07.我、ぽよんぽよんに名前をつけてもらう
評価とブクマがめっちゃ増えてた。
皆様、励みになります。ありがとうございます!
《さて、雑談つっても何を話すかだが……》
《どうしてもさっきのアイツ関連になっちゃうよね》
《気になることはあるけど、もうちょっと間をおきたい》
《それじゃあ、何にしようか》
《はい ノノ》
《ふむ、元気がよくてよろしい。何かね》
《提案です! モナ殿の持ってるぷよんぷよんの生物に名前をつけてみてはいかがでしょうか》
《いい案だ。ワタシはそれでいいと思うが、皆はどうかね?》
《賛成》
《賛成》
《賛成~》
《サンセイ》
《アグリー》
《よし、全会一致でその案を可決する》
《パチパチパチ》
《888888》
《888888》
「な、なんじゃぬしら」
唐突な話題の切り替えにモナはたじろぎ、だが――、
「あ、でもそれ知っておるぞ、拍手じゃろ。前に言っておったからな。我、覚えておる。大人だからな」
そうしてモナも手を打ち合わせ、手を合わせた。
これにはコメント民もにっこりである。
《偉い、よく覚えてたねー》
《(^_^)ノ""""ヨシヨシ》
《いい子ですねー》
《完全に子供扱いな件について》
《よきよきよ》
《ま、そんなわけで、そのぽよんぽよんの生物の名前をつけたいと思うんだ。いいよね、モナ》
「む…………。うむ、よいぞ」
モナは少し考え、頷いた。そうして乳白色のぽよぽよをつつきはじめる。
「よかったのお。おぬしも名前をつけてもらえるようじゃぞ」
ぽよんぽよんもそれがわかったのか、嬉しそうに体を震わせた。
《よっしゃー、名付けの時間だコラァ!》
《モナちんにはつけれなかったけど、今度こそは!》
《コイツも見た目かわいいからな。いい名前をつけたいな》
《いやあ、モナちゃんはそれ以外の候補がひどかったよなぁ》
《見た目からか、性質からか、それともパロってくるか。う~ん悩ましい》
《んじゃ、はーい》
《はやっ!? なんだね?》
《白饅頭!!》
《ざっっっつうぅぅ》
《見た目直球すぎる》
「ふむ、白饅頭とな……。おいしそうじゃのぉ」
舌なめずりをするモナに恐怖を感じたのか、ぽよんぽよんはズリズリと距離を取る。
「あ、違うのじゃ、ぬしがおいしそうというわけではなくて、白饅頭がおいしそうと言ったのじゃ。確かにぬしは白饅頭に似ておるだろうが、我はそこまで食い意地は張っておらんし……。ああ逃げんでたも」
ますます離れようとするぷりんぷりんを、モナは椅子ごと体で追いかけた。
《完全に自分で自分の首を絞めてるよな》
《食い意地が張ってないとか……。わ、ら、え、る》
《(食い意地は)張ってます》
《白饅頭を名前にすると危険か。いつかモナが手を出しそうだし》
《ないとは言い切れないんだよなぁ》
《んじゃあモチ!》
《かわらねぇ!》
《大差なぁい》
《ならモチ子!》
《ちょっとはマシになったか?》
《いや、あんまりかわらんだろ》
《うちの猫の名前だぞー》
《じゃあ、何がいいって言うんだよぉ》
《食べ物から離れろやwww》
《柄が悪くなってるの笑う》
《仕方ねぇ。それじゃあプヨンプヨンで》
《それはちょっと、なんというか色々危ないな》
《却下やね》
《純粋にローマ字打ちキーボードだと打ち込みしづらい》
《ぷよんぷよん…………。あ、本当だわ》
《俺らが呼びづらいのはいややね》
《フリック入力だとそうでもないんだけどねー》
《文字数多いから略されて危険なことになりそう》
《なら羽二重は?》
《お? 食べ物から離れた?》
《残念、郷土菓子にもそういうのあるんだな》
《あちゃー、ばれたかー》
《んじゃあプリン》
《また食べ物に戻ってきたww》
《プリンプリンセス》
《あ、ちょっと凝ってきたな》
《長くね?》
《マーシュマロウ》
《ウスベニというのはどうでしょうか》
《ギモーヴ》
《スモアだ》
《その四つ、全部マシュマロつながりでしょ~~》
《んじゃあ、ゴーザ》
《それ、マシュマロマンじゃん》
《よくわかったな》
《世代だからなぁ》
《これだからZZiは……》
《Yes! ゴースト○スターズ!》
《好きだったな》
《リメイクも結構面白かった》
喧々囂々のコメント欄で、当然議論は定まらず……。
《うーん、いくつも案は出たけど決まらんね》
《どうにも決定力が無い》
《モナちんの名前の時は割とすんなり決まったけどなぁ》
《確かに決め手に欠ける》
《前と一緒でモナちゃんに決めてもらえばいいんじゃね》
《まあそれが妥当か》
《んじゃ、そういうことで。モナー》
《モナモナ~》
反応はない。それもそのはず、モナはぽよんぽよんの白饅頭をめでるのに忙しかったからだ。
「おほ~。ういやつ、ういやつじゃのぉ、おぬしは。ほれほれ~」
つんつこつつくモナの指に反応して、白饅頭もぷるぷる身体を波打たせる。
それが楽しいのか、さらにつっつくモナ。そして身体を震わせる白饅頭。
まさにエンドレス。お互い楽しそうなのではあるが……。
《はぁぁぁ》
《尊い》
《よき》
《よくねーよ。コメ、ガン無視しないでよ》
《気づいて! こっち気づいて~》
《さみしくて死ぬぞ》
《ウサギか!!》
《ウサギはさみしくても死なない定期》
《んじゃ、アルパカか!!》
《ああ、それはさみしいと病気になるって聞いたことあるな》
《なるほどなぁ。このチャンネルは勉強になるなぁ》
《違う、そうじゃない》
《やっべ、跪いちゃいそう》
《すーぐ脱線するんだから》
《モナー、こっち気づいてー》
「…………んあ?」
気づいたのか、顔を上げるモナ。だがその手はなおも白饅頭をなでくり回している。
「お、おう。すまんかったの。それでなんじゃ? あ、ああ、こやつの名前を決めるんじゃったな。で、決まったのか?」
モナは慌てて補足する。
《聞いてなかったかー》
《あちゃー》
《だから、いくつか案は出たけど決まらなかったから、最後はモナに決めてもらおうって話になったのよ》
《生配信チャンネルで、コメをガン無視なの笑う》
《実況中ならまだしもなw》
《それがマヨマヨクオリティ》
《見てる分にはお酒のつまみにちょうどいいけどね~》
《それは……、わからんでもないな》
「そ、そうか? 喜んでもらえたならさいわいなのじゃ」
モナは、むふーと一息ついた。
《いや、褒めてないからね》
《どちらかというと呆れてる?》
《あーでも、でもそれがマヨマヨのよいところ》
「なんじゃもう。日本語は難しいのぉ」
モナは嘆息しつつも目をしきりに上下に動かす。どうやらコメントを遡って読んでいるようだ。
「して、我が名前を選べばいいんじゃな。ふむふむ……」
《そうそう、なんかいいのあるー?》
《大体食べ物の名前だけどな》
《モナは食い意地張ってるからちょうどいいね》
《うん、いろんな意味でに合ってる》
《白のポヨポヨは食べられないよう注意だな》
《モナ、寝ぼけてかじりつきそう》
《あるあるぅ》
《あぶねぇな》
《気をつけろよーー》
散々な言われっぷりである。だがあいにくと、いや幸運にもというべきか、モナはコメントを遡るのに集中して、それには気づかない。
ただ一人、気づいた白饅頭は危険を感じたのかモナから離れようとするが、しっかと抱きしめられ離れようもなくもがいていた。
「なんじゃ? ぬしは……。名前が決まるのが嬉しいのはわかるが、そんなに動くでない」
モナは白饅頭を自分の前に置いて、ポンポンと頭? をなでる。
「よし、我は選んだぞ。ぬしの名はウスベニじゃ」
そうしてモナは高らかに宣言した。
《結局食べ物かー》
《1番食べ物っぽくない奴ではあるが》
《選択肢が食べ物関連しかなかったからなー》
《見た目で食べ物っぽくなかったの数少なかったしな》
《モチ、完璧なネーミングセンスだと思ったのに》
《もちもちしてるからモチ、安直なんだよね》
《きぃぃぃ、うらやましいザマス》
《だったらもっとちゃんと考えて発言したらよかっただろうに》
《俺にはよ、ねぇんだ。ネーミングセンスってやつがよ》
《求:ネーミングセンス 出:ノマルン》
《なんで俺!!》
《よかった。これでワタシもファミリーの仲間入りですね。離席してて前後はわからなかったのですが、発言してよかったです》
《しつけ薫陶ネキか》
《くそ、初日組だって言うのに、ニュービーに持って行かれるとは》
《くやちぃ》
《見た目真っ白なのに薄紅とは……》
《今後、白饅頭が薄紅色に変わっていったりしてな》
《それ、ただの紅白饅頭やん》
《まあ決まってしまった物はしょうが無い。モナの嗜好に合わなかった我々の負けである》
《次、次こそは!!》
《さーすがにもうねぇんじゃねぇかなぁ》
《こうなるとしつけ薫陶ネキにも何か二つ名がほしいな》
《しつけというと、ロッテンマイヤーさん》
《んじゃロッテンさんでいいか》
《まあ、それはいいですが……》
《ロッテンマイヤーさんって言うと、ハイジの家政婦の人か》
《昔見たときはひどい人だなぁと思ったけど、今見ると大分印象変わる》
《俺あの人に色々性癖をくるわされたんだよな》
《お前もか……》
《性癖暴露大会やめれ》
《んじゃまあ、色々と名前が決まったところで、メインだな》
「ほむ、めいんとな?」
モナは、ウスベニと一緒に万歳三唱していた手を下ろし、コメントに向き直った。
ウスベニも一緒になって伸び縮みしていた身体を震わせ、小さく丸くなる。
《そうそう、ウスベニの名前をつけることは、いわばサブクエ、メインクエは別にある》
《心を落ち着けるための余録》
《ここからが本題なのだよ、ちみぃ》
《ちみちみぃ》
《ちむちむにー》
《ワタシは煙突掃除やさん♪》
《唐突にメリーポピンズになってるの笑う》
《ああ、メリーポピンズなのね。小さいときにみんなのうたで聞いたことしかない》
《俺もその思いで》
《この、すぐ脱線する感じよww》
《それはいいから本題聞いていこうぜー》
《まずひとぉつ。安曇野ダンジョンはスライム系ダンジョンでいいですか!》
「お! ぬしは慧眼じゃな。その通り、安曇野ダンジョンはスライム系が多く出るようになっておる。みな、それの対策をしていくとよいじゃろう」
モナはパチパチと手をたたいて褒め称える。
《いえーい、褒められたー。うらやましかろう? んん?》
《くっそww》
《みんなわかってたっつーの》
《モナちゃん、対策って言うけどどんな対策したらいいのさ》
《そこまでは教えてくれんだろう》
《つか、さっきのやつが言ってたじゃん。なんか弱点わかったって》
《むしろそこだよな、聞かなきゃいけないのって》
《んじゃまぁ聞くか。なんでアイツはスライムの弱点がわかったの? てかなんのクラスになってるの?》
「あー、やっぱりそこじゃよなぁ、聞きたいのは。我、あやつとあまり関わりたくないのじゃが……」
嫌そうに顔をしかめながらも、モナは資料をあさる。
《嫌われておる》
《まぁまぁそう言わずに》
《どうせあと一回は来るんだし》
「はぁ、そうじゃった。そうじゃったのぉ」
モナは気落ちしながらも、目当てのものを見つけたのか、それを画面に映し出す。
「これがそやつのクラスじゃな。ある意味、お似合いと言えるのぉ」
[名称:東]
[クラス:狂的科学者]
[知性や判断力といったものにプラス補正。他……]
[疑義とは知恵をもたらす病である。ああ、狂気よ、狂喜よ。狂わしく我を導け]
ああやっぱり……。
そんな思いがコメント民の心をよぎった。