2-21.我、指パッチン!
誤字報告ありがとうございます。訂正しました。
ナチュラルにニュービーをニューピーだと勘違いしてました。恥ずかしい。
今までずっと間違えてたなんて。しかも声にも出して間違えてたような気もする……。
赤面ものです。
《ワンコないっすぅ》
《ふぅん、やるじゃん……》
《ま、あのワンコが有能なの、俺にはわかってたけどね》
《バカワンコって言ってたじゃーーん》
《相変わらずの手のひらくるっくるよな》
《そして、ただのワンコにかみ殺されるモンスターよ……》
《いうて、灰丸君。狩猟犬の類じゃろ》
《日本犬のどれかっぽいし。やつら下手したら猪や熊辺りとなら渡り合えたりするからな》
《絶天狼ほなほなやな》
《赤ヘルム君も涙目よ》
《後ろからの不意打ちもよかったよね。正直あのモンスターの攻撃が当たってたら、無事とは思えない》
《鍾乳石割れるとかどういうことよ》
《必殺シャコぱーーーんち》
《アレ食べれるかなぁ。おいしいのかなぁ》
《エビっぽかったし、おいしいんじゃない》
《魔石になっちゃったから食べれないけどね》
《踊り食いならワンチャンいけるか?》
《この食への飽くなき探究心よ》
《水の中にいる奴は何でも食べれると思ってるからな》
《高知では最近グソクムシも食べだしたよ。揚げるとえびせんみたいでおいしいよ》
《おおう、まじかー》
《まあこれであの兄ちゃんも、クラス取得か》
《もしかしたらペット職取得なるか?》
《おお、そういやワンコが倒してたしな。ワンコ使い……あるな》
コメント欄が男の取得したであろうクラスに思いをはせる中、男はというと……。
ようやく落ち着きを取り戻したのか、水辺から出て一息ついていた。
「うわっ、靴が傷だらけじゃん。念のため安全靴を履いてきてよかった……」
エビのはさみで傷つけられた靴を見ながらため息をつく男に、「わふ」と灰丸が吠える。
見ると灰丸は、褒めて褒めてと言わんばかりに、男のそばにお座りして待機している。
先程吠えたときに落としたのか、魔石を再度口にくわえ、しっぽをぶんぶんと振り回していた。
「ははは。ありがと灰丸。助かったよ」
男は魔石を受け取り、わしゃわしゃと灰丸を褒めなでる。
ひとしきりなで回ると、灰丸は満足したのか、男の膝の上に寝っ転がった。
それの腹をやわと揉みながら、男は独り言つ。
「さて、こうなると灰丸は動かないしな。その間に取得したクラスの確認でもしておくか。えっと……」
男は宙に目を動かす。
「おっと、クラスが3つもあるじゃないか。妹巫女ちゃんが話してた複数のクラス取得条件をクリアしたって事なのかな? まず一つ目は……、テイマーか」
ちらっと膝の上でだらしなく寝そべっている灰丸を見やる。
「これは灰丸が、あのエビを倒してくれたからか? それとも灰丸を連れてダンジョンに入ったからか……。まあ今後灰丸を連れてくるとしたらこのクラス一択だよなぁ。むりやりにでもついてきそうだし……。んで、もう一つはスカウトか……」
今度は自分が滑落した鍾乳洞を見る。
「このスカウトって、多分斥候のことだよな。ファンタジーの斥候職って罠解除をしたりするんだけど……。なるほど、この下り坂が罠扱いなのか。そして罠に引っかかった俺はスカウトの条件を満たしたって事かな? 残る一つのクラスはっと……。いや、これはないな」
男はこめかみを押さえ、首を横に振った。
「なんなんだ? このクラスは……。モナちゃんの悪ふざけかなんかか? まあ、これは選択肢から外すとして……。順当にテイマーにするか。これだと、ダンジョン潜っていくうちに、灰丸とコミュニケーション取れそうだし、何よりコイツがもっとおとなしくなってくれるかもしれないし……。いや、それは期待しすぎか……。それじゃあ決定っと」
クラスを選択決定したはずの男だったが、途端慌てはじめる。
「おい、選択できませんってどういうことだよ! いや、やめろ! 三つ目だけはやめろ! おい、なんで勝手にクラスの決定をしてるんだよ! やめろ! おいっ。マジかよ……。ふざけんな!」
男は拳でもって地面を殴りつける。
「わふっ」
驚く灰丸をそのままに、男は声を地の底から声を絞り出す。
「許されねぇ。モナちゃんが、何よりコメント欄の奴らが……、許されねぇ」
《なんで俺たち!?》
《なんか恨み買うようなことをしたか?》
《割と暴言は吐いてるから、どこかしらで恨みは買ってそう》
《クラスに関してはお門違いだろう。恨むならモナを恨め》
《そうだそうだー、逆恨みだぞー》
《そういうとこやぞ》
《しっかし、結局コイツはなんのクラスになったんだろうな。そこがわからないと、恨まれる理由なんかさっぱりだわ》
《多分強制的に三つ目のクラスになったんだろうけど、詳細がわからんよね》
《コイツに許される必要性は感じないけど、クラスは気になるな》
《どうせヘンテコなクラスだろうしね》
《ねぇモナモナ。彼ってどんなクラスについたの?》
なんで我が恨まれねばならんのじゃ……。
そんなことを、ブツブツとつぶやいていたモナだが、コメントに気がつき顔を上げた。
「ふむ、我も気になるし調べるとしよう」
そう言うと、手元の資料をめくる。
モナが顔を上げたのはすぐだった。その朱の瞳は同情の色に揺れている。
「ははあ、なるほどのお。気持ちはわからんでもないが、我を恨むのはお門違いじゃぞ……。悪いのはコメントの奴らじゃな」
《なんでさ!》
《マヨちゃん責任逃れしてるー。そういうのはいっけないんだぞー》
「うっさいわい! 悪いのはそなたらの方じゃ。こやつのクラスを知れば、絶対ぜーったい、そなたらも納得するはずじゃ!」
台パンし、感情をあらわにするモナだったが、ふと考え込むように動きを止める。
一拍の後、モナはニヤリと口角を上げ、悪い笑みを浮かべた。
「そうじゃな……。そなたらが悪いのは当然としても、我に濡れ衣を着せたのはいただけんな。こうなったら本人の口からクラスを言ってもらおうか。ちょうど動画を見ておるようだしの。罰じゃ、罰」
《出たな! ダークマヨマヨ》
《モナちゃんがフォースの暗黒面にとらわれてしまった……》
《まあ、まれによくある》
《だいたいにおいて、即オチ2コマするしな。モナちゃん》
《しっかし誰だ?》
《モナちゃん動画見てるって言ってたのに、声を上げねえな》
《仕方ない、俺たちの方で特定するか》
《とは言っても手がかりが少ないんだよなぁ》
《一番の特徴はワンコを連れてるところだけど、それ以外はこれと言って特徴はない》
《残る二つのクラスも、テイマーにスカウト。冠ついてないからユニークっぽくないし、いたって普通?》
《特徴がない? 普通?》
《あ、オレわかったかも》
《奇遇だね。こっちもだ》
《せーの》
《普通君》
《ノマルンるん》
《ノーマル》
《ですよねーーー》
《なんでわかるんだよ!》
《ほらいたーー》
《私たちに気づかれた、君のたった一つの、だが重大な過ち。それは君があまりにも普通だったってことさ》
《まさか、普通であることで特定されてしまうなんて……》
《まあ、まわりが異常だと相対的に“普通”は浮くよなぁ》
《で、結局ノマルンはどんなクラスになったの?》
《……ノマルンだよ》
《いや、だからノマルンがノマルンであることはわかってるって》
《まてまて。もしやクラス:ノマルンでは?》
《う、け、る》
《大草原不可避》
《え? マジでそうなの?》
《ああそうだよ……》
《むせるわー》
《ちなみに能力は?》
《色々と普通に出来るって書いてあった……》
《そこでも普通かよ!》
《さすがノマルン》
《一応、灰丸を連れ歩けるし、トラップも回避できるみたいだけど……》
《お、よかったじゃん》
《まあ、器用貧乏感あるけどな》
《極めれば万能》
《極める頃には、尖った奴はさらにとがってるから……》
《まあねぇ》
《いると便利枠だな》
《ちくしょう、許されねぇ。モナちゃんも、何よりお前たち、許されねぇよ》
「だから我を恨むのはお門違いじゃと言うとろうが……」
モナは肩をすくめ嘆息する。
「それでは次に行くとするか。ウスベニ」
ぱんぱんと手をたたき、モナはウスベニを呼ぶ。ウスベニは桶いっぱいの水を引きずって現れた。
モナはその水に右手をいっぱいに浸すと。その手をカメラに向かって大きく差し出し、指を弾く。
――ぺしょん。
鳴らなかった。
「何でじゃーー! 指が濡れてると鳴りやすいって言ってたであろうがー。なんでぺしょんなんじゃ。なんでじゃー」
《誰だ。モナに指パッチンの極意を教えたやつは!》
《でも、モナちゃんはちゃんと理解できてなかったから……》
《適度に湿ってると鳴りやすいよ。適度にね》
《マヨちん、濡らしすぎだよー》
《びっちょびっちょに濡れてるのに鳴るわけないんだよなぁ》
《濡れてる。はっ、閃いた》
《――チャキ》
《――スン》
《うっきうきでウスベニちゃんに水まで用意させてからの失敗は面白すぎ》
《内心、ドヤってたんやろうなぁ》
流れるコメントに、恥ずかしがってモナが身体を小さくしたところで、画面は移り変わった。
感想に書かれてたネタを拝借しました。指パッチンのくだりですね。
仮さん、ありがとうございます。
今回は失敗しましたが、次のモナはきっと成功することでしょう。
さて、明日はおやすみします。
次の更新はあさって日曜の予定です。
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