




プロの役者のような華やかさはないけれど、一生懸命な演技は、観客の心を温かくする。




挿絵(By みてみん)



白髪(しろかみ)の少女:「おはよ!おじさん。今日もいい天気だね?」




おじさん:「あ〜、みゆきちゃん。おはよう。今日も、みゆきちゃんは、きれいだね、本当に。」




挿絵(By みてみん)




(笑顔をふりまく白髪(しろかみ)の少女)




白髪(しろかみ)の少女:「おはよ!おばさん。今日もきれいだね?」




おばさん:「あら!みゆきちゃん!おはよう。ありがとうね(笑)。みゆきちゃんのおかげで、今、私達みんな、とても居心地がいいのよ?本当に、ありがとうね。」





挿絵(By みてみん)

(笑顔のおじさんとおばさん)




白髪(しろかみ)の少女:「いえいえ。そんなお礼を言われる程のことじゃないよ(笑)。みんな、私の家族みたいなものなんだから。」




ある日、どこからか、現れた町では見かけない男。彼は、物憂げな表情で井戸端に佇む女に、低い声で語りかけた。


挿絵(By みてみん)


「あなた方は、本来もっと強い魔法力を持っていたはずだ。それが、あの娘の幻想魔法によって奪われたのだとしたら……?」




男の言葉は、日々の生活の中で漠然とした不満を抱えていた者たちの心に、小さな火種を灯した。




「奪われた?私たちの力を?」




男の胡散臭い言葉に、最初は警戒していた者たちも、うまくいかない現状への不満と結びつけ、次第に耳を傾けるようになっていった




静かな共同体に、まるで水面に落ちた一滴の油のように、じわじわと不穏な噂が広がり始めていた。



挿絵(By みてみん)



「あの娘の魔法は、我々の力を奪っているのだ」と。最初は小さな囁きだった。井戸端での立ち話、夕食の食卓での呟き。しかし、魔法が使えないことへの不満を抱えていた者たちの心に、その言葉は徐々に浸透していった。




「そうだ、最近、調子が悪い気がする」「もしかしたら、本当にあの娘のせいなのかもしれない」。




そんな疑念が人々の間に広がりはじめた。彼は、まるで乾いた薪に火をつけるように、人々の不安を煽った。




見かけない男:「あなた方の本来持つべき魔法の力は、あの娘の幻想魔法によって奪われているのです!」




彼の言葉は、魔法が使えない者たちの鬱積した不満と結びつき、日増しに強い憎悪の炎へと変わっていった。




「我々の力を奪った償いをさせろ!」




「あんな小娘に好き勝手させておくべきではない!」




群衆の目は、次第に猜疑心と怒りに染まっていった。




白髪(しろかみ)の少女:「みんな、どうしたんだろう?私を避けてるみたい。」





挿絵(By みてみん)

(疑いの目を向ける町の人々)




町のみんな:「あいつが私たちの魔法を奪ってるって。」




町のみんな:「あいつのせいで、私たち魔法が使えないのか。」




ひとりの見かけない男は、薄汚れた旅装に身を包み、どこか人を食ったような笑みを浮かべていた。




見かけない男:「皆さん、ご存知ですか?あの白髮の娘が使う幻想魔法の恐ろしさを?」




彼は群衆に語りかけた。




見かけない男「紫紅姫(むらさきべにひめ)という禁断の魔法で、他者の魔法力だけでなく、その時の記憶までも奪い取るというではありませんか!そして、奪われた者たちは、まるで操り人形のように、あの娘に友好的な態度を取らされるらしい。」




彼の言葉には、真実か嘘か定かではない、しかし人々の不安を掻き立てる毒が含まれていた。




男の正体は、魔法都市の非魔法使い取り締まり官だった。しかし、彼の目的は単なる取り締まりではなかった。




魔法都市では、魔法を使えない者は常に抑圧され、不満を抱えていた。彼は、その不満を利用し、白髮の少女という共通の敵を作り上げることで、人々のエネルギーを一点に集中させ、都市の支配体制をより強固なものにしようと企んでいたのだ。




見かけない男:「あの娘を排除すれば、あなた方の魔法力は戻るはずだ。」




そう囁きながら、彼は群衆の憎悪の炎が燃え上がるのを、冷たい目で観察していた。



挿絵(By みてみん)



町のみんな:「俺達が、あの娘に愛想が良いのは、俺達の意思じゃないと?」




ひとりの女:「あの娘の魔法は、まるで私たちを無力な存在だと嘲笑っているようだ……。長年、魔法が使えないというだけで、どれだけの屈辱を味わってきたか。やっと得られた安寧も、あの娘の力があってこそ。まるで、私たちは彼女の施しで生きているようなものじゃないか!見かけない男の言う通りだ。あの娘の魔法が、私たちの魔法を奪っているに違いない。そうだ、そうに違いないんだ。彼女さえいなくなれば、私たちは本来の力を取り戻せるんだ!」




町のみんな:「そうだ!あの娘をどうにかしなければ!」




その場に、沈黙ができた。




町のみんな:「道理で、あんな小娘に、こんな巨大な都市を1人で創れる力があるわけないんだよな?完全に、騙されていたぜ(怒)」




町に男の言葉が浸透し始めた頃、人々の間には小さなざわめきが広がっていた。「本当に、このままでいいのだろうか?」「魔法が使えないのは、本当にただの偶然なのか?」と。




長年抑えられてきた、魔法への憧れや、自分たちだけが取り残されているような焦燥感が、男の言葉によってじわじわと刺激されていったのだ。




白髪(しろかみ)の少女の存在は、確かに彼らにとって安寧の象徴だった。しかし、同時にそれは、自分たちの無力さを常に意識させる鏡でもあったのかもしれない。




「彼女がいなければ、私たちは何もできないのではないか?」




「彼女は、私たちの可能性を奪っているのではないか?」




そんな不安が、男の「白髪(しろかみ)の少女は魔法の力を隠している」という言葉に、都合よく結びついていった。




ある日、市場で野菜を売る老人が、隣の店主に小さい声で話しかけるのが聞こえた。



挿絵(By みてみん)



「あの娘が来てから、確かに暮らしは楽になった。だが、時々、何か隠しているような気がするんだ。」




それは、多くの人々が心の奥底で感じ始めていた、小さな疑念の芽だった。その芽は、男の扇動によって、瞬く間に大きく育っていったのだった。




夕暮れ時のこと、白髮(しろかみ)の少女が町の広場に入ると、どこからともなく、険しい表情の群衆が彼女を突然、取り囲みました。




群衆:「おい⋯。女⋯。」




次の瞬間だった。




白髪(しろかみ)の少女「いや〜あ〜!やめて!やめて!やめてよ!みんな!やめてよ!やめて!やめてったらー!!!⋯⋯⋯⋯。⋯⋯⋯⋯やめてください⋯。おねがいします⋯。お願いですから⋯。⋯⋯⋯⋯。」






少女は、かくまっていた魔法を使えない者たちから、公の場で、激しい暴力を振るわれ、尊厳を深く傷つけられるような行為を受け、服を破られ、全裸で放置されました。










街を創ったあの日、白髪(しろかみ)の少女の心は希望に満ち溢れていた。魔法が使えない人々が、互いに支え合い、笑顔で暮らせる場所。それが彼女の夢だった。




暴行を受け、尊厳を踏みにじられた痛みは、肉体的なもの以上に、彼女の心を深く蝕んだ。信じていた人々の裏切りは、彼女にとって何よりも耐え難いものだった。「なぜ?私があなたたちのために作った街なのに…」何度も心の中で叫んだが、届くはずもない。




彼女の瞳から光は消え、代わりに深い絶望の色が宿った。それでも、心の奥底には、微かながらも生きることを諦めきれない何かが残っていた。それは、彼女がかつて抱いていた、人々の笑顔を見たいという願いの残滓だったのかもしれない。しかし、今はまだ、その小さな光を見つけることすら困難だった。




そこへ、ひとりの男が近寄り、少女の髪を鷲掴みにして言いました。





(自慢の髪の毛を無造作に掴まれ、尊厳のない姿で己の無力さを痛感する白髪(しろかみ)の少女)




「調子に乗るから、こうなる。魔法都市のためだ。」彼女は、思い知りました。黒幕は、魔法都市だったと。






その瞬間、少女の作り上げた巨大な都市は、崩れ去り、見るも無残な廃墟になってしまいました。









白髪(しろかみ)の少女が去った後、街には一時的な解放感と高揚感が漂った。男は英雄のように祭り上げられ、人々は自分たちの手で未来を切り開いたと信じて疑わなかった。




その後、わずかな力を振り絞り、白髪(しろかみ)の少女は、荒廃した都市から逃げようとしましたが、本能のままに牙を剥き、嘲笑う声と共に、無数に伸びてくる手に捕まり、彼女は、荒廃する都市に連れ戻され、長い間、そこで、奴隷娼婦として強制労働させられました。




始まりの長い時


【1902年間に及ぶ、永遠とも思える長い時の中、苦難の日々のはじまり】


「さっさとやれ!この役立たずが!」


白髪の少女はただ言われるがままに動いた。何度も何度も不快な指示を受け、その度に心は疲弊しきっていた。顔見知りの者たちからの冷たい視線が、彼女の心を凍えさせる。屈辱と混乱の中で、少女は自分が何なのか、分からなくなっていた。


「休むんじゃないよ!もっと動くんだよ!この怠け者が!」


白髪の少女は、「ごめんなさい」と力なく答える。自分の大切な時間や才能が、他者の都合のために利用される。「こんなことはしたくないのに……」。少女の意思とは裏腹に、彼女の体はただ指示に従う。「いったい、私は、何をさせられているの?」


「それにしても、見事な才能だな。可愛がってやるから、感謝しろよ?」


少女は「ありがとうございます」と虚ろな声で答える。まるで品定めされるかのように扱われる。「いったい、私は、何なの?」


「本当に、この娘は使い物になるね!まるで、そういったことのために生まれてきたようだね!ハハハハハッ!」


「私自身の価値をそんな風に言わないで……」と心の中で叫ぶ。


「この年でこんな思いをすることになるとはな。」


「私は、あなたの所有物じゃない……。」


「今のうちに、しっかり教え込んどきな!誰がご主人様かってことをね!さあ、言われた通りにしろ!」


白髪の少女は、「はい……ご主人様」と答える。少女の心の中に、不快な感情の波が侵入してくる。それは、心の中で何度も擦られ、思考の奥深くまで届く。次の瞬間、苦く重い感情が少女の心を覆い尽くした。


「うっ……」


「拒むんじゃないよ!しっかり受け入れるんだ!」


その言葉は、少女の中に侵入し、彼女を構成する一部となった。


「あのお姉ちゃん、何やってるの?」


「やめて……見ないで……」と少女は願う。


「償いをしてるんだよ。私たちに酷いことをしたからね。」


大人たちの歪んだ期待が何度も何度も少女に押し寄せ、少女の心は熱く、溶けるような、言いようのない苦痛を現実に突きつけていた。


「私が、いったい何をしたというの?」


町の群衆は「いい気味だ!」と叫ぶ。


心を支配された少女は、熱く煮えたぎるような絶望に苛まれていた。呼吸することすら許されないように、彼らの醜い感情が少女を支配する。


町の群衆は「この愚か者が!」と罵る。


満足げな表情を浮かべる彼らの指示に従い、少女は、まるで彼らのために存在する人形のように、その敏感な心は自分の意思とは裏腹に何かを感じていた。


町の群衆は「たっぷり償ってもらうぞ!」と声を荒げる。


自由を奪われ、彼らの都合の対象と化した少女の純粋な心は、それを否定することができなかった。


町の群衆は「お前には、無力ってものを教えてやる!」と嘲笑う。


優越感に満ちた表情を浮かべる人々の壁に囲まれ、少女に逃げ場はなかった。ただ、それを受け入れることしかできなかった。


町の群衆は「たっぷり、可愛がってもらえよ!」と声をかける。


肉体的にも精神的にも逃げ場のない異常な空間で、少女は、意識を必死に保とうとする。


町の群衆は「あーあー!終わりだぞ!役立たず!」と叫ぶ。


白髪の少女は「うぅ……」と声を漏らす。


彼らの冷たい視線と憎悪が少女の中に注ぎ込まれる。


町の群衆は「ハハハハハッ!立派になったな!」と嘲笑う。


もはや、少女に希望を抱くという気力すら残っていなかった。少女の無垢だった心は、その初めてを人の皮を被った憎悪と悦楽を糧にする獣たちに無残にも弄ばれ、見るも無残な状態と化していた。


来る日も来る日も、彼女を蔑む者たちの相手をさせられ、彼女を蔑む者たちからは、罵声と侮蔑の言葉を浴びせられていた。休むことも寝ることも許されない。


冷たい部屋の隅で、少女は自由を奪われ、気に入らない服を着せられていた。時々運ばれてくる食事は、いつもクリームシチュー。でも、それには少し変な、ねばねばした白い液体が混ざっていた。それが何なのか、少女にはなんとなくわかった。それでも、生きるために、少女はそれを口にした。心は嫌がったが、少女は必死に気持ちを抑えつけた。生きていくためには、そうするしかなかったのだ。


少女は、心の奥から湧き上がる感覚に気づいた。でも、今はまだ我慢しなくてはいけない。そうしないと、怖い顔をした人たちに叱られてしまうからだ。そして、その時は突然やってくる。じめじめとした暗い路地に連れて行かれ、まるで犬のように、そこで屈辱的な行為を強いられるのだ。彼らは、冷たい目で少女を見下ろす。周りには、その瞬間を待っていたかのように、たくさんの人たちが集まり、じっと少女を見つめる。


彼らが去った後、少女の心はいつもと違う重苦しい空気に包まれていた。冷たい部屋の中、小さくなって座り込む少女に、彼らはバケツに入った冷たい水を何の気なしにかける。部屋の寒さと水の冷たさで、少女はぶるぶると震えた。心の中で小さな希望を持とうとしても、すぐに厳しい現実が押し寄せてくるのだ。


少女に、尊厳という言葉はなかった。


少女は、衰弱していく中、絶望と悲しみの中で、苦しみ続けた。


精神は、何度も揺らぎ、気力は、遠のくばかり。彼らの冷酷な支配の色が、白皙はくせきの肌の白髪の少女の心に深く刻み込まれ、消えない印を残していく。


彼らの不快な指示が、少女の中で何度も何度も繰り返される。心と心は傷つけ合い、言葉と感情は何かを交わす。意識の逃げ場がない。彼らの冷たい感情の温もりをその白い心で感じながら、少女は何度も何度も何かを知る。自分の価値は、誰でもいいのか?少女の心は何かを知りすぎ、熱を帯びていた。彼らは、少女の心を求め、一体化することをやめず、歪んだ関係を少女の心に刻み込み続けた。


「やめて…お願い…」と懇願する声は、何度も繰り返されるうちに、喉の奥で小さく震えるだけの音になった。


最初は抵抗していた心も、何度も彼らに踏みにじられるうちに、まるで抜け殻のように、ただただ重く、感覚が鈍くなっていった。


温かかったはずの白亜の床は冷たく、希望に満ちていたはずの空は、今はただの灰色に見える。


彼女の瞳から光は失せ、映るのは天井のシミばかり。かつて、人々の笑顔を守りたいと願った心は、今はひび割れて、冷たい絶望だけが染み渡っていく。


毎日繰り返される屈辱と暴力は、彼女の中で「なぜ?」という問いを何度も反芻はんすうさせた。しかし、答えは見つからない。ただ、自分が生きていることの意味さえ、分からなくなっていく。彼女の思考は、停止した。


彼女の透き通るような白い心は、彼らのその歪んだ欲望をただただ無言で、もはや何も感じない抜け殻のように、彼らの冷たい荒い息遣いを間近に感じながら、ただその動きを受け止めていた。「もう、何もかもどうでもいい…」心は遠い場所に彷徨い、目の前の光景は現実感を失っていた。それは、もはや彼女にとって、非日常では、なくなっていた。


彼女を守ってくれるものはいなかった。彼女の境遇を知りながら、誰一人として……。


ある夜、また見知らぬ者が近づいてきた時、みゆきの心の中で、何かが音を立てて壊れた。抵抗する気力も残っていなかったが、その者の歪んだ笑顔を見た瞬間、これまで感じたことのない黒い感情が湧き上がってきた。


(少女の魂に最後のとどめを刺す者の歪んだ笑顔)


「もう、こんな世界は嫌だ……。」


それは、か細いけれど、確かに彼女の中から生まれた叫びだった。なぜ、自分だけがこんな目に遭わなければならないのか?なぜ、あんなに優しくしてくれた人々が、手のひらを返したように自分を傷つけるのか?


理解できない不条理への怒りが、静かに、しかし確実に彼女の中で燃え上がっていく。


「そうだ…こんな世界なら、いっそ壊してしまえばいい」


(魂の限界を超えた白髪の少女の叫び)


絶望の淵で、彼女は一つの考えに取り憑かれる。自分を傷つけた者たちも、傷つけ合う愚かな人々も、全てを自分の作り出した人間という名の人形に変えてしまえば、争いのない、優しい世界を作れるかもしれない。それは、歪んだ希望だったかもしれない。


しかし、彼女にとっては、生き残るための、最後の光だった。過去の優しい記憶を封印するのは、あまりにも辛い選択だった。でも、あの裏切りと痛みを忘れることができなければ、彼女はきっと壊れてしまうだろう。


「もう二度と、あんな思いはしたくない」


そう強く念じながら、彼女は、人形の世界を創造する決意を固めていく。それは、彼女なりの、世界への復讐であり、同時に、自分自身を守るための、最後の手段だった。





青白い光が彼女の体から放射状に広がった。



挿絵(By みてみん)



白髪(しろかみ)の少女は、世界を改変した。



挿絵(By みてみん)



世界は、変わってしまいました。




世界の民の魂は、白髪(しろかみ)の少女が作った人形に全て封じ込められました。




本来の世界を愛していた者たちは、偽りの世界に閉じ込められ、愛する者がいた者たちは、それぞれ、バラバラに引き裂かれました。




長い長い夜が訪れます。




この人形の世界では、色々な人形がいます。人間、草食動物、肉食動物、虫、魚、鳥、植物など。そして、人形は自分の体を維持するために、他の人形を喰らう必要があります。本質的な意味で共食いです。




しかし、人形が人形を殺し続けたら、いずれ人形はいなくなってしまいます。なので、この世界では輪廻転生という呪いが稼働しており、人形が死んだとしても、人形の中にとらわれていた者たちの魂という名の本体は、また別の新しい、赤ちゃんという名の人形に強制的に押し込まれる仕組みになっています。こうして、質量保存の法則のような仕組みが成り立っています。





挿絵(By みてみん)

(地球という名の果実)





ある人形(元は優しい母親)が、飢えに苦しむ我が子である人形を見つめている。周囲には食料となる他の人形が見当たらない。彼女は、理性では決して考えられない「共食い」という選択肢が頭をよぎり、激しい自己嫌悪と葛藤に苛まれる。「まさか、私が…」と心の中で叫びながら、本能的な飢餓感に抗えない。


挿絵(By みてみん)


穏やかな草食動物の人形(元は平和主義の老人)が、肉食動物の人形に追い詰められる。かつての自分の知性は、死の恐怖を増幅させる。「助けてくれ…」と心の中で叫びながらも、人形の体はただ震えることしかできない。捕食された後、彼の魂は新たな赤ん坊の人形に押し込まれ、再びいつ捕食されるか分からない恐怖の中で生きていく。


挿絵(By みてみん)


小さな虫の人形(元は無邪気な子供)が、巨大な肉食動物の人形に一瞬で踏み潰される。理不尽な暴力と、あまりにも短い「生」の終わりは、この世界の無常さを象徴していた。


挿絵(By みてみん)


何度も捕食され、何度も新しい人形として生を受ける老婆の人形(元は献身的な看護師)。彼女は、過去の苦しい記憶は薄れつつあるものの、根源的な不安感と虚無感に常に苛まれている。「いったい、いつまでこの苦しみが続くのだろうか…」と、終わりなき輪廻に深い絶望を感じていた。


挿絵(By みてみん)


ある若者の人形(元は希望に満ちた青年)が、自分の死んだ恋人が、別の赤ん坊の人形として生まれたことを知る。しかし、過去の記憶を持たない恋人は、彼を見ても誰だか分からない。彼は、再会できた喜びと、愛する人が自分を忘れてしまったという悲しみに打ちひしがれる。輪廻転生は、彼にとって残酷な呪いであった。


挿絵(By みてみん)


ある人形(元は歴史学者)が、断片的な知識として、かつて本当の自分という存在がいたこと、そして、この世界が誰かによって作られた偽りの世界であることを悟り始める。しかし、その真実を他の人形に語っても、信じてもらえず、孤独感を深めていく。


挿絵(By みてみん)


かつて愛し合っていた夫婦が、別々の人形として生まれ変わり、互いの存在を知らずに生きている。ふとした瞬間に、懐かしいような、切ないような感情が湧き上がるものの、それが何なのか理解できない。人形の世界では、かつての人間関係は断ち切られ、人々は根源的な孤独を抱えている。


挿絵(By みてみん)


子供の人形たちが、遊びの中で他の人形を「ごっこ」で襲う。それは、生き残るための本能的な行動であり、無邪気な遊びの中に、この世界の残酷さが垣間見える。


挿絵(By みてみん)


ごく稀に、過去の優しい記憶を鮮明に思い出す人形が現れる。彼らは、この絶望の世界にわずかな希望を見出そうとするが、周囲の無関心や諦めに打ちのめされ、次第に口を閉ざしていく。


挿絵(By みてみん)


ほとんどの人形は、この歪んだ世界を当たり前のものとして受け入れ、感情を深く抱くことを避けるようになる。日々の生存に汲々(きゅうきゅう)とし、精神的な豊かさは失われていく。



挿絵(By みてみん)



さらに、長い夜が過ぎていきます。






人形の姿となった元白髪(しろかみ)の少女は、草花が咲き乱れる庭園にいた。隣には、穏やかな笑顔の青年(彼氏の人形)が寄り添い、二人で摘んだ花を編んで花冠を作っている。風が優しく吹き抜け、花々の甘い香りが漂う。かつての絶望を知る元白髪(しろかみ)の少女の瞳には、穏やかな光が宿っている。二人は言葉少なげだが、その間には温かい愛情が満ちている。時折、元白髪(しろかみ)の少女は遠い空を見上げるが、その表情にはもう暗い影はない。


挿絵(By みてみん)


元白髪(しろかみ)の少女は、人形たちがそれぞれの役割や知識を学ぶ学舎に通っている。かつての孤独を知る彼女だが、ここでは分け隔てなく、様々な個性を持つ人形たちと交流している。今日は、植物の世話をする授業で、生き生きとした緑の葉を優しく撫でている。隣の席の明るい少女の人形と微笑み合い、楽しげに言葉を交わしている。放課後には、他の人形たちと中庭で語り合い、笑い声が響いている。


挿絵(By みてみん)


小さな木造の家の中で、元白髪(しろかみ)の少女は幼い子供の人形を膝に乗せ、絵本を読んでいる。子供の人形は、元白髪(しろかみ)の少女の白い髪を小さな手で優しく撫で、無邪気な笑顔を見せる。傍らには、夫の人形が温かい眼差しで見守っている。夕食の支度が始まり、優しい香りが漂ってくる。かつての孤独な日々とはかけ離れた、温かく穏やかな時間が流れている。


挿絵(By みてみん)







戦争が起きた!







ある時、元白髪(しろかみ)の少女の目の前には、惨劇が見えていました。



挿絵(By みてみん)





殺し合い、レイプ、略奪。この世の惨劇の全てが少女の目の前にありました。





挿絵(By みてみん)

(戦争)

挿絵(By みてみん)

(レイプ)

挿絵(By みてみん)

(人間という名の人形の箱庭という絶望の世界)


挿絵(By みてみん)

(略奪)





「なんで?なんで?なんで、みんなそんなひどいことするの?」






元白髪(しろかみ)の少女は、記憶を封印していましたが、本能的に、感じていました。






「私は、魔法が使えるはず。」「私なら、何とかできる。」






その瞬間、元白髪(しろかみ)の少女は、全てを思い出しました。






すると、目の前で、起こっていた惨劇がピタリと止み、みんなが元白髪(しろかみ)の少女を見ています。



挿絵(By みてみん)



みんな言います。「さあ、元の世界に戻ろう。みんな、君を待っているよ!だから、早く、幻想魔法を解いてよ?私達は、あなたを責めたりしないよ?」




そこには、会ったこともない者達、元白髪(しろかみ)の少女を陵辱した者達、元白髮(しろかみ)の少女に罵声を浴びせた者達、元白髪(しろかみ)の少女を陥れた者がいました。




元白髪(しろかみ)の少女は、思いました。「あぁ。。。そうか。みんな、私を騙していたんだ。私が見てきたものは全部お前達の演技だったんだな?そうか。。。そういうことか。。。私が抱いた感情は、全て嘘だったんだ?そうか。。。そうか。。。ふざけるな!!!ふざけるな!!!ふざけるなよ!!!この、ゴミどもが!!!(怒)」



挿絵(By みてみん)

(怒り狂う元白髪(しろかみ)の少女)




元白髪(しろかみ)の少女は、怒りに身をまかせ、幻想魔法の力で、世界を海に沈めてしまいました。




ゴォォォゴォォォゴォォォゴォォォゴォォォ




ガシャンガシャンガシャンガシャンガシャン




バキィバキィバキィバキィバキィバキィ




「津波だーーーーーーーーーーーーー!!!」




「早く!逃げて!みんな!早く!!!」




「ママーーーーーーーー!!!(泣)」




「早く!立って!逃げるのよ!!!」




「お姉ちゃ〜ん!(泣)」




ウゥーウゥーウゥーウゥーウゥーウゥーウゥー




「国民のみなさん!早く高台へ!高い所へ!!!避難してください!!!早く!!!」




ワンワン!!!ワンワン!!!



挿絵(By みてみん)

(巨大津波と街)



挿絵(By みてみん)

(逃げ惑う人々)




多くの人形が死にました。




「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」




「わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」



挿絵(By みてみん)

(絶望という名の暗闇に堕ちる人形)




長い長い夜が訪れます。




【日本】



あるところに、1人の少年がいました。彼の名前は、ゆう。優しくて、正義感あふれる少年です。






彼の住む世界は、日本。




挿絵(By みてみん)

(日本の首都・東京)



春の柔らかな陽光が、リビングの窓から差し込んでいた。白髪しろかみの高校生のゆうは、ローテーブルに広げた参考書に目を落としている。隣では、小学三年生の妹、ユイが色とりどりの折り紙を広げ、楽しそうに手を動かしていた。


「お兄ちゃん、見て!お花、できた!」


ユイが小さな折り紙の花を掲げて、満面の笑みでこちらを見た。ゆうは顔を上げ、その可愛らしい出来栄えに目を細めた。「すごいな、ユイは本当に器用だな」


「えへへ!」ユイは照れたように笑い、次は何を作ろうかと折り紙の束を漁り始めた。ゆうにとって、この妹の無邪気な笑顔は、日々の小さな憂鬱を吹き飛ばしてくれる魔法のようだった。


挿絵(By みてみん)


ゆうの白髪と赤い瞳は、生まれたときからのものだった。幼い頃は、珍しいね、と物珍しげに見られる程度だったが、成長するにつれて、周囲の視線が気になるようになった。特に思春期に入ってからは、自分の外見が普通ではないことに、強いコンプレックスを抱くようになった。学校では、避けられていると感じることも少なくなかった。


そんなゆうにとって、ユイは全く特別な存在だった。彼女は、兄の特異な外見を、まるで美しいものを見るように純粋な瞳で見つめた。「お兄ちゃんの髪の色、雪みたいで綺麗!触ってもいい?」「赤い目、宝石みたい!キラキラしてる!」


ユイの言葉は、ゆうの心に温かい光を灯してくれた。彼女の無邪気な愛情だけが、ゆうの抱える小さな棘を優しく包み込んでくれるようだった。


ある日のこと、ユイは自分の宝箱から、小さなビーズのついたヘアゴムを取り出した。「お兄ちゃんにあげる!」


「え? いいのか?」


「うん!お兄ちゃんの白い髪につけてほしいの。きっと、すっごく似合うよ!」


挿絵(By みてみん)


ユイのキラキラとした瞳に、ゆうは何も言えなくなった。妹の優しい気持ちが、胸にじんわりと広がった。少し照れながらも、ゆうはユイからヘアゴムを受け取ると、妹の小さな頭を撫でた。


それからというもの、ゆうは時々、ユイにもらったヘアゴムを鞄につけるようになった。それは、妹の愛情の証であり、自分を肯定してくれる存在がいるという、小さな希望の光だった。


ユイが小学校に入学して初めての運動会の日。ゆうは、少しでも妹の近くで見守ってあげようと、人混みの中、妹を探した。ユイは、小さな体を目一杯に使って、一生懸命に走っていた。


その時、近くにいた母親たちのグループが、ゆうの白髪を見て、ひそひそ声で噂話しているのが聞こえた。「あの子、髪の色、珍しいわね」「何か遺伝的なものがあるのかしら」「ちょっと怖い感じもするわね」。


ゆうの心に、チクリとした痛みが走った。やはり、自分は普通ではないのだと、改めて突きつけられたような気がした。


しかし、その時だった。ゴールテープを切ったユイが、満面の笑みでこちらに向かって手を振ってきた。「お兄ちゃん!見た?私、頑張ったよ!」


挿絵(By みてみん)


その笑顔は、周囲の (ささやき声など、全てを吹き飛ばすほどの力を持っていた。ゆうは、精一杯の笑顔で手を振り返した。「ああ、見たよ!ユイ、すごく速かったぞ!」


ユイの隣には、彼女の友達が数人集まってきていた。「ユイのお兄ちゃん、髪の色、本当に白くて綺麗!お人形さんみたい!」


友達の純粋な言葉に、ゆうは驚いた。以前なら、 敬遠するような視線ばかりだったのに。ユイは得意げに胸を張った。「そうでしょ!私のお兄ちゃん、かっこいいんだもん!」


その時、ゆうは気が付いた。 自分の外見をどのように判断するかは、自分次第なのだと。そして、何よりも大切なのは、自分のことを純粋な心で見てくれる家族や、友達の存在なのだと。


夕焼けが空を茜色に染める頃、ゆうはユイと二人で家に帰っていた。ユイは、運動会でもらったメダルを誇らしげに胸につけて、スキップしながら歩いている。ゆうは、少し前の母親たちのひそひそ話を、もう気にはしていなかった。隣を歩く妹の温かい存在が、ゆうの心を優しく包み込んでいたからだ。


「お兄ちゃん」


ふと、ユイが立ち止まり、ゆうを見上げた。その瞳は、夕焼けの色を映してキラキラと輝いていた。「お兄ちゃんの髪、やっぱり、世界で一番綺麗だよ。雪の髪飾りみたい!」


ゆうは、ユイの純粋な言葉に、心の底から温かいものが込み上げてくるのを感じた。 近くにいる大切な妹の存在こそが、自分にとって何よりも大切な宝物だと、ゆうは改めて思ったのだった。


挿絵(By みてみん)





彼は、日頃から、ネット、新聞、テレビなど世界情勢について、とても興味を持っていました。






「なんで?みんな、仲良くできないんだろう?戦争、テロ、迫害。同じ、みんな、人間なのにさぁ。」






少年の学生生活は、いたって普通。勉強が得意なわけでもなく、運動が得意なわけでもなく。



挿絵(By みてみん)

(学生の通学風景)




挿絵(By みてみん)

(勉強を教えてもらっているゆう)








「あ〜あ〜。俺に、魔法の力でもあったらな〜。」







春の柔らかな陽射しが、教室の窓から差し込んでいた。隣の席のさくらは、シャーペンをくるくると回しながら、退屈そうに頬杖をついている。彼女の短い髪が、光を受けてほんのりと輝いていた。



「ねえ、ゆう」



不意に、さくらが声をかけてきた。その明るい声は、教室のざわめきの中でもよく通る。


「ん? どうしたの、さくら」


ゆうは教科書から顔を上げ、彼女を見つめた。さくらは、いたずらっぽく目を細めて笑った。


「なんか今日、ゆう、ぼーっとしてない? 大丈夫?」


「え? ああ、うん。ちょっと考え事してただけ」


本当は、昨夜も見た奇妙な夢のことが頭から離れなかったのだ。白亜の都、見慣れない花々、そして何よりも、胸を締め付けるような白髪の少女の悲しみ。夢の中の光景は鮮明で、まるで本当に自分が体験したことのように感じられた。


「ふーん。ま、いっか。ねえ、放課後さ、新しいカフェができたんだって。一緒に行かない?」


さくらの誘いに、ゆうは小さく笑った。「いいね、行こうか」


さくらは、ゆうにとって特別な存在だった。明るく誰にでも優しく、一緒にいると心が安らいだ。彼女と話していると、時折襲ってくる奇妙な感覚や、夢のことも忘れられた。


放課後、二人は噂のカフェへと向かった。白い壁に木製の家具が置かれた、落ち着いた雰囲気の店内で、ゆうはブレンドコーヒー、さくらはストロベリーパフェを注文した。


「ここのパフェ、すっごく美味しいんだよ!」


さくらは、キラキラとした瞳でパフェを見つめながら言った。ゆうは、そんな彼女の笑顔を見ているだけで、心が温かくなった。



挿絵(By みてみん)



「よかったね」



他愛ない会話をしながら、ゆったりとした時間が流れていく。しかし、ふとした瞬間、ゆうは奇妙な感覚に襲われた。カフェの窓から見える夕焼けの色、店内に流れる優しい音楽、そしてさくらの笑顔。それら全てが、どこか懐かしいような、それでいて初めて見るような、不思議な感覚だった。まるで、過去に同じような光景を見たことがあるような……。


(この夕焼けの色……どこかで……)


ゆうは、胸の奥に湧き上がる微かなざわめきを感じた。それは、昨夜の夢の中に見た夕焼けの色に、どこか似ている気がした。


「ゆう? どうしたの? 顔色、ちょっと悪いよ?」


さくらの心配そうな声に、ゆうはハッとした。「あ、ごめん。なんでもないよ」


彼は、湧き上がってきた奇妙な感覚を打ち消すように、コーヒーを一口飲んだ。苦味の奥にあるほのかな甘さが、現実へと引き戻してくれるようだった。


帰り道、二人は並んで歩いた。さくらは、今日あった面白い出来事を楽しそうに話している。ゆうは、それに相槌を打ちながらも、心の片隅では、あのデジャヴュのような感覚が引っかかっていた。


(あの夢は、一体何なんだろう……)


空を見上げると、薄紅色の夕焼けが広がっていた。その色を見た瞬間、ゆうの胸に、言いようのない切なさが押し寄せてきた。まるで、遠い昔の誰かの悲しみが、自分の心に流れ込んでくるような感覚だった。


「さくら……」


思わず、彼女の名前を呼んだ。さくらは、不思議そうな顔で振り返る。


「どうしたの、ゆう?」


ゆうは、言葉を探したが見つからなかった。ただ、彼女の優しい笑顔を、じっと見つめることしかできなかった。


「……なんでもない。ただ、一緒にいられて、よかったなって思っただけ」


さくらは、少し照れたように微笑んだ。「私もだよ」


二人の間には、しばしの沈黙が流れた。薄紅色の夕焼けが、二人の影を長く伸ばしていた。ゆうは、まだ解けない夢の欠片を抱えながら、隣を歩くさくらの温かさをそっと感じていた。いつか、この奇妙な感覚の正体を知る日が来るのだろうか。そして、その時、自分とさくらの関係はどうなってしまうのだろうか。そんな不安が、ゆうの胸の奥に、小さな影を落としていた。


それでも、今はただ、このかけがえのない時間を大切にしたいと、ゆうは強く思った。さくらの笑顔が、今の彼にとって、何よりも大切な光だったから。



挿絵(By みてみん)



ゆうは、その日も浅い眠りの中で、どこか遠い世界の光景を見ていた。白亜の都、見たこともない花々、そして、悲しみに暮れる白髪(しろかみ)の少女。


挿絵(By みてみん)


それはまるで、鮮明な夢のようでありながら、同時に、決して忘れることのできない強烈な感情を伴っていた。




毎晩のように繰り返される奇妙な夢。その理由を、ゆうはまだ知る由もなかった。遠い過去の少女の魂の叫びが、時を超えて、ゆうの意識の片隅に響き始めていたのだ。




ゆうは、時折、ふとした瞬間に、まるでデジャヴュのような感覚に襲われることがあった。見慣れない装飾の施された建物、聞いたことのない言語、そして、胸を締め付けるような孤独感。それらは、彼の日常とはかけ離れた、遠い記憶の断片のように思えた。




特に、白髪(しろかみ)の少女の悲しい瞳が、鮮明に彼の脳裏に焼き付いていた。それは、彼の魂の奥底に眠る、忘れ去られた過去の記憶の断片だったのかもしれない。




たくさんの人が、俺の体に触ってきます。何かをむさぼるような、憎いような、それでいて満足そうな顔で。たくさんの女の人たちは、冷たい顔で、ただ僕を見下ろしています。どうして俺にはこんなに大きな胸があるんだろう?どうして、胸を揉まれているんだろう?どうして、股のあたりに、変な感じがするんだろう?どうして、俺は女の人なんだ?



焼けるような痛みが、全身を貫いた。誰かの汚れた手が、抵抗する俺の腕を強く掴む感触が蘇る。耳元で響く、下卑た笑い声。ゆうは、頭を抱えて(うずくま)った。『違う、これは俺の記憶じゃない!』しかし、魂の奥底から湧き上がる悲しみと怒りは、現実味を帯びて彼を蝕んでいく。




その瞬間、とてつもなく膨大な巨大な大量の白髪(しろかみ)の少女としての記憶が彼をおそいました。






「わぁあ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」







その瞬間、ゆうの意識が急激に揺らいだ。まるで地殻がずれるように、彼の中の何かが大きく動き、体の中心から波紋が広がっていくのを感じた。




「ぁ...」




彼の顔から血の気が引き、膝から崩れ落ちる。額に浮かんだ冷や汗が頬を伝い落ちていく。


最初は小さな光の粒のように、断片的な記憶が浮かんでは消えた。白い髪、水晶のような都市、そして数え切れないほどの悲鳴。それらが徐々に繋がり始め、記憶という名の洪水が彼を飲み込んでいく。





「違う...これは...私は...」





ゆうの視界が歪み、目の前の風景が溶け始めた。代わりに見えてきたのは、かつて自分が創り上げた白亜の都市。そして、自分が白髪(しろかみ)の少女であったこと。あの日、大切な人々から受けた裏切り。そして、その後の耐え難い屈辱と絶望。




「あぁ...そうだったんだ...」





彼の体が細く、華奢なものへと感覚的に変化していくようだった。太く低かった声が、徐々に繊細な少女の声へと変わっていく。男であるというアイデンティティが、白髪の少女・みゆきというものに上書きされていくのを感じた。




「私は...みゆき...」





歪んだ視界の中、彼女の手のひらを見つめる。それは少年の手ではなく、繊細で白い、少女の手だった。指先が震え、何かを掴もうとするように空を掻き、そしてゆっくりと握り締められた。


挿絵(By みてみん)


「みんな...嘘だったんだ...」




涙が零れ落ち、足元に小さな水たまりを作る。それは現実の涙なのか、記憶の中の涙なのか、もはや区別がつかなかった。体の震えが止まらない。しかし、その震えは次第に怒りへと変わっていった。




「私が...私がどれだけ...」




彼女の周りの空気が震え始め、淡く青白い光が彼女の体から放射状に広がった。忘れていた力、幻想魔法の力が再び彼女の中で目覚め始めていた。




「何もかも...嘘だったのね」




みゆきはゆっくりと顔を上げ、目の前の世界を見据えた。もう迷いはなかった。この偽りの世界と、過去の記憶。全てを受け入れ、そして次に何をすべきかを彼女は知っていた。




「全てを...思い出した」




彼女の目に宿った決意の光が、この偽りの世界を照らし出した。





挿絵(By みてみん)

(温かい思い出)




「両親も友達も学校生活も全て嘘。嘘だったかもしれない。でも、幸せだった。今まで、味わったことのないほど。みんな、人間という名の人形だったかもしれない。でも、みんなとても優しかった。そこに、嘘はないと思う。」






白髪(しろかみ)の少女である、ゆうは、幻想魔法で作った人形の呪いの魔法を解きました。



挿絵(By みてみん)



夜明けがきました。






みんな、人形から、解放され、自由になりました。




その後、みゆき・トレント・ヘクマティアルは、名前をあやの・トレント・ヘクマティアルに変えて、自分の王国をつくり、自分を護衛してくれる親衛隊を幻想魔法で、作り出しました。


挿絵(By みてみん)


新しい王国で、あやのはかつて自分を傷つけた人々とも、少しずつ言葉を交わすようになっていた。




最初は恐怖と嫌悪感でいっぱいだったが、彼らが過去の行いを後悔し、償おうとしている姿を見るうちに、あやのの心にも変化が訪れる。




「あの時の絶望は、確かに私を深く傷つけた。でも、彼らもまた、あの歪んだ世界の犠牲者だったのかもしれない…」




ある日、かつて自分を陵辱した男が、涙ながらに謝罪してきた。あやのは、彼の震える肩にそっと手を置いた。



挿絵(By みてみん)




「もう、大丈夫です。あなたも、辛かったでしょう?」




その言葉は、許しというよりも、共に苦しみを乗り越えようとする、あやのの新たな決意の表れだった。




この新しい王国で、彼女に絶望を与え、世の中の厳しさを教え、また、優しさを教えてくれたみんなとあやのは、一緒に幸せに暮らしました。




挿絵(By みてみん)




(生まれ変わった白髪(しろかみ)の少女と新しい王国)



挿絵(By みてみん)



(生まれ変わった白髪(しろかみ)の少女とみんな)







幻想魔法(紫紅姫=むらさきべにひめ):事象・能力・存在などを吸収して自分のものにでき、任意の相手に能力を譲渡できる世界級魔法。(世界の法則を司る魔法) 弱点:相手の心からの承諾が必要であること。




最大技:想像の具現化




代償:【自分】の記憶の封印 or【自分】の記憶の喪失



静寂(しじま)に浮かぶ 白亜の夢

優しく灯る 光の庭

小さな手から 生まれた都市(まち)

無垢(むく)な願い 包み込んでた

笑顔の輪に 満ちた日々も

心の奥で 揺らぐ影

信じた空に 広がる不和

なぜ、この声 届かないの?



甘い言葉 偽りの(みつ)

心に蒔かれた 疑いの種

「力を奪われた」と 囁く声が

温もり壊してゆく

ねぇ、みんな…どうして?

瞳に映る 歪んだ憎悪(ぞうお)

ああ、この手は 何も救えない



崩れ落ちた 幻想(ゆめ)の果てに

響く絶望 魂の叫び

引き裂かれた 記憶の淵で

(Are you seeing the real world?)

夜明けはまだ 遠くても

この痛みが 導くなら

再生(さいせい)の光 掴み取るまで

偽りの世界 打ち砕け!





作り上げた 偽りの(いと)しい日々も

温もりだけは 真実だった

凍てつく記憶 優しく溶かす

小さな手が 教えてくれた

見上げた空 変わらない青

胸の奥に 芽生える想い

この(いのち)に 意味があるなら



全てを思い出した時

瞳に映る 真実(こたえ)の光

繰り返す悲劇 終わらせよう

(Can you feel it now?)

夜が明ける 幻想(ゆめ)彼方(かなた)

この魔法が 導くなら

新たな世界 創造(つく)り出すまで

希望の夜明け 共にゆこう!



輝く場所へ…

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