それってお世話係と言いません?
その日、ヴォロンテ隊の会議室に、ひとりの依頼者が現れた。柔らかな金色の髪に、人形めいた整った顔。滑らかな白い肌を持つその子どもは図書館管理職員であり、名前をルクス・エリオットと言った。グラシアが椅子を勧め、座る少年の旋毛を見下ろす。対面に座った彼の元にアルトが珈琲を置いた。少年の前にも同じものが置かれる。
「エリオット、というと、ユノちゃんの妹さん?」
「お と う と」
「失礼」
一音一音区切るように発音したルクスが、隻眼を睨ませる。対するグラシアはやんわり無害そうに微笑み、「それで用件は」話題を転換した。
「本の片付けを手伝ってほしい」
珈琲の水面を覗き込む少年の要望に、はて、グラシアが瞬いた。
「それで、俺たちが本の片付けですか」
グラシア隊長から任務の召集をかけられ、来てみれば「本の片付け」とは。半ば表情に呆れたものを混じらせながら、いやはや渋い声を出す。そして隊長が並べた名前。ベル、ルイ、そして俺ことジョン。……これは何かの陰謀ではないだろうか? まじまじ隊長の顔を見詰める。にっこり、いつもの嘘くさい笑みを返された。俺は副隊ではないので、よろめいたりときめいたりしませんよ。
「詳しいことは、書類に書いてある通りだよ」
「はあ……」
俺には「あんまり仲が良くなさそうなふたりの潤滑油よろしくね!」といった内容にしか見えないんですが。不承不承頷く俺の横で、「本の片付けですかー、力仕事ですかね?」との能天気なベルの声が聞こえる。反対隣のルイに至っては無言だ。
八方美人なベルと無愛想なルイは、何かと折り合いがつかない。目に見える抗争や不仲があるわけではない。ただ、お互いがお互いを避けているためか、空気に不和が生じている。こういう目に見えないものは大変気を遣う上、繊細な問題が多い。ふたりとも根底にあるのは人間不信なのだろうから、恐らくは似たもの同士が別路線で展開している姿が気に食わないのだろう。人はそれを「生理的に受け付けない」と称するが、出来ることなら仕事仲間の精神衛生のためにも、さっさと改善してもらいたい。だからって白羽の矢、俺かよ……ッ!!
遣る瀬無さに膝から崩れ落ちる。両隣がぎょっと身を引いたが大部分はお前等のせいだ! 任務を始める前から難易度が跳ね上がっている。誰かもうひとり緩衝材になってくれ……!
「ちなみに依頼主はとっても美人な子で、恋人がいないらしいよ」
「行くぞ、ふたりとも!」
「……僕、ジョンさんのそういうとこ心配します」
瞬時に立ち上がり、意気揚々とコートを羽織った俺に、ベルのため息とルイの呆れた視線が刺さった。うるせえ! 彼女いる勢は黙ってろ!!