1話 天才ミュージシャンは転生する。
16歳の天才ミュージシャン三山蒼はアメリカでのライブ中銃殺される。
その際に彼は次元のはざまに落ちて、長い時を経て、遺伝子は数々の変貌を遂げ、遠い世界に落ちた。
♢
んん...どこだここ?
周りにはヨーロッパみたいな洋風な建物が立ち並んでいる。
体が動く。
なぜだ?
確か俺はあの時銃殺されて死んだはずだった。
なのになぜ?
まあ生き延びれたからラッキーとでも思っとくか。
助けられてヨーロッパのほうへ連れてこられたのかな。
「すみません。ここどこですか?」
とりあえずそこらを歩いてた優しそうなお姉さんに聞いてみた。
「え?...バルムンクですけど?」
「ありがとうございます」
まあ不思議がるのは自然だろう。
ここはバルムンクというのか。
とりあえず日本に戻ろう。
...瞬も無事だといいが。
とりあえず空港でも探すかな。
「すみません。この近くに空港か電車はありますか?」
こんどは少し体つきのいいおっちゃんに聞いてみた。
なんか鎧を着た人が普通に歩いてる。
ここらは治安が悪いのか?
その割には人が多い気がするけどなあ。
「何だそれ?とりあえずここらにはないことは確かだな。」
ええ...
「じゃあ汽車とかないですか?」
というかよく見たら車もなんも走っていない。
歩行者天国か?
こんなににぎわってんのにもしかして発達してないのかな?
「汽車?知らんなあ。魔車なら知っとるぞ。そこを右に曲がったらある。」
「ありがとうございます」
魔車?まあここら辺の交通便はそこしかないらしいし。
行ってみるしかないよな。
それにしてもここら辺はすごい賑わいだ。
建物もきれいだし。
...と考えているとそれらしき駅に着いた。
とりあえず近くにいる駅員らしき人に声をかけた。
「空港まで行くならどの便に乗ればいいですか?」
「空港?なんじゃそりゃ?」
この駅員は馬鹿か?
もっと知ってそうな名前を出すか。
「日本まで行きたいんですが?」
「日本?」
「アメリカ知らない?」
「アメリカ?」
「ヨーロッパは?」
「ヨーロッパ?」
ええ?
...そういえば重大なことに気づいてしまった。
なぜ日本語が通じる?
「ここなんていう国ですか?」
「兄ちゃん記憶喪失でもしたのかい?セル王国に決まってんだろ」
セル?王国?
一つある単語が頭に浮かんだ。
異世界転生
♢
あれからかなりの回数人に尋ね、日本とかアメリカとか地球とかについてきいたが一人も知る人はいなかった。
ここは異世界だ。多分。
どうやら俺は異世界に転生してしまったらしい。
これからどうするべきなのだろうか。
腹が減った。
今の持ち物を見たら...何もない。
というかなぜか全く違う服を着ている。
金が必要だな。
久しぶりになっちゃいますかな。
ストリートミュージシャンに!
♢
この世界で歌だけで金がもらえるか心配だが...
とりあえず地面がレンガのよさげな噴水広場を見つけた俺は、身に着けていた茶色の帽子を逆さにして置いた。
そしてまずは自己紹介だ。
意外と最初のトークでどれだけ人をひきつけれるかが重要だったりする。
「えー時間がある方!少し寄っていきませんか?」
予想通り誰も寄ってこない。
こうなれば実力だ!
前世で神と呼ばれた作曲家の曲聞かせてやるよ!
「♪~」
アカペラで歌ったのは久しぶりだがうまく歌えたようだ。
曲名はwater planet
アカペラ用に書き下ろした曲だ。
「雨い憂く水曜日 水は乾く寂寞の~♪」
物珍しさにか人が集まってきた。
いい流れだ。
次で落とす。
「次でラストです。春草」
♢
終わった。さっと聴衆を見回してみると涙を浮かべてる者もいる。
最高の出来だ。
「ありがとうございました。もしよければこの帽子にお金を入れてもらうと助かります。」
「「よかったぞー」」
「「最高だー」」
「「また聞かせてくれー」」
黄色い声が上がる。
いい気分だ。
♢
お金が集まったのはいいものの、この世界の金の価値が分からない。
計算してみたら1200Uとでたが、どれくらいなのか...
気づいたら空は赤くなっていた。
今までずっと孤独だったから、今更家族に対しての寂しいという感情は沸いてこない。
ただ、瞬と離れてしまったのは少し心に寂しさがわく。
だが久しぶりのストリートライブは楽しかった。
この世界の音楽界はどれくらい発達してるかわからないが、絶対に上まで上り詰めてやるぞ。
俺は気持ちを整理し、宿を探しに歩き始めた。
♢
???「そろそろか。準備を始めるぞ。」
今日の音楽理論豆知識
アカペラ
伴奏なしで歌うことだよ。