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第7話 一抹の不安

前回までのあらすじ!


神に作られた存在である少女ピメリィ。

彼女は使命を果たすべく、クレイユ教諭に会う為、シャーリア魔法学園の教員へと志願する。

筆記、魔法実技を満点で突破した彼女だったが、最後に内容が全く分からない科目「基礎魔法学」の模擬授業を行う実技試験を行う事となる。


自らの能力「アカシックレコード接続能力」をなぜか主 エリーサに封じられ、絶体絶命のピンチに陥ったピメリィ!

一体、このピンチを彼女はどう乗り切るのか!



「不合格!」

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」


普通に乗り切れなかった。現実が非情すぎる。


(いやいやいやいや、まずいってこれ!

私なりに結構頑張って、授業したんだけど!?)


「ロベルタ教頭、独断が過ぎますぞ。

合否は当然、全員で話し合って決めるべきでしょう」

「お言葉ですが、ディーレノ学園長!

この者の授業は滅茶苦茶です! 合否などもはや話し合うまでもない!」


そんな滅茶苦茶だったの!?


「学園長。

確かに、僕も基礎魔法学の内容からはズレているように感じました」


その場にいた若い男の教員もそんな事を言い始めた。

不味いって……これだとクレイユ先生に会えないじゃん。

どうすれば――。


「皆さん、ちょっと良いかしら?」


ディエス先生!

そうだ、ディエス先生は私を教師にしたいんだから、ここは何とかしてくれるはず。


「なにかね? 不老の魔女」

「今の村木ピメリィの授業。

確かに基礎魔法学としては0点と言って良いでしょう」


えっ、思いっきり貶してきてるんだけど!?


「けど。”魔粒子”の授業として見ればどうかしら?」


そう。

私は、基礎魔法学なんて何も分からなかったので、得意分野の魔粒子に関する授業を行ったのだ。

そもそも、この世の全てに魔粒子は宿っている。

だから、基礎魔法学とは魔粒子に関する事……と言えなくもない訳だし?


「授業のレベルは関係ない。

基礎魔法学の授業をしろといって、その授業が出来なかった。なれば、不合格。

失格と言っても良い。それだけのことだ」

「そうね。普通なら」

「何が言いたい?」


ロベルタ教頭は、仮面をしたディエス先生を思い切り睨みつけて静かにそういう。

ディエス先生の表情は、見て取れないが……特に動揺していないように見えた。


「5年前からこのガルドル国の方針で。

国立の魔道学園へは、ある特別クラスの設置が進んでいる。

このシャーリア魔法学園でも、今年から特別クラスが導入されると聞いたわ。

当然、教頭である貴方なら知っているでしょう」


特別クラス? 急に何の事を言ってるんだろう。


「……そういうことか」


教頭は納得したように頷いた。


「今の授業が出来るなら、特別クラスの教師に最適。

不老の魔女、貴様はそう考えるのだな」

「えぇ。

今の授業程、分かりやすくレベルの高い魔粒子の授業を行える人物が他にいるというの?」

「ま、待ってください!」


そう声をかけたのは、若い男の教員だ。


「そもそも!

今の授業に不正がなかったと言えるのですか!

20代にしてこれ程の知識量と技術。異常です!

不正があったのでは!?」

「グランツ。落ち着け」

「父さ――ロベルタ教頭」


教頭とこの若い男の教師は親子なのか。

言われてみれば、似ている気がする。


「不正については、ないと断言しよう」

「ロベルタ教頭。なぜ断言できるのですかな?」


学園長がそう聞くと、教頭は丁寧な説明をし始める。


「学園長、簡単な話です。

まず、彼女にカンニングペーパーを見るそぶりは無かった。

なれば、物理的な不正はないでしょう。

そして、魔法については言うまでもない。

この学園では一部エリア以外、魔法を発動した事が感知可能となっています。そう、結界によって。

ですが、結界に反応は無かった。

となると、残りの不正手段は1つ」

「超能力、ですかな」


超能力――それなら、知っている。

ほんの10年ほど前、人族の間に誕生した存在 超能力者。

その者達が用いる特殊な力だ。

分類上は、私のアカシックレコード接続能力もこれに入る。


「そう。しかし、それも発動が検知されなかった」


確かに使わなかったけど。

アカシックレコード接続能力を使ってても、その検知とやらには反応しなかっただろう。

なにせ、天界の力なんだから。

……でもエレーナ様は何を警戒して、能力を封印したんだろ。


「なので、不正がない。

なるほど、納得ですな。

ちなみにロベルタ教頭。その検知の方法というのはやはり?」

「はい、こちらを使いました」


教頭はそう言って、身に付けていた黒の手袋を外し——!?」


「超能力者管理の指輪でございますよ。

これがあれば、周囲200mの能力の発動を感知でき」

「ま、待って下さい!」


私は思わず叫んだ。

超能力者の存在は知っている。

そして、能力の発動を感知する指輪の情報も、私はこの国に入る前に仕入れている。


——普通の物であれば。


「どうしたというのだ?」

「それは!

この国で、邪教認定されているディーロット教の技術を応用した物では!?」

「そんな訳がないだろう。

これは、国から各国立魔法学園に配布されている物だ。

特別クラスをスムーズに運用するべくな。

ガルドル国が直々に送っている物に、国認定邪教の技術など使われているはずがない」


……分からないんだ。

魔粒子を解明できない普通の人じゃ。

でも、これは確実にあの教団の。


「ピメちゃん?」


ディエス先生が心配そうに声をかけてくる。

いけない。焦るな私。


でも、これで分かった。エリーサ様が能力を封じた理由が。

あの指輪なら、いや、むしろあの指輪だからこそ。

私が、能力を使ったら確実に感知される。

感知される位なら、まだ良い。

最悪なのは……。


(私の存在が、教団に見つかる事)


あの教団とは、一悶着もふた悶着もあった。

今の話を聞くに、国とディーロット教が裏で繋がっている可能性も否定できない。

こんな国立の学園で力を感知されれば、ディーロット教に足が付くかも。


(確かにエリーサ様の判断は正しいのかも?)


今の時点ではまだなんとも言えないけど。

……とりあえず今は。


「いえ、勘違いでした。

それより、不正が無いことは分かって貰えましたか?

グランツさん」

「うっ、分かりました」


若い男性教師グランツは、そう言うと縮こまる様になった。


「ふむぅ、となると……。

私としては、合格としておきたいですな」

「本当ですか!」


学園長ありがとう! やっと行けそう!

……厄介な課題も見えちゃったけど。


「私としても、異論は無い」

「待って下さい、父さん!

今年の特別クラス担任に選ばれたのは僕です!

こんな、今年から入る新人に重要なクラスは任せられません!」

「なんだと!?」


私は思わず食ってかかる。

喧嘩は買うぞ? 昨日の闘技場の時みたいに。


「うわっ! 待って下さいピメリィさん!

これは貴女の為に言ってるんです!」

「私の為?」

「そうです。

あの特別クラスの教師なんて、誰もやりたがりません。

生徒はたったの5人ですが、全員おかしい生徒か手に負えない生徒なんです。

だから、僕が皆に変わって引き受けたんです」

「うむ、それは事実だな」


校長も静かに頷く。なるほど、問題はありそうだけど……。


「でも、逆に言えばですよ。

私が特別クラスをやれば、グランツさんは普通クラスを出来る事になって良いんじゃないですか?

そっちの方が良いんですよね?」

「そ、それは……」

「私はどのクラスでも変わりませんよ。

目標がありますから」

「では……グランツ教諭は普通クラスの担任に。

ピメリィ・ムラキは本日付けで特別クラスの担任とする。

これで宜しいかな?

意義のある者は聞こう」


学園長は静かに響く声でそう言った。

意義は——誰からも上がらなかった。


「決定ね。ついに」


そうして、私はついに教師になるのだった。


(ディーロット教——)


微かな不安を残して。

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