アリ
この日私の見た夢は2本立てだった。
1本目の夢はとても怖い夢だったことは覚えているが内容が思い出せない。
しかも今回が初めてではなく2回目の夢で、前回と結末が変わりかなり怖かったのだけは覚えている。
そしてその恐怖で目が覚め、まだ起きる時間まではもう少しあったので2度寝をした。
そしてまた夢を見たのだった。
暫くぶりで私は実家に帰っていた。
車で30分くらいのところに両親は健在で、あまり近すぎるせいか、いつでも帰れると思い
年に1度帰ればいいほうだった。
今日も思いつきで帰ったので両親には連絡を入れなかった。
案の定家には誰もいなかった。
実家の鍵は持っているので中には入れるが、家の回りを一通り見て回ろうと思った。
家の周りといっても、近所を歩きまわるまではなく、家屋の周りだ。
実家は普通の建売住宅で家屋の周りを囲むように壁があり、隣はすぐ別の家が建っている。
家屋の周りを歩いて丁度玄関からすると裏側に回ると
といつのまにか色々な果物などの木が植わっていった。
リンゴ、グレープ、栗、梅、そして昔から父親が好きだった柿の木が数本植わっている。
全て実がなっているが、冬なのにまだ青々とした色だ。
恐らくこのまま熟すことなく腐るのだろう。と夢の中では勝手に思っていた。
そしてある柿の木の前に来たとき足が止まった。
緑色に光沢を放つ大きさが50センチもあるカメムシだった。
しかも臭いも半端じゃなく臭い。
小さい頃見たのは大きくても1〜2センチくらいの大きさのものしか見たことないので
とても巨大に思えて捕まえようとした。
しかしゴキブリ並みに動きが早くあっという間に逃げられてしまった。
少し追ってみるとやはり同じ大きさの黒光りしたカメムシがもう一匹いた。
臭いは先ほどのカメムシ以上だった。
耐え切れずその場は逃げることにした。
家の玄関の前にくるとやはり大きな柿の木がある。
この木は忘れもしない、30年前弟が生まれたときに、母親が父親に粉ミルクを買ってくるよう頼んだ。
父親と私は近所のホームセンターに行った。
そこで父親は丁度もらったお金と同じ値段で売られている柿の木を見つけて買ってしまったのだ。
それを家に持ち帰った父親が母親に怒られているのはいまでも覚えている。
そんな思い出のある木なので30年いき続けている実家では長生きの木の一つだ。
しみじみと柿の木を見つめて思い出にふけっていると
耳元で「ぶーん」と羽音をたてて飛んでくる黒い物体がいた。
柿の木に止まりじっとしている。
小さい頃カナブンから小便をかけられたことがあるので、寒くもなってきたので家に入ることにした。
玄関の扉の鍵をあけて入ろうとして、ふと玄関の横にある1畳くらいの広さのコンクリートで
埋められていない土の部分を見た。
そこにアリの巣が3個あり、冬だというのにアリが複数蠢いている。
家に入りヤカンに水をなみなみと汲むと、また外にでてアリの巣めがけて流し込んだ。
すると土がみるみると崩れ落ちていきアリの巣が奥のほうまであらわになり
何十匹何百匹というアリがわらわらと巣から這い出て来た。
「これはやばい」と思い、私はもう一度家に入り、ヤカンに水を入れて沸騰させて玄関まで戻った。
扉を開けると庭一面アリが覆いつくしていた。さながら黒い絨毯だ。
何故か玄関には入ってこないので安心だが、いつ入ってくるかわからない。
とりあえず足元のアリの絨毯にむかって熱湯をかけた。
白い湯気とともにアリの焼ける異臭と「キーキー」と泣き声が聞こえてきそうだった。
しかし一部のアリを殺してもいまや何万匹いるのかわからないアリのごく一部を殺しただけだ。
どこにこんなにアリがいたのか?家のしたは全て空洞か?と思わせるほどの数だ。
もう一度家に入り、ヤカンに水を入れて沸騰させて外に持っていく。
もう私一人で対応できるレベルをとっくに超えている状態に陥っていた。
家の庭どころか、外までもがアリで覆い尽くされている。
たぶんアリも重なっているのだろう。
地面と玄関は10センチくらいの段差があるはずだが、いまは同じ高さまでアリがいる。
とりあえず足元のアリたちに熱湯をかけて殺す。
またもや異臭とアリの鳴き声らしき音が聞こえてくる。
すると黒い絨毯の一部が盛り上がった。
何事かと思ったら黒い絨毯の下から女王アリがでてきた。
それが立ち上がった。
高さは2メートルはあり、私よりでかい。
そして出てきたと思ったらまたもぐっていく。
なんだったんだ?
と思ったら目が覚めた。
アリも一匹なら怖くもない。
しかしあれだけ集まるとさすがに怖いと思った。
色々な映画でもたくさんのアリがでてきて人間を襲うシーンがでてくるが
実際に熱帯地方かアフリカかわすれましたが、黒い絨毯とおそれられている
アリ軍団がおり、ご飯を探しに何十万匹というアリが移動すると
動くものは何一つ残らないそうです。怖いですね。