0話 天才ミュージシャンは転生する
この話はプロローグです。
見ても見なくても大丈夫なので、暇な人は見てください。
まあまあ大きい、モダン風な家。
その中で楽器をかき鳴らす人物がいた。
彼の名前は三山蒼という。
彼には並大抵ではない能力があった。
彼は音楽の天才であった。
父は日本では知らない者はいないシンガーソングライター、母は世界で活躍するピアニスト、姉は日本一と呼ばれるオーケストラ団のバイオリニスト。兄はこれからの邦楽界を率いるといわれているバンドのボーカル。
スーパー音楽一家の末っ子として生まれた彼は、三歳でショパンを弾き鳴らし、五歳で作曲。十歳になるころには超天才少年として世界的に有名になった。
誰もが将来、音楽界は蒼以前、以降と語られると信じられていた。
実際彼も音楽は大好きであった。
彼自身も将来音楽を仕事にしたいと感じ、そのために日々音楽を研究していた。
そんな彼は今16歳である。音楽科が有名な高校に進み、部活は軽音楽部でギターをやっていた。
もはや彼の楽器に対する技術と音楽理論の知識はこの世界で一二を争う実力になっていた。
「んじゃそろそろ帰るわ」
「お、了解。俺も帰ろー」
もちろん彼とバンドを組む人たちはそこらの高校生よりもずば抜けたというか、大人顔負けの実力を持っていた。
その中でも浦賀瞬はリズムの神という異名を持ち、リズム感やリズムに対する感性は蒼に勝っているといっても過言ではない人物だ。
彼らは親友だった。
二人で作られた曲は今までの常識を塗り替え、世界を変える‟はず”だった。
だが彼らに悲劇が起きた。
アメリカでのライブ中、蒼と瞬は銃に打たれて死んでしまった。
ロック界ではよくあることで、彼らの天才性に嫉妬した人が彼らを銃殺した。
この事件は音楽史、いや、日本史に名を遺す出来事となった。
転調した直後に殺されたため、のちに転調の乱と呼ばれる。
蒼は死んだ。
と思われた。
死ぬ直前に天文学的確率で次元のはざまに落ちた彼は時空をさまよい、まるで川を流れる石が侵食されるように、彼の遺伝子は変形を繰り返し、
ある世界へたどり着いた。
彼は記憶と感覚を残したまま転生に近い転移という形で別世界にワープしたのだった。