第2話 魔法学園に行ってみる
「よし、早速行こう!」
朝起きて、適当な店で食事を済ませた私は早速、魔法学園シャーリアへと向かう事にした。
「でも、そもそも入れるのかな。
ま、入れなかったら、魔法で外から覗くだけでもいいか。
道は――あっちだね」
頭の中に、道が浮かぶ。
いつもの事だ。このまま行けば普通にたどり着くはず。
そう思いながら、歩いていると案の定、学生服を着た人の姿が増えてきた。
制服で談笑している人もいて、通学路と見て間違えない。
「今日から2年だな! 同じクラスになったら頼むぜ!」
そんな言葉が聞こえてくる。
そうだった、今日は9月1日。ほとんどの国で、学校が新しい学期になる日だ。
じゃあ、中を見せてもらう暇なんてないかもしれないなぁ。
「新入生は、こちらでーす!」
学校の関係者と思わしき人が道に立って、案内してる。
あの人に、中に入らせてもらえないか聞いてみよう。
「すみません、今日学園見が――」
「新入生ですね!?」
「いや、違くて!」
制服着てないから分かるでしょ!?
「新入生の方はあちらなので、どうぞ進んでください」
「だから、私は――」
いや待てよ――新入生のフリをして中に入るのもアリか。
バレても、逃げれるしね。
「分かりました! 行きますね!」
私は、そう言って学園の中に入っていくのであった。
†
「広いなぁ」
シャーリア魔法学園。
学園としてのレベルはそこそことはいえ、一応大都市の国立魔法学園だ。
施設はしっかりしているようで、敷地は広大だった。
「で、制服を着てないのは私だけと――」
案の定、周りからは奇異の目で見られている。
私の外見年齢だと教師にも見えないだろうし、何者だって事になるだろう。
「も、もし、そこの方?」
そうして歩いていると、30後半程に見える女性に声をかけられた。
多分、ここの教師だ。こ、これはやばいのでは!?
「な、なんでしょうか? 私はあくまで新入せ」
「あなたはひょっとして、クレイユ先生の代わりに再任用で来たディエス先生では!?」
「へ?」
「へ? じゃ、ありませんよ!
伝説の不老の魔女である貴女が一時的に再任用を受けて下さると聞いて、昨日は安心したのに!
脳の方は、ボケてしまったんですか!?」
誰の事言ってるか分からないけど、言われようが酷すぎでしょ。
それにしても、事情が分からない。
――アレを使おう。
「ですから、昨日!」
「昨日、クレイユ先生が引き抜かれて、教員が居なくなってピンチになった訳ですね」
「そ、そうですよ。なんだちゃんと覚えてるじゃないですか」
覚えてる訳ないでしょ。今、引き出した。
「代役が見つかるまでは、退職済みの教員を再任用で契約する事になって、そこで名乗りを上げたのがディエスだったと」
「凄く他人事みたいに話しますね。あなたの事ですよ」
ディエス。
今得た情報によると、不老の魔女を名乗る少女の外見をした150歳の魔法使い。
でも実際は不老じゃなくて、事情が特殊なハーフエルフみたい。
ハーフエルフだって事は、一部の者しか知らないと――なるほど、口を滑らせないようにしないと。
私と外見は……そんなに似てないと思う。
けど、外見年齢は同じくらい。髪色も私と同じ金髪だ。
私くらいの年齢、しかも、私服で学園内を歩いてる時点でディエスに違いないと思って、この教員は声をかけてきたんだろう。
ディエスは大分前にこの学園をやめたみたいだから、この教員とは直接会った事がないはずだし。
完全に勘違いしてる。誤解は解いた方が良いよね。
良い……のはわかってるけど、でも、とりあえずここは――。
「そう! 私が今日やってきた教員 伝説の魔女ディエスです!
さぁ、案内してください!」
面白そうな方に進む!
†
その後、私は職員室に案内され、今日の進行について説明された。
ディエスと旧知の仲の教師は、1人もいないようで、私が行っても誰もおかしいとは思わなかった。
難なく門の中に入れた事といい、この学園、本当に大丈夫かなと思ったけど……。
今は、ひとまずこの面白い状況に感謝!
この街に来てから、今が1番面白い。
でも、1つ心配なのは……本物のディエスがいつまで経っても現れない事。
「どうかしましたか、ディエス先生」
「いえ、何でもないです! まずは講堂で新入生に向けて自己紹介ですね!」
私が心配しても仕方ないよね。今は、なるようにしてみよう!
†
新入生として、魔法学園に向かう途中のミリアナは、見知らぬ金髪の少女に声をかけられていた。
「ねね、その制服、あなたシャーリア魔法学園の生徒?」
「そうです」
「私、ディエスっていうの。
この辺りに来るのうん十年ぶりで道が分からなくてね。
学園の場所、教えてくれない?」
「うん十年ぶり?」
目の前の人は、ミリアナと同い年か少し上くらいにしか見えない。
エルフやハーフエルフなら長生きの可能性もあるが、耳が長い訳でもない。
気配も人間とほぼ同じに感じられる。何者なんだろうと思った。
「あぁ、私不老の魔女なの」
「不老の魔女?」
そんな事がありえるんだろうかとミリアナは思ったが、そう考えている間にディエスの話は続く。
「昔、ここの教員やっててね。
昨日、今代の学長のお願いがあったから、戻って来た訳。一時的にだけどね。
貴女も教える事になるかもしれないわよ」
「――そうなんですね」
色々と疑問には感じた。
が、自分にはまだ知らない事の方が多いので、そういう事もあるのかもひとまず考えた。
そして、そのままディエスを学園に案内しようとし――。
「ちょっと待ってください」
て、ある事に気づき、やめた。
「どうかしたの?」
「私今日入学の生徒で、それまではハンターをやってました」
「……へぇ」
「その手の平の紋様、私が知る限りだと――」
「オシャレで刺青を入れてるだけ。別に紋様じゃないって」
「そうなんですね。
特級危険種の体にある紋様とよく似ていたので、気になったんです」
「どういう事?」
「最近、上位モンスター――特級危険種の力を、その身に取り込んだ者がこの国に何人か居るらしいんです。
その者達は、国指令でハンターの討伐対象になっていて、紋様だけ見てその類かと思いました。
ごめんなさい」
「全く迷惑な話ね。
そんな事より、さ、案内して貰える?」
「はい」
ミリアナは目の前の人間が討伐対象でなかったことに安心し、やや明るい表情で道の案内を開始した。
――その後ろで、ディエスは。
(まさか、この紋様の事を知っている人間が居るなんて。
手袋を忘れたのはミスだったわ。
相手は元ハンターとは言え新入生1人、ここで消すか)
下を向いて、そんな事を考えていた。
†
「ほ、本日はお日柄も良く……」
「あのー、ディエス先生? 大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫です。
えぇ、教師をやっていたのは大分前とはいえ、えぇ大丈夫ですとも」
講堂に向かう途中、他の教員たちから不審な目で見られる。
そりゃそうだよ。私もこんなきょどってる人が伝説の魔女って言われたらそんな顔になるもん。
やばいな、本当に緊張してきたかも。
そろそろ本当のディエス先生が来てネタ晴らしでも良いけどね! 私的には!
まだ来ないの!? そんなに時間にルーズな人なのディエス先生って人は!?
その情報も読み……取ろうと思えばできるけど、さすがにめんどくさい!
ふぅー、緊張するんじゃない! 私!
なぜなら、私には何でも完璧にこなせる最強の力があるんだから。
私には見える、全てが。
それが、私に与えられた能力。
世界には、宇宙の過去・未来・全ての情報が記録された「アカシックレコード」が存在するとされている。
私は、天使としての力でそれにアクセスする事が出来て、過去の記録限定で、大体読み取る事が出来る。
大体、というのは、私自身に限界があるからだ。
読み取る時に神経を使うし、情報を読み取っても、処理する私の脳に限界があるから、あまりに多い情報は読み取れない。
でも、この力を使えば大抵のことは出来る。反則級の力だ。正直、この力1本でここまで生きてきた感はある。
(疲れるから、日常生活では極力使わないんだけど……。
自己紹介ではガンガン使って、良い紹介にするぞ!)
そろそろ講堂に着く。
ふと、着く前に今、ディエス先生がどの辺りに居るか気になったので調べてみる。
「えっ!?」
私は思わず叫んだ。
——まずい、これはかなりまずい。
ひょっとしたら、手遅れかもしれない。
「すみません! 私お手洗い行きます!」
「ディエス先生!?」
私は速攻でその場を離れた。
なぜなら、ある人物がピンチだと分かってしまったから。
私の力は何でも見える。
なのに、こんな、こんな大事な危機を見落とすなんて!
「間に合って、ミリアナちゃあああん!!!」
私は全力で学園を駆け抜けた。




