「先生! 異世界でも太陽は東から昇るんですか?」
夜空を見上げてみましょう。
よく晴れた日なら、星が見えるはずです。夜中でもネオンの明かりきらめく都会と、街灯すらまばらな田舎とでは見え具合も違うでしょうが、それはまあいいとして。
たとえ星が見えなくても、月は見える日が多いですね。三日月、満月。
古来から月は神秘的なものと見られることが多く、和歌でも多く詠まれてきました。「竹取物語」も、千年以上前の人たちが抱いていた月への憧れの想いがもとになっているのかもしれませんね。
それでは、質問です。
異世界にも、「月」ってあるのでしょうか?
○異世界における天文学
太陽は東から昇り、西へ沈む。
これは地球における常識ですね。
地球は地軸が傾いた状態で一定の速度で自転し、さらに太陽の周りを公転している。
地軸が傾いているから、春夏秋冬が生まれる。
あ、これは中学生の頃に理科で習った内容をそのまま書き出しただけです。
また大昔の地球では、地球は平らだと思われていたそうですね。亀の背中説が有名らしいですが、私はなぜか、マッチョのおじさんたちが平らな板状の地球を支えている図を思い浮かべます。なぜでしょうか。
さらに、昔は天動説が有力でした。自分が動いているのではない、周りが我々を中心に動いているのだ、という考えですね。確かに、自分の足元は動いていない(ように感じられる)けれど太陽は昇ったり沈んだりするのですから、天体の方が地球を中心に動いていると感じても仕方ないですね。
さて、異世界での天文学とは、どうなっているのでしょうか。
今私がぱぱっと思いついた疑問点は、以下の通りです。
・異世界でも太陽は東から昇り、西へ沈むのか
・異世界の星座はどうなっているのか
・異世界に「月」はあるのか
先に申し上げておきますが、今回の考察は理科や天体に詳しい人間ではなく、中学校の理科で習う程度の知識しかない人間が書いております。
ゆるーく見守ってください。
○自転するから太陽は浮沈する
まず、太陽についてです。
生物が生きていく上では、太陽という名称でなかったとしても自ら光と熱を発する恒星が必要でしょう。
そして、異世界の存在する惑星にも朝昼晩という概念があるならば、自転しているのでしょう。まさか真っ平らな世界というわけではないでしょうし……。
ただ、自転する向きが違う、また地軸のずれ方が違えば太陽が昇り沈む方角も異なるでしょう。単純な話、地球とは逆回転するなら、その世界の太陽は西から昇り東へ沈むはずです。
現に、金星は自転や公転の向きが地球とは逆っぽいですね。ならば異世界にも地球とは逆回転する惑星があってもおかしくはないでしょう。
ただまあ、「この惑星は地球とは自転の向きが逆なので、太陽の昇り沈みする方角も逆です」なんて説明をするのも面倒ですからね。
太陽の昇る方角、沈む方角をわざわざ地球と変えるメリットはあまりないのでしょう。
○「北極」ってどこ?
お次は、異世界における星についてです。
まず、北野空に燦然と輝く道しるべの星、北極星。
古来から、旅人や船乗りが知らない土地でも方角を確かめる術として使っていたと聞きます。
そんな神秘的な北極星。
異世界でも使いたいですね。
でも、「北極」星です。
異世界に、北極ってありますか?
ないならば、「北極星」という言葉は使えませんね。
というか、そもそも異世界の惑星ってどうなっているんでしょう。北極のように、氷が浮かんでいる海があったりするのですかね。
○星と星を繋ぐ、星座
おもしろいことに、地球でも国によって星座の呼び名や星の結び方が違うみたいですね。
まあ、そもそも星座なんて「これのどこがクジラ座なの!?」と言いたくなるようなものばかりですからね。「たて座」とか、ただの棒じゃん……。
星座はもちろんのこと、異世界ならば星の並びも違っているはずです。むしろ、地球と同じである方が違和感がありそうです。となれば、その異世界特有の星座があるのではないでしょうか。
地球における星座の多くは、ギリシャ神話をもとにしているようですね。オリオン座が一番わかりやすいかと。
ということは、ギリシャなんて国が存在しない異世界に、狩人オリオンが生まれるはずない。だから「オリオン座」なんてものがあるはずない。カシオペヤ座やペルセウス座も同じですね。
一方、異世界にも同じ名称の生物・ものが存在するのであれば、「羅針盤座」や「牡牛座」、「水瓶座」という星座が存在する可能性はあります。まあ、地球と全く同じ星の並びということはないでしょうが、オリオン座などよりはずっと「あり得る」話です。
ここまでは「異世界にも星が存在する」こと前提として述べてきましたが、「異世界には星が存在しない」可能性もありますね。夜は真っ暗。太陽(のような恒星)がないと生き物は生きていけないので太陽はあるのでしょうが、星は物語の舞台である惑星ひとつ、というのはあり得そうです。でも、星の存在しない夜空はロマンスがないし、ちょっと怖そうですね……。
○ねえ、瀬尾さん。「月」ってさぁ……
月。
簡単に言うと、「地球唯一の衛星」。
それってつまり……異世界には、「月」が存在しないのでは?
かく言う私も、執筆した小説で普通に月を登場させてします。登場させてから気づいたんですよね。月はただの星じゃなくて、地球の衛星の名であることに。
つまり、異世界にて「月っぽい星」を登場させることはできても、その星のことを「月」と呼ぶことはできないんですね……月があるなら、それはもう地球が舞台じゃんという話です。
他の星よりも月がデカく見えるのは、一番近くを回っている衛星だから。地球の場合、衛星は月だけですが複数の衛星を持つ惑星もありますね。有名なのは木星でしょうか。有名なものでも、四つはありますね。
となると、異世界ファンタジーの舞台である惑星には、衛星がゼロかもしれないし、木星のように複数あるのかもしれません。いずれにしろ、「月」という名称を使うことはできない……のですね。なんてこった。
○結論
気になるなら工夫する!
気にならないor考えるのが面倒なら、何でもいいじゃん!
というのが、一番楽な考え方だと思います、はい。
といっても、先に述べたように異世界の舞台が地球以外――ひいては太陽系以外の惑星であるならば、「月」や「北極星」や「オリオン座」などの名称を使えないってことです。
私自身もよくも考えずに月という表現を使っていますが、もし設定を凝らせるならば舞台となっている惑星から考えてみなければなりませんね。
考える観点としては、
・その惑星のサイズ
・その惑星の自転・公転速度
・四季の有無
・その惑星が所属する太陽系のしくみ
・その惑星から見える星
・その世界における星座の名称
・その惑星の衛星の有無
あたりでしょうか。
ぶっちゃけ私なら、ここまで凝ることはできません。設定を作ったとしても忘れます。
でも、オリジナルの星座が登場してきたり、地球とは違う惑星の概念が出てきたりすると、「おおっ!」となりますね。惑星が一回公転するのに百年かかったっていいんですよ。ギュンギュン高速自転してあっという間に日が昇り沈んでいく世界があってもいいんですよ。四季の変化がほぼなくってもいんですよ。
だって、ファンタジーだもの。
○宇宙のどこかに
天体って、考えれば考えるほど奥が深いですね。
だって、この宇宙にはたくさんの惑星、たくさんの太陽系、たくさんの銀河系が存在するんです。
だとしたら……。
この広い宇宙のどこかに、あなたが創作する世界が存在するかもしれません。
存在しない、とは言い切れません。銀河の端っこに何があるかなんて、誰も知りませんし。
ということは、巷でも人気の「異世界トリップ」。
それはつまり、太陽系から離れたずっとずっと遠く、どこかの星に瞬間移動した――ということなのかもしれません。
あの夜空の向こうに、どんな世界が広がっているのでしょうか。