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転生魔王の国家建国!  作者: 日暮悠一
3/8

転生

「なら、まずは魔王について話そうか」


本日二度目の長話が始まる。これまた長いので要約させてもらうと、前提として魔王は一人ではない。


そもそも魔王とは、ドワーフ、エルフ、獣人、何にしろ、一定以上の力を得て魔の方向へと進化した者のことを指す称号だ。

ちなみに、聖なる方向へと進化した者は聖者と呼ばれるらしく、勇者も存在するらしいがそれとはまた別の存在らしい。


現在、というかアルシオンが生きていた時にいた魔王は七人。特に人数制限があるわけではないが、魔王へ至るまでの力をつけられる者はそう多くはなかった。

人間の魔王もいるが、長命種が圧倒的に多い。理由としてはそれまでの力をつけるのに長い年月が必要だということや、エルフと同じように寿命での死亡が少ないことが挙げられる。


そんな魔王達だが、全員が全員他の種族と敵対しているわけではない。

むしろ敵対ではなく中立の立場の方が多く、自分から積極的に戦いを仕掛ける奴の方が少ないそうだ。

中には国をまとめている魔王もおり、社会的地位も確立している。ゲームや漫画の魔王とは大分性質が違うが、乱暴者ばかりよりかはマシだろうと思う。


ヒャッハー系ばっかりみたいだと嫌だしな。


「ぶっちゃけ魔王になるかならないかも君に任せるよ。最初はどうせ魔にも聖にも染まっていないから、そのあとは君が道を選ぶといい」

「魔王の力を受け継ぐなら魔王になるしかなくないか?」

「いや、転生した時の魂は無垢なままだ。生まれながらにしてどちらかに染まっている者なんて存在しないよ」


確かに生まれた時は誰でも悪じゃないし善じゃない。性善説とか性悪説とかあるけど、子供ひいては赤ちゃんなんてそんな事考えられないし。


「それは転生してから考えてくれ。次にスキルと魔法について教えたいんだけど.....これは体で覚えた方が早いんだよね。まあ最低限は教えておこうか」


スキルに魔法ーー

俺のいた日本では絶対にあり得なかったフィクションの中の産物。アルシオンが俺の心の声を聞けるのもスキルが関係しているらしい。詳しくは教えてくれなかったけど。


魔法は文字通り魔力を元素に変換して発動させる技術で、魔力は例えるならどんなエネルギーでも作れる発電機のようなものだ。元素を操る魔法以外にも、結界魔法、精神魔法などがあり、それの使用には魔力制御技術とそれに準ずる知識が必要となる。


スキルに関しては、魂に根付くものであり、切り離すことはほとんどといって不可能であるという。肉体に宿る力ではなく魂に宿る力。それがスキルだ。


使い方を口で説明するのは無理なので、転生後自分で試してくれと言われた。


「まあ僕に出来る説明はこのくらいかな?」

「オッケーだ。大体は理解したと思う」

「そのくらいで大丈夫だよ。さて、魂だけで転生しても意味無いからね。体を作っておこう」


体を作る?体ってそんな簡単に作れるモンなのか?

いや、確かにどっかの誰かも水35ℓ炭素20kg〜とか言ってたけどさ。

まあ魔王だし何とかなるんだろ。俺が気にすることじゃないか。


「君はどんな見た目が良い?ていうか男がいい?女がいい?」


転生すると決めた時よりも楽しそうだ。

まあ分からなくもないけれど、自分の格好を自分で決めるってなんか面白い。


「男、かな」

「前世と一緒で良いのかい?一度くらい女子になってみたいと思ったことは?」

「ねえよ。性転換はいらん」


なんでそんなに女子を進めてくるのやら。俺は男じゃなくて女が好きなんだよ。性別変えたらそこらへんが変わりそうで怖い。それに女子は色々面倒だと女友達がぐちぐち言ってたからな。


「つまらないな。じゃあ髪色は?」


つまらないじゃないわ!

こっちからすれば性別は大問題なんだよ!


「髪色はそっちに任せる。他は?」

「了解。あとは目の色と顔の作り、それに髪型や身長、体重、肌の色、とかかな!」


細かっ!そんなに細かく指定できんのかよ。もうほとんどホムンクルスじゃん。


「酷くなきゃ適当でいいよ。アルシオンが良いと思うやつにしてくれ」


第一、体がなきゃアルシオンの顔も見れないし何も始まらないのだ。ディテールに拘るのもいいが、性能さえよければ良いと思う。

でも流石にめちゃくちゃ不細工みたいなのはやめてくれよ?


「.........考えておくよ」

「なんだ今の間はぁ!!」


だ、大丈夫なんだよな?信じてるぞ?


.........なんか心配になってきた。











それから体感では数十分ほど。


「できた!会心の出来だよ、雅也!」


アルシオンが歓喜の声を上げる。黙々と作業をしていたかと思えば、やっと俺の体が完成したらしい。

何度も念押ししたので大丈夫だとは思うが、アルシオンの言う「会心」の出来とやらを心配せずにはいられない。


「じゃあ早速この体に魂を定着させてみようか!」

「ちょっ!待て待て待て!いいのかよ!?色々調整とか.....」

「何も問題ないさ!僕が誰か忘れたのかい?」


そ、それはそうだけども.....心配なもんは心配なんだっつーの!ちゃんと乗り移れるのか?

そんな不安しかないが、俺に拒否権はすでに無かった。


「じゃあ、行くよー」


緩い掛け声がかかり、俺は目を瞑る(目は無いけど気分だ)。


内側から引っ張られるような感覚とともに、俺の意識は一瞬途切れた。そして次の瞬間、俺の目には久しく見ていなかった光が映る。


パチパチと何度か目を瞬かせ、先程まで無かった手を開閉すると、体があるといことを実感できた。


「これだけか?」

「うん、大した技じゃないからね」


口から溢れた疑問に、背後から声がかかる。肩を震わせて振り向くと、そこにいたのは金髪の美丈夫。漆黒の法衣を纏っており、穏やかな雰囲気なのになぜか気を抜けない。丸い机に肘を付き、一人用の椅子に優雅に腰掛けている姿はムカつくくらい似合っていた。


「お前がアルシオンか。やっとそのご尊顔を拝めたぜ」

「やあ、改めて僕が魔王アルシオンだ。体の具合はどうだい?」


そこらの女性ならコロリと落ちそうな笑みを浮かべるアルシオン。顔がイケメンなら声もイケメンってか?


「いい感じなんじゃないか?まだそこまで動いてないから何とも言えないけどな」


体調や気分におかしな所は今のところ見当たらない。体の機能もキチンと動いている気がする。


「なら問題ないね。やっぱり僕の術式は完璧だったわけだ」


アルシオンは満足したようにウンウンと頷く。ナルシストっぽい言動も、コイツがやると様になって見えるのだからイケメンというのはつくづく得な生き物だ。


「ところで、転生するなら名前を変えない?その見た目で雅也というのは違和感があるよ」


その見た目って言っても俺は自分の顔が見えないんだけどな。


「まあ俺は一回死んだわけだし別にいいぞ。でも、名前はお前が考えてくれよ?親みたいなもんだろ」

「そうだな....」


そう言って考え込むこと数分。


「ルクス、というのはどうだろうか?」


ルクス、ルクスね。


「いいんじゃないか?異世界っぽいしな」


考案した名前を褒めると、当然と言わんばかりに頷くアルシオン。コイツ結構俗物的だよな。


「それで、スキルや魔法ってのはどうやって使うんだ?」


実際に使ってみると言っていた魔法、スキル!さっきからやってみたくてウズウズしてたんだ!


「ここじゃ出来ないよ?一応精神世界みたいなものだから、現実の力は干渉できないんだ」


え.........?こ、ここじゃ出来ないのかよ!?


「じゃあどうやってスキルの使い方を学べばいいんだよ!?」

「転生してから頑張って!」


も、弄ばれた....クソッ!なんて野郎だ!いたいけな少年の心を踏み躙りやがって!


「まあいいや。それで、後は転生するだけか?」

「そうだね。他にやる事は無いですし」


スキルや魔法を試せないのは残念だが、出来ない事に執着していても仕方がない。やっと転生か、ここまで長かったような気もする。いや時間的には短いけど感覚的にね。


「もうお別れの時間か。僕のスキルや力の根源は転生する際に貴方の身体に譲渡される。しかし、あくまで与えられるのは力の種、それを開花させられるかどうかは貴方次第だということをお忘れなく」

「分かってる。ハナからそんな上手くいくとは思ってないよ」

「なら大丈夫だね、転生といこう」


アルシオンがブツブツと何かを呟き始める。話しかけられるような雰囲気ではなかったので空気を読んで沈黙していると、地面?に幾何学的な文様が広がっていった。


しばらくするとアルシオンの呟きは止まり、描かれた文様は光を発し始める。その大きさは東京ドームほどで、神秘的な光景が映し出されていた。


「じゃあよろしく頼むよ、ルクス」

「任せとけ、アルシオン、魔人族だろうが何だろうが頼まれた仕事はちゃんとこなして見せるさ」


俺を中心として展開された魔法陣は徐々に光を強めていく。これが最大限に達した時、俺は転生するのだと感覚で分かった。


「なんで、俺だったんだ?」


その前に俺はアルシオンに向かって最後の問いを投げかける。最初から気になっていたことだ。なんで、俺がこの転生に選ばれたのか。


「魂の一致率が高かったから、なんて理由じゃ納得しなさそうだね」


一瞬驚いたように目を見開くと、アルシオンは諦めたように口を開いた。

そうしている間にも光は強くなってきている。


「強いて言うならーー君が僕と似ていたから、かな」


似ている?どこが?


返答を返そうにも、もう声が出ない。


光はこの世界を呑み込んでいく。視界は真っ白に染まり、俺の意識はまたもや引っ張られる感覚に襲われる。

これが転生か。あまり気分の良いものじゃないな。











雅也がいなくなった精神世界で、アルシオンは一人佇む。

雅也を選んだ理由。最初はただ自分と魂の適合率が高く、力を十全に受け継ぐことができると思っていたから。


しかし、観察を進めていく内に彼の人間性にも目を向けざるを得なかった。その過程でアルシオンは決断したのだ。数ある候補者の中から、転生体を雅也に一任することを。


「頑張ってくれよ?ルクス」


願わくば、彼の第二の人生が笑顔と楽しみで溢れたものになりますように。と、そう祈らずにはいられなかった。

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