88話
「おい、標的がそっちに行ったぞ!」
前線からそんな声が聞こえ、それと同時に近くの兵を薙ぎ払いながらこっちに突進してくる大きな影が見えた。
「こっちに来たか……こいつは俺がやるしかないな」
自分がもう少し前に動いていれば、被害が出る前にこいつを止められたかもしれない。
それを反省しながら、段々迫ってくる猪のような見た目の魔物を正面に見据える。
周囲の兵が離れた事を確認してから魔法の準備を開始。
イメージするのは炎。一箇所に絞って発射する形で、威力が高過ぎないように……発動!
両手の平を前に突き出して開き、魔力を集中させる。
力が抜けていく感覚と共に、2本の火炎が勢いよく魔物に向けて吹き出された。
炎の線は螺旋を描きながら重なり合い、思わず足を止めた魔物の頭部に着弾すると、その瞬間大爆発を起こした。
爆発の余波は周囲を吹き飛ばし、視界は一瞬にして煙と砂埃に包まれる。
暫くしてそれが収まってくると、ようやく状況が確認出来るようになった。
「……やりすぎた」
地形は深く抉れ、爆発の中央にいた魔物の姿は跡形もなく消えている。
「ええっと……まあともかく」
目標の魔物、撃破!