ヨシムネ、まってろよ
「いいか。だから、お前のヨシムネもな、子どもをいっぱい残したよ。そして今のラーメン食べてる俺と同じように飯を食べている。生きて行くには飯を食べるしかない。だから飯を食え」
兄は電話でそう説教した。
飼い猫のヨシムネが死んでから食欲がない。
ハア、僕も一緒にあの世に行くねヨシムネ。
そんなことを思って、アパートでぼんやりしていると、田中がやってきた。
「おい飯食ったか。一週間になるぜ。死ぬぞおまえ。大学にも来ないし、どうしたんだよ」
「ヨシムネと同じ世界に行くんだ」
「おいよせよ。病院行くか。やばいぜお前」
とにかく食料冷蔵庫に入れておいたから食えと田中は出て行った。
もうどうしようもないよね。生きるって僕にはわからないもの。
だがヨシムネ。僕にもわかる方法があるよ。
僕はヨシムネを包丁でさばいて腐肉を焼いて食った。
生きるために食う! 生きるために食う!
大学に戻ると田中が言った
「大丈夫なんだな」
ああ、腹一杯食べたから。
ヨシムネ待ってろよ。いずれ俺もお前と同じ世界に行く。