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全て世は事もなし


「いい天気だな・・・」



 和室に敷いた布団の中で雀の囀りで目が覚めた祐一は、昨日のどんちゃん騒ぎの余韻が自分に残ってないことをストレッチで体を動かして確かめてから、布団を担いで廊下に出た。


 その向こうの庭先にある物干し竿に干しておくためである・・・


 日曜の今日のうちに自宅へ帰って明日の会社の出勤準備をしないといけないな〜 とか考えながら下駄を履いて布団を竿に引っ掛ける、マメなアラサー男子である。








 火の着いていない煙草を咥えて台所に行くと、母の美沙が卵焼きと味噌汁を準備している所だった。



「おはよう、何か手伝うことある?」


「おはよう、祐ちゃん。お茶碗とか出してくれる? 石川さん所と一緒で7個ね〜」



 そう言いながら味噌汁の味見をする美沙。



「母さん、急に悪かったね」


「や~だ、お父さん達で慣れてるから大丈夫よ。アンタも神谷の男って事よねえ」



 ケラケラ笑う美沙。



「でもさ、異世界の女神様のオマケ付きは笑っちゃったわ~。石川さん所なら()()とのご縁も安心だわ~。やっぱり祐ちゃんは、親孝行な子だわねえって感心しちゃったわ」



 それは、ひょっとしたら引退後に異世界(あっち)に行く楽しみが増えたからではなかろうかと、一瞬だけだが胡乱な目をする祐一である。


 そうこうしているうちに母の足元に黒、三毛、雉虎の猫達がご飯の催促にやって来た。



「あらま、ここに来たってことは石川さん達が起きてるんじゃないの? ご飯にしましょうか。呼んで来てくれる?」



 おほほ、と笑いながら猫達のお椀にシシャモを入れる美沙であった。






 

 無事に純和食の朝食を腹に納め終えて、猫に後ろ髪を引かれる社長をなんとか宥めつつ、Jeepに乗り込む祐一と麗奈。


 アイーシャは美沙と友好を深めてから自宅へ直行したいらしく何故かお見送りの神谷家に混ざっている。



「帰り着く頃には自宅に帰っとくから〜」



 おほほほほと笑いながら笑顔で手を振っている。


 何かを企むに違いないという予感はあるが、明日は通常出勤なので帰らないとしょうがない。


 当然社長も出勤だもんな。連れて帰るか、と苦笑いをする祐一だ。


 のどかな土手沿いに車を走らせる。



「いい所だよなあ、神谷の田舎」



 流れていく景色を見ながら隼雄が言う。



「そうですね。俺も好きです。まあちょっとばかし住人の癖が強いですけどね」



 ハハハ、と笑っていると後部座席から麗奈が



「お父さんひょっとして、猫飼いたくなってない?」



 と、声を掛けてきた。


 隼雄は目を泳がせて押し黙った・・・








 社長を自宅のマンションに送り届けると、既に女神様がエントランス前で待機していた。



「お帰り〜! ダーリン♡祐一君は今日の所は麗奈を送って帰ってちょーだいね、美奈が『Ninjaグリーン』が来るのを手ぐすね引いて待ってるからねぇ〜」



 祐一が引き攣り笑いでJeepを発進させアクセルを踏みながら、



「指輪、買いに行こうか? 麗奈さん」



 そう言った。








 連れて行かれた高級宝飾店であーだこーだと祐一に言われながら3時間ほどかけて決めた、ピンクダイヤモンドの指輪。


 石のハートのカットデザインが可愛くてイメージピッタリだと祐一からも店員からも褒められて、照れながら買ってもらった麗奈であった。


 その日はウキウキでマンションに送って貰って帰ったが、後でその指輪の金額を知って驚きでひっくり返りそうになったのは後日談である・・・



 そんな事もあって、祐一は意外な事に、貯金がしこたまある事が判明した。


 マンションも彼名義の不動産だったことが分かり呆然としていた麗奈に、



「今の会社の給料だけじゃ無くて、スタントマンの給料も貯金してるから」



 そう言って優しそうに微笑む眠たげな垂れ目を見て



「イケメン当たりクジ過ぎるー!!」



 と、叫んだのは麗奈本人ではなく何故か女神様と美奈であったという。



 そして更に驚くことに、祐一は日本での活動は一切辞めてしまっていたが海外の映画会社のスタント出演はまだ現役だったということが判明した。


 年に1、2回長期休暇を取って海外に渡り、映画会社との契約期間中の出稼ぎをしてくると言って笑った祐一である。



 神谷の忍者は出稼ぎが好きなんだそうだ・・・




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