表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

46/61

とあるモブが探索者の免許を取る話 後編-1

後編、長くなりそうなのでぶった切り。

次で終わる予定です。


大丈夫、某小説のように、上中下、完結編123とはならないから

 明けて次の日。時間はもうお昼過ぎなのである。

 午前中はどうしていたかって? 忙しかったぞー! そして楽しくもあり、また寂しくもあった。


 まずは昨日だ。

 晩ご飯どこで食べよーって話になったんだけど、色々迷った末、結局は我が家へご招待。よくよく聞いたらハナの泊まってるホテル、うちのそばだったし、それだったらと思ったわけさ。

 夏期休暇に入ってから、時間を見て片付けをしていてよかったぜい。


 何を食ったかって言うと、夏野菜たっぷりーお肉たっぷりーなカレー鍋ですわ。学生が友を家に招いて食べるものと言えば、やはり鍋! これ、夢だったのよねー。

 それに、夏とはいえもう九月の半ば。季節の変わり目で体調を崩しがちな所にガツンとスパイシーピリ辛な鍋、う~んパーフェクト! お酒もすすんじゃいますわー。

 ハナには、「冬悧がお酒を飲むのは、なんというか犯罪的だな。……いや、すまない」とか言われたけどな。ってうっさいわ! そんなこと言われなくてもわかってるつーのー。


 そんなこんなで、気付くと布団の中。ぴんぽんぴんぽんというチャイムで目を覚ました。

 布団から出ると、机の上はきれいに片付けられていて……。昨日のことは夢かと思ったね。玄関の扉の外に立っているハナを見て、すぐに我に返ったけれどもさ。

 うん、途中からちっとも記憶が無いけど、どうやらハナは後片付けをしてからホテルへと帰ったらしい。いや、返す返すも申し訳ない。


 その後は二人して合格発表を見に行った。当然ながら二人とも合格、免許を受け取ってきた。

 僕の場合は筆記が少しだけ心配だったけど、昨日の自己採点通りの点数でそこも合格してた。そしてそれは、ハナの指摘通りのところで間違えていたわけで……、つまりはどういうことかというと、ハナは満点だったわけですよ。

 ちくしょう、才能の格差社会を感じるぞ。


 実のところ、各項目の成績上位者は、特に希望が無い限り受験番号が公開されているわけで……。そこにずらっと並ぶハナの番号はある意味壮観だったね。

 誰かがそれに気付いたのか、徐々にざわつき始めてたけど、本人は我関せず……。というより、時計を気にして気付いてもいなかった。帰りの時間が近づいていたから仕方ないね。

 あとは、逃げるようにその場を辞して駅までハナをお見送り……。だけで終わらせるわけもなく、そのまま埠頭まで一緒してやったわ。ふーはははー。

 乗り換え含めても一時間ちょっとの道のりだからなー。余裕のヨッチャンってなもんよ。ついでに別れ際に山の滴的なお酒と、パリくにゅ食感の爽やか寒天ゼリーをお土産代わりに押しつけてやったわ。


 船での別れというと、紙テープしゅーをやりたかったんだが、なんかみんなやってなくて、一人だけやるわけにもいかず、そこは残念だったなぁ。

 あとはまあ、ほんのちょっと……。ほんのちょっとだけだけど、ハナと一緒にダンジョンにもぐれなくて残念かな。

 ほら、若干友達少なめな僕でしょ。珍しく会ってすぐに友達になれたんだから、どうせなら少しでも一緒に探索したかったよ。

 まあ、住む場所がこれだけ離れてるとなかなかそうはいかないよなー。大学あるから引っ越すわけにも行かないし、諦めるしかない……。


 僕は目元をこすると一歩踏み出す。

 先にあるのは、迷宮管理機構つくばダンジョン支部。そう、ハナを見送ったあと、とんぼ返りで戻ってきたのだ。出来うることなら、今日バックアップが受けられるうちにクラスを取得してしまいたいからなー。

 朝に比べて人は減っているけれど、それでもまだ、昼から出てきたであろう人もポツポツいる。間に合ったかな……?


 さて、どうやって申請したものか……。朝なら人も多かったし、臨時に並ぶよう指示を出してた人もいたんだけど、今はそんな人はいない。うーん、とりあえず受付に行けばいいのかな……。

 そう思い、受付らしき場所に足を向けたところで大きな声が上がった。


「おう。やっと来やがったのかよ、てめぇ」


 決して狭くはない待合に声が響き渡る。端的に言ってうるさい。

 ちらりと声の主を見やると、髪を真っきんきんに染めたいかにも不良っぽい男が、知り合いでも見つけたのか手を振っていた。

 ……うん。ああいう奴には関わらない方が良さそうだ。僕のような陰キャは忍ぶに限る。

 えっと……。あそこは普通の受付だから、……うーん、どこだ? なんでこうお役所的なところはわかりにくいんだよもー。


「――っめぇ、無視してんじゃねぇよ」


 さっきの男がまだ大声を上げている。なんだよもう、うるさいなー。

 そう思って後ろを振り向くと、いつの間にか近づいてきて僕に手を伸ばしてきていた。


(――え!? 何それ、こわっ)


 とりあえず横に一歩ずれる。

 当然、その手は虚空をかき男はたたらを踏んだ。


「――けてんじゃねぇよ」


 男は即座にこちらに向き直り、にらみつけてきた。

 じゃらじゃらとベルトの多い服も相まって怖い。こっち来んな、こっち見んなよもー。

 周りを見るも、関わり合いになりたくないのか、みんなは遠巻きにこちらを見ているだけだ。

 どうしよう……、逃げようか。でもせっかくここまで来たのに、何もせずに帰るのもなー。


「――っから、無視してんじゃねぇよ」


 僕が考え込んでいるあいだに、男がまたも僕に手を伸ばしてきていた。

 なんだよもー。怖いじゃんか。……よし、仕方ない逃げよう。

 ――ぐっと足に力を入れた。その時だった。


「ちょっとあんた、子供相手に何やってるのよ」


 女の声がした。

 横合いから伸ばされた手が、男の手をつかむ。見ると、苔色のマウンテンパーカーを羽織りタイトなダメージジーンズをはいたトウヘッドの女性が、僕をかばうように足を踏み出してきている。……足なげー。一体何頭身なんだよ。


「――んだてめぇ。なに横からしゃしゃり出てきてんだ。オレはそいつに話があるの。お前なんかお呼びじゃねぇっての。どっかいけよ」


 男は女をねめつけ、シッシとばかりに手で払う。

 …………え!? 不良のにーちゃん、もしかして僕に用事があったの? まじかー。そうなると完全に無視した形になるよね。怒るのも当然? んー、でもどっちにしても関わり合いになりたくない人種だし、スルー決定だから結論変わらないかー。


「はあ!? だからって子供に手を出していい訳ないでしょ。この子だって怖がって泣いてるでしょうが」


 トウヘッドの女性は、不良の兄ちゃんの怖じ気もせず、ズイとばかりに僕の前に立つ。

 背高っ、しかもスレンダーながら結構鍛えてるなー。昨日に続いて今日も格差を感じるぞ、ちくしょう。

 いやだがしかし、ちょっと待て。さっき子供とか言わなかったか? 察するにそれは僕のことだろうか。あとついでに言うと泣いてないし。

 うん、否、断じて否である。とっさに声を上げようとするが、不良のにーちゃんの呆れたような声が上に重なる。


「あぁ!? 気付いてねぇみたいだったから、肩でも叩こうとしただけたっての。つーかだいたいよぉ、ガキみたいななりしてても、そいつが子供なわけねぇじゃねぇか。何言ってんだ?」


 おー、よく言ったぞ不良君。もしやキミ、意外といい奴では?


「そんなわけ無いでしょ。訳のわからないことを言って煙に巻こうだなんてさせないんだからね」


 残念、お姉さん不正解ー。僕は立派な成人です。


「おめぇバカじゃねぇの? そいつは探索者の試験を受けに来てたんだぞ。成人してるに決まってるだろうが」


「え!? うそ……」


 お姉さんは振り返って僕の顔をまじまじと見下ろす。僕も慌てて何度も頷き返した。そうだよー、こう見えても二十歳だよー。


「ほらな? つーわけでおめぇはお呼びじゃないの。ほら、いったいった」


 そう言って不良君が追いやる手を、お姉さんがビシリとはたき落とす。


「はんっ、だからって、あんたみたいな乱暴者とこの子を二人きりにするわけ無いでしょうが」


「ってーな。乱暴者はどっちだっつーの。オレはそいつに聞きたいことがあるだけなんだよ。おめぇは関係ねぇんだから、どっかいってくれねぇかな」


「そんなわけ――」


「マジめんどくせぇ――」


 ……う~ん。本人そっちのけで盛り上がっておるわ。しかも悪い方向に。

 個人的にはそおっとフェードアウトしていきたいんだが……、なーんかじょじょに注目浴び始めたんだよね。

 そりゃそうか、待合に入ってすぐのところで大騒ぎしてるんだものなー。だからって遠巻きにしておいて何もしないのもどうかと思うけどね。

 とは言え、職員の人もこっちを見ながら動き始めてるし……。このままだとマズいよなー。ダンジョン入るためにはここに来なくちゃならないんだ。言わばこれからの職場。あんまり印象悪くしたくないし。

 …………よし、僕頑張っちゃうぞー。


「ふ、二人とも……、お、落ち着いたらどうかな」


「ん?」

「あん?」


 目つきこわっ、二人とも目つきこわっ。お姉さんは顔の造形が整ってるだけに目つき鋭すぎるし、不良君は単純に顔が怖いんだよ。そんなににらまないでよ、もー。

 よし、負けるな僕、頑張れ僕。


「ほ、ほら。みんなも注目してるみたいだし。と、とりあえずあっちに腰掛けてーとか?」


 僕はすみの歓談スペースを指さした。


「……ちっ。しゃーねぇ行くぞ」


 不良君は辺りを見回して状況を察したのか、舌打ちをしそちらに向かう。


「なんであんたに命令されなきゃならないのよ」


 お姉さんも文句を言いながらもそれに続く。


 よし。ひとまず危機を脱した。いや、全然状況はよくなってないけど……。

 うーん、どうしたものか。

 歓談スペースを見るとすでに二人は座っていて、お姉さんはこっちを見てにこにこしてるし、不良君は乱暴に手招きしてる。

 うう……、行かなきゃならんよなー。とりあえずコーヒーでも買っていくか……。

 ほんともー、どうしてこうなったんだよー。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=7535352&siz
― 新着の感想 ―
[一言] 次にお前は『要望が多かったのでトーリ君連載化しました』という
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ