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転生魔王の国家建国!  作者: 日暮悠一
1/8

死亡、そしてプロローグ

ちょっと短いです。お納め下さい。

「死」とは何だろうか。


寒空の下俺、工藤(くどう) 雅也(まさや)はそんな事を考えていた。


特段深い意味は無い。自分ももう社会人になり、そこそこの年齢になった。だから、自分がどうやって死ぬのかが気になっただけのこと。


今まで、大した人生は歩んで来なかった。

悪くもなく、良くもないような普通の人生。いや、そう言えるだけ良い人生を送っているのかもしれない。

まあとにかく彼女いない歴=年齢、そこそこの企業に入社し、今年で32歳。


顔は悪くもなく良くもなく、身長だって人並み以上にはある。それでも彼女が出来たことは無い。まあ、作る努力をしなければできることなど無いとは思うが。


そして三十路を過ぎた頃だ。誰だ?三十過ぎたらモテるとか言った奴は。


まだ若い方だが、やはり将来についてというのはいつになっても付き纏う議題だ。それが自分の死生観ともなれば尚更気にせずにはいられない。


人を待っている間考え続けて最終的に思ったのは身体的な死と精神的な死の二つに分けられるということだった。


脳や心臓が活動を止めれば人は死ぬ。しかし、記憶の中で誰々は生きているんだ!みたいなセリフもあながち間違ってはいないのではないだろうか。


身体と精神の二つにおいて死があるのなら、片方が死んでも完全に死んだことにはならない。

まあ俺は断然、身体的な死が絶対であると思うけどな。


今から来る友人ならなんて言うのだろうか?


「雅也ー!こっちだ!」


と、噂をすれば何とやら。人通りの向こうから、高校時代からの友人がやってくるのが見える。


そしてその傍らには美人さんが。

悪友である進藤(しんどう)と、ソイツと今冬籍を入れた早村(はやむら)さんだ。もう進藤になっているのか。


かなり長い付き合いだが、まさかコイツがこんなに早く結婚するとは思っていなかった。結婚式には仕事が入っていて行けなかったため、今日はその埋め合わせをするために二人を招待したのである。


「どうも、工藤 雅也です。コイツとは昔からの知り合いなんですよ。結婚おめでとうございます」


俺と進藤が知り合いと言っても彼女とは初対面だ。人の印象は最初で八割が決まるというし、キチンと挨拶をしておこう。


「こんにちは、進藤 鏡花です。今日はよろしくお願いしますね」


ニコリと人の良さそうな笑みを浮かべて挨拶を返す早村さん。


しかし考えれば考えるほど、進藤がこんな美人をどうやって射止めたのかが分からない。

さっきからドヤ顔がウザい進藤を手振りで呼び寄せ、肩を寄せてそれを言及する。


「おい、お前どうやってあんな美人と結婚したんだ?騙されてるんじゃないのか?お前確か女を見る目最悪だったよな」

「ちょっ!それは高校の時の話だろ!鏡花は違うから!僻むなって、雅也!」


煽ってやったというのに直ぐにうざったいドヤ顔に戻ってしまった。小声で話しているとはいえ、早村さんには聞こえないようにしなければ。


「まあ、お前が良いならいいか」


ここで騙されるも騙されないも進藤の自由だしな。それに俺もあの人は大丈夫なんじゃないかと思う。パッと見の感想だが。


「そうだよ!てか早く行こうぜ、飯奢ってくれるっていうから腹空かせて待ってたんだ」

「了解」


話も終わったところで、予約していた料理屋に向かって二人を案内することに。

場所を知っているのは俺だけなので、必然的に俺が前を歩くことになる。つまり、後ろでは新婚二人がイチャイチャしているわけで......爆発しろ!


とまあそんなリア充を尻目に歩きながら、店の近くまでやって来た。


「あと少しで着きますよ。そこの角を曲がればーー」

「工藤さん、後ろ!!!」


早村さんの声が聞こえた。


しかし、それはすでに遅く。


キィィィィィィィィィ!!!!


甲高い音が鳴り響き、次の瞬間俺の視界は回転する。

すると地面に叩きつけられ、激痛が身体を襲った。


「ガフッ!ゲハッグフッ......!」


口から生暖かい何かが噴き出る。


「キャアアアアア!!!」


あれ....?身体が動かない。


かろうじて頭を動かし、横を見ると一台の車が横転しているのが目に入る。


もしかして、あれに跳ねられたのか...?

そりゃ痛いわけだ、ふざけやがって!


「おい!雅也!大丈夫か!?今救急車呼ぶからな!」


進藤と早村さんが慌ただしく動いているのが見えた。


あーもう大丈夫だって、進藤。


だって痛み感じないし。それに段々寒くなって来た。

いや、熱いのかな?分からないや。

まあどっちでもいいか。


だからそんな顔すんなよ、ちょっと死ぬだけだ。


遠くに行くようなもんだろ?


あ、視界が霞んで来た。一昔前のテレビの砂嵐みたいだ。


「お....!しっ..........ろ!......!」

「工.....さん!.............!」


これは、ヤバいな。


何も聞こえない。

何も見えない。

何も感じないーー


ああ、結局結婚のこと、ちゃんと祝ってやれなかったな。

最後の力を振り絞り、動かない喉を無理矢理稼働させる。


「あ"ぁ、げっごん、お、めでとう」


嫁さん、幸せにしてやれよ。


..............。


よし、これでもう気がかりは無い。


大人しく、潔く、死ねる。










工藤 雅也、享年32歳。

あの事件は居眠り運転が原因だった。

車道を外れて走っていった所、運悪くそこに人がいた。そんな日常にありふれたような事件、事故の一つとしてニュースに放映される。


そして雅也本人は偶然にも、彼の言葉を使うのなら「身体的な死」というものを我が身を持って知ることになったのだ。


本人曰く、死には二種類がある。


これは本来比喩として使われるものだが、偶然、いや必然と呼ぶべきか、彼はまだ二つ目の死を経験していない。


肉体は機能を停止しても、精神はどうなのか。その答えを知る者は()()()()()()誰もいない。


「魂を肉体から分離させるものは、生であって死ではない」


この言葉の通り、魂は世界を超える。


肉体ありきでは決して超えられない壁を超え、彼の魂は再び炎を灯す。










『やっと、見つけたよ。僕の代わりを』

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