明けて平和な日々がやって来る
最終話です(_ _)
イシカワ・コーポレーションの自動ドアをいつものように潜って、ロビーを歩く祐一。
受付に2人女性が座っていて、右側にいる茶髪の女性は以前から勤めている子で総務の若手社員と付き合ってるという噂がある。
もう1人は今どき珍しい位の真っ黒く艶めいたストレートヘアの女の子だ。
財務に在籍する同期の桜田が受付前に居座って彼女に話しかけていて、周りの男性社員達が遠くからチラチラと覗いているようだ。
「うわ~~あの娘、メッチャ美人じゃん」
「早速桜田さんがコナかけてるよ、ホントにあの人手が早いからなあ」
「女子社員に人気あるもんな。男前だしさ~あ~あ又持ってかれるんだぜ」
彼らの近くを通り過ぎると、小声が聞こえてくる・・・
「「おはよう御座います」」
受付嬢達が祐一に気が付いて、揃って頭を下げる。
「おはよう」
その声に桜田が振り返って
「よう、神谷久しぶりだな~3日ぶりか? 相変わらずのイケボだな」
と、軽口を叩いてくる。
「まあな」
そう返事をしながら祐一は胸ポケットから白い封筒を取出して、黒髪の受付嬢に
「ハイこれ鍵」
と言いながら渡す。
彼女はその緑色の瞳を一瞬だけ大きく見開いて
「ありがとうございます!」
と、封筒を大事そうに受け取った。
制服のベストの胸ポケットの上部の『Rena・Isikawa』という刺繍がまだ真新しい受付嬢は麗奈だ。
「お、何だ何だ? お前ら知り合いだったのか?」
桜田が2人の間に入って顔を見比べる。
麗奈の顔はうっすらと朱に染まっているが、祐一は平常運転のようである。
「麗奈さん、お昼休み迎えに来るから一緒に社食に行こうか?」
そう言いながら祐一はいつもの伊達眼鏡を外して、目の前の麗奈に向かって微笑んだ。
その一瞬で茹で上がる麗奈。
と、関係無い筈の横の受付嬢・・・
「え? え? え? どういう事? 神谷?」
「じゃあ、後でね」
眼鏡をかけ直して受付から離れ、エレベーターに向かう祐一を追ってくる桜田。
桜田が受付を振り返ると新人の女の子がこちらに向かって手を小さく振っていて、横にいる背の高い男、神谷祐一を見ると彼も彼女に向かって手を振り返している。
「ええと、神谷?」
「うん? ああ。麗奈さんは俺の婚約者だ。一昨日婚約した」
昨日猫を拾ったとか、今朝コーヒーを飲んだとか、まるで日常的にあったことを普通に話すように何の衒いもなくあっさりと桜田に言う祐一。
「「「え? え?」」」
扉が閉じたエレベーターの中で桜田と祐一の会話をそれとなく聞いていた周りの社員達が彼の顔に注目して全員ポカンと口を開ける。
「何だ、あの受付嬢、お前の婚約者だったのかよ〜、いい娘がいるからって呑みに誘っても断る筈だよな〜あんな美人が彼女だったんじゃなあ、仕方ないかぁ」
ハハハハと白い歯を見せて笑い、祐一の肩をバンバン叩く桜田。
「まあな。初めて会ってから今日で4日目だけど」
エレベーターの扉が開いて、スタスタと経理課へと歩いていく祐一の後ろ姿を見送りながら、
「「「「「え〜!」」」」」
と。
エレベーター内に残された桜田を含めた全員が大声で叫んだのは・・・
・・・お約束だ。
『ある日会社の受付に女神様がやって来た』
ー了ー
by. hazuki.mikado
最終話までお読み頂きありがとうございます(•‿•)
『受付に女神がいるよ』シリーズは、実は以前書きかけで挫折したものなのです。
自分自身が物語が長引くと挫折するんだな、と自覚してしまい大幅カットして書き直ししたものがこの作品です。挫折したサイトもこのなろうさんだったのでも一回チャレンジで載せさせて頂きました。
そのまま続編(まんま続きですw)の『出会って2日で婚約しました』をお読み頂けると幸いです(_ _)
hazuki.mikado