遠すぎる11メートル
夏休み課題と学園祭準備で全然投稿できなかった..
遠い。
どこまでも遠い。
故郷(山岳地帯)の地面のように近い空と同じ空なのに、いまはどこまでも遠い。
前後上下左右体内過去現在未来心思考には肉体、精神を削っていく要素がいくらでもある。
足を前に動かすだけで、えぐれたりただれたりした自身の肉体からくる苦痛により精神が削られ、動く事により敵に見つかるのではないかという恐怖と、そもそも痕跡を残してしまってすでに捕捉されているのではないかという恐怖と、強酸性の液体と強塩基性の液体により体が溶かされていく感覚と、その液体同士の中和反応によりできた物質になどの活動を阻害したりしながら名のマシンが無理矢理動き、結果ほぼすべての細胞が傷ついたりしていれば一般人でも顔をしかめるのは仕方のないことだろう。
それでも進み続けた。理由もないのに。基地に帰るということを目的として動き続けた。
幸い食料はあった。災害用の食事などであれば50年は持つからだ。
そして見つけた。19年前に放棄された研究所の一つで、今でも語り継がれている最悪の研究所。
第4侵食工学研究所ー19年前、化物どもを「侵食」し現在の状況を作り出した元凶。
化物どものDNAや構成物質、魂魄構造はいつの間にかデータベースにないものに変わり、既存の兵器類(化学兵器で弱体化したおかげで、倒せるようになった)では対処できなくなり、第4侵食工学研究所は崩壊した。ただ化物どもを改造しただけではこうはならない。
化物どもは一応生物としての条件を満たしていた。
DNAや魂魄構造を解析ができないほどに改造してもだ。
原因は単純だった。未知の領域に知らずに手を出したからだ。(本当かどうかは知らない。消された事実があるかもしれない。)
19年前、24300年1月21日
対非存在最終抹消機構 現実
「第4侵食工学研究所、化物研究室から当機構の使用の申請が来ました。書類に不備はなく、実際に確認したところ、問題ありませんでした。」
「緊急性は」「レベル3です」「準備を始めろ」「了解です」
第4侵食工学研究所 化物研究室
「『現実』の使用許可が近日中に降りる。データをすぐに暗記し、記憶処理を受けろ」
「了解です。しかし、きちんとやつらを制御できるのでしょうな?その保証がない限り、計画は実行できませんが?」
「もちろんだ。全個体に致命的な欠陥を仕込むから、ペンが握れる程度の力があれば殺せる」
「であるならば」
「全ては予算と研究の為に」
「全ては名声のために」
「歴史に名を残すために」
その瞬間、人類は壊滅的な打撃をこうむるのに十分な行動をとった。不可能なことを実現するという行動だ。
処刑場の篝火のような輝かしくも危険な灯がともった。
19年前、24300年1月23日
想定が全てを超えた。
『現実』は正常に稼働した。しかし、『現実』の特性に問題があった。
『現実』の仕組みは非存在を存在になるまで無理やり圧縮するというものだ。(何言ってるかよくわからない)
そして非存在が存在となって出来上がった、非存在の結晶が取り込まれた。(圧縮して結晶になるのか。なんで?)
取り込めば存在は存在であり続けられなくなり、死ぬはずだが、死ななかった。(ただの結晶取り込んで死ぬわけないだろ)(いや死ぬよ)
超えてしまった。(壁を)
そんな最悪の場所たるここだが、一つ朗報がある。
研究所内の化物研究室以外は化け物がおらず、安全であるという点だ。
すべての研究機関内はそのテロ対策設備上安全だが、物資の補給ができないことから一般の建造物もろとも見捨てられた。
だから、ある程度資材も残っているし、木々に浸食された都市の道端よりは過ごしやすいため、避難場所としては最高だ。
決して良い場所とは言えないが。
分速約8ミリメートルぐらいの状態では、研究所までの約11メートルはあまりにも遠い。移動中に吹き飛ばされた運よく目指していた研究施設の入り口前だといえ、顎しか動かない状況ではほとんど動けない。
だが玄関までたどり着いた。
民間向けの治療を行っていたという臨床試験棟まで行こう。そこに行けば治せるはず。
日が沈み、月が昇り、味方機が空を飛び、敵を倒し、帰還し、新しい味方が来て、また帰る。
月が沈み、日が昇り、雲が空を泳ぎ、雲と空が赤く染まる。
味方機が交戦するころ、彼女は研究所内に入った。
医療用ナノマシン
効果:ips細胞を使った再生治療、テロメアの産生、ミトコンドリアに頼らないATPの産生を行う
戦闘用ナノマシン
効果:大脳皮質による大脳辺縁系の掌握補助、神経伝達速度の上昇、神経伝達経路の効率化