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送り狼にはなりません


 何故か突然婿養子? 


 ――ああ、娘しか居ないんだったっけ?!


 だけど父親が自分の会社の社長でお祖父さんが会長で、母親は異世界の女神様?


 会社の受付に緑の瞳のハーフの女の子がいる事自体、日常的には起こらない気はするが、ソレさえも小さい出来事である。



「えーと、あのう・・・」


「女神の娘だからさぁ伴侶に条件があってさ、なっかなかコッチの世界じゃ見つかんないのよね。で、偶々祐一君は条件ピッタリだったのよ~。ラッキーよね!」



 ――あれ? 俺の外堀どこ? 埋まってねえ? えーっ?!








 祐一のマンションから更に歩いて1時間くらいの所に、麗奈の自宅があるらしいので送って行くことになったので今は車の中である。


 彼女の保護者である筈の女神様は



「アトヨロ~!」



 と言ってサムズ・アップしながら軽い感じで光の中に消えていった。


 コッチの世界では自分以外は運べないんだそうだ。




 祐一の愛車はJeepってヤツで、バカみたいにガソリン代やら修理費がかかる面倒な相棒である。



「祐一さんゴメンね」


「ん~~?」


「私が好きになっちゃったから。巻き込んじゃって・・・」



 今は運転中だから、麗奈の方は向けない・・・ちょっとだけため息をつく祐一。



 ――覚悟を決めようかな。自分。



「あのさ、この車デカいしガソリン代メチャクチャいるんだよね。車検は高いし修理も面倒」


「え、はい?」


「手間がかかって大変なんだよね」


「?」


「最初は見た目に吊られて、エライもん買っちゃったなって思ったんだよね。でも結局好きでさ、ず~っと乗ってるんだ」



 赤信号でブレーキをゆっくり踏んで停まる。



「正直打ち明けると、まだ君のこと俺はよく知らない」


「はい」



 横目で見ると麗奈の瞳が不安そうに、ウルウルしている。



 ――くっ可愛い。



「えとさ、知ってるかな。愛車は自分の女だって云うんだよね。あと、好きな車と同じタイプの女性に男は惹かれるんだって大学の時の先輩が言ってた」


「・・・」


「見た目が良いけど手間暇かかってさ、君みたいだよね。コイツ」


「!」


「まあ、何で俺なのかが分かんないけどさ、俺じゃないと駄目みたいだから付き合ってみようか?」


「!」


「今はこれくらいしか言えない。だからちょっとだけ俺の気持ちが追いつくのを待ってくれると、ありがたいかなって思ってる」



 ――あ~もうこれで精一杯。ガラじゃないよな~。はあ。



 信号が青になった。


 前を向き直し、アクセルを踏み込む。



「嬉しいです。ありがとうございます」



 助手席から小さな返事が聞こえてきて、窓の外を流れていく車のライトが、夢の中みたいに凄く綺麗に見えたーーー






 

 麗奈の自宅、と言っても実家からは既に独立していて一人暮らしなのだと言う。


 ちょっとだけ胸を撫で下ろす祐一。



 ――だって、こんな時間に自分の務めてる会社の社長とか会長とかに誰だって会いたく無いよね?! しかも社長の娘送ってきたんだよ! 絶対にキャパオーバーだよね!?



 麗奈が眉尻を下げて、



「まあ、母があの通りの人なので突然突撃して来るんで、一人暮らしという感じは正直あんまりしないんですけどね」



 そうね。鍵かかってる家でも平気でリビングにイキナリ現れる女神様だもんね。



 凄く賑やかそうではある・・・








 白い大きなマンション前のロータリーで車を停める。



 ――うわ~、高給マンション。まあ、女の子の一人暮らしだもんね。セキュリティ高いトコ選ぶよね~。



 感心しながら彼女の父親、つまり祐一の会社の社長を思い出した。



 ――やたらとガタイのいい厳つい人だよな。滅多に会わないけどさ。絶対にあの人、娘のマンションの○コムとかに別料金払いそうだよ!



 車から先に降りて、助手席側のドアを開けて手を差し伸べる。



「エッ?」


「ん、ああ。車高が高くて降りる時に大変でしょ?  特にスカートとかだと」



 大体において、このタイプの車はスカートを履いている女の子には向かないのを祐一も一応わきまえている。


 乗る時は平気でも降りるときにスカートだと引っかかったり捲れたりするのだと、以前しこたま怒られたことがある為自然と手伝ってしまう。


 祐一の手を取ってJeepから降りる麗奈。



「エスコートとか、祐一さんにしていただけるなんて・・・」



 顔を赤くして、明らかに照れて喜んでいる麗奈。


 実のところ、祐一にとっては別にエスコートをしていると言うほどでもなく、言うなれば怒られないように仕込まれただけだ。


 ダレに? モチロン、元カノである。



 ま、これは言わなくてもいい情報だね。



「もう、遅いから早く部屋に戻ってね。ここで見送るからさ」


「はい!」



 手を振る麗奈が無事オートロックを通過しエントランスに入っていくのを、ドアにもたれて見送った後、煙草を咥えてライターで火を付け愛車に乗りドアを閉めたら・・・



「ん~~ねえ、送り狼にならないのね祐一クン」


「うわぁっ! ビックリした!」



 ――女神が何で後部座席にいるんだよっ!



「心臓が口から飛び出すかと思いましたよ。ホントにもう~。熱ッ」



 最後のはタバコを落としそうになって慌てて握ったからだ。


  火がついてるからね・・・



「いやあ~、日本語で、こういうのデバガメって言うんだっけ。えへ」



 女神様のくせに、何楽しそうにデバガメしてるんだよ~。



「いつからソコにいたんですかっ!」



 ちょっとジト目になる祐一。



「え~と最初からかな~?」


「俺の精一杯を聞いてたんですね。そうなんですね」


「え~とね、この車の見た目に吊られた、のあたりからかな~」


「う~わ~ 恥ずっ。カンベンしてくださいよ」



 流し目で手を口の前に持ってきてニヤつくアイーシャ。



「若いって良いわねえ~ にしし」


「アイーシャさんも見た目若いですよねえ、いてててぇぇ!」


「女性ニ年齢ノ事、言ッチャダメヨオ~♡」



 ・・・言っちゃダメな部分だよ祐一、女神様、瞳孔開いてますってば。






 

「でもさ、何でウチの娘にちょっと待ってなの~?」


「あそれ、自分のせいです。俺、結構ひどい恋愛ばっかしてきたんで恋愛恐怖症っぽいんですよね」


「うわ。ナニソレ」


「気持ちが伴わないと、ろくな結果にならないって嫌ってほど経験したんで。今はレナさん、舞い上がってるみたいだし」


「ふむ」


「俺の方も、今日会ったばかりで、よしオッケーって言えるほど軽くもないし自信も無いですね。ソレに、もうすぐ29歳ですよ俺」


「今28歳ね。8歳違い位普通じゃん」


「だって、俺が高校生の時彼女まだ小学生1年生ですよ! 犯罪じゃん~~」


「う~ん、でもさ、100歳と108歳なら普通じゃ~ん」


「うっ。確かに」



 確かにそうなんだけどねえー。


 普通100歳越えてまで生きられないと思うよ。うん。



「可愛いとは思うんですよ」


「でしょー?」


「プロポーズされたのはビックリしたけど。初対面の男の部屋に付いていくような軽い子じゃ無いって言うのも何となくですが、わかるし」


「ふむふむ」


「だから余計にもうちょっとお互いのこと知ったほうが良いと思うんですよね。でも何で、あんなに慌てて付いてきたんだろ?」


「あ~、タイミングと、直感かなあ~」


「?」


「たとえばさ今これ手に入れとかないと、絶対に手に入らないかもって時あるでしょ?」


「はあ」


「収穫し損なったきゅうりは、翌日大きくなりすぎちゃって美味しくないとか」


「は?」


「メ○カリで、前々から欲しいって思ってたものが急に出品されて、迷った瞬間に他の人にポチられちゃうとか。あるじゃん」


「は?」


「だから~コレ! って思った時が手に入れ時なのよね~」



 わかるような分からんような・・・



「女神の系譜だからねえ、あの子もさ。チャンスは絶対に逃さないのよね~。諦めてくれるかなあ。アハハハ」


「はあ」


「自覚ないでしょうけど、祐一クン。君、会社でも結構注目株だからね」


「?」


「ダーク・ホースってヤツだね。ホントに自覚なし?」


「?」


「・・・自覚なしだねえ」



 まあ、いいか、と言う金髪美女は自分のスマホをどこからともなく取り出した。



「ほれ、祐一クンのも出して、LINE交換する」


「あ、はい」



 素直にスマホを出してLINEを交換する祐一。


 キャバ嬢だったら、お前ソレ、ヤバいやつだ。明日からガンガン同伴のお誘いが来るヤツだぞ~~


 ――ん?


 本能が何かにふと引っかかった気がしたが、祐一はそのまま流してしまったようでる。



「じゃあ、明日宜しくね~」


「ヘ?」


「麗奈とデート」


「あ。はい」



 思わず素直に返事する彼は、やっぱり真面目である・・・




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