逃げられない
真上に全力で飛び上がり天井を叩き壊す。
「逃げるな!」 「逃げるぞ!包囲網要請!」 「こちら鉄道警察隊第一部隊。マル被、制止を振り切り逃走。繰り返す、マル被逃走。」 「誰か担架に怪我人を乗せるから病院まで運んでくれ」 「えー、お客様、落ち着いてください。」 「落ち着けるか!同僚が死んだんだぞ!」 「そうだそうだ」「責任をとれ」「なんで死んだの…なんで、どうして...」「いたい、痛いよう」「いやだ、死にたくない、死にたくない」
残されたものと旅立とうとしている人々の恨み節を聴きながら天井裏を走り、開けておいたダクトの出入口から逃げる。
「こちら2040初任務、成功。繰り返す、成功」
「こちら本部、了解。引き続き任務に当たれ。警察はもう検閲を敷いており、警視庁の第一、第二、第五航空隊と軍の第七航空師団、そして第一歩兵師団、第八捜索隊、対構造物殲滅部隊が出張っている。死ぬな。」
「ちょっと待ってください。航空師団までは分かりますが、1個歩兵師団が僕一人に対して出張ってくるってどういうことですか!?しかも捜索隊まで!?やつらから逃げられるわけがない!戦場のど真ん中で一人の人間を見つけだして殺害するような連中ですよ!?救援は!?」
「すでに全滅した...」
「そうですか...任務を引き続き成功させることに全力を尽くします。」
「おまえに幸運があることを祈っておこう。」
Side 捜索隊
「いいか、やつはすでに都心で白昼堂々大量殺人をしている!そのうえ逃げていることから、きわめて凶悪な大量殺人犯だ!用心しつつ、被害者のために、全力で殺しにかかれ!いいな!」
「「はっ!」」
「各自散開後捜索に当たれ!任務開始!」
世界一の探索・殺害のプロフェッショナル150人が、たった一人の新米工作員をーーー
「殺れ!」
捜す。
地上まで、2088メートル。激突までおよそ218秒。
生命維持装置の起動により、右半身の麻痺の治療開始。治療開始に伴い、出血停止および造血幹細胞の活動が促進され、体内のエネルギー減少。体内の全脂肪を消費するまで、あと8時間42分。
造血幹細胞の活動促進の副作用により、軽度のサイトカインストーム発生の恐れあり。
出血および昏睡による死の危険は消えた。