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「先生! 異世界の人もお辞儀をするんですか?」

マナーって大変ですね

「ありがとうございました」と言ってお辞儀をする。


「また明日ね」と言って手を振る。


「こっちに来て」と手招きする。


「分かった」と頷く。


 私たちが普段当たり前のように取っている行動です。

 でもそれは、私たちが地球、もっと言えば日本で生活しているから「当たり前」なのです。



○地球でも、国によって受け取り方が違うジェスチャーがある


 有名どころでは、手招き。日本では「こっちにおいで」という意味ですが、アメリカなどでは「あっちに行け」と逆の意味を持っています。

 このように、全く同じジェスチャーでも国によっては真逆の意味を持つこともありますし、日本では何気ない仕草も外国では侮辱行為にあたるというのもあります。国が違えば文化が違うということを痛感します。


 同じ地球ですらこうなのだから、異世界になるとどうなるのでしょう。



○作者の国の作法に則るはず


 日本人が書いた小説なら、おのずと異世界人の動作も日本風になるのではないでしょうか。

 感謝するときにはお辞儀をし、肯定するときは頷く。否定するときは首を横に振る。不快なときには顔をしかめ、疑問に思うときには首を捻る。


 さて、異世界ファンタジーの人間が「分かった」の意味を表すときに頷く必要はないのではないでしょうか。

 日本とは肯定と否定のジェスチャーが間逆である可能性だってあるし、全く新しいジェスチャーを宛ってもいいはずです。


 とはいえ、言語や単位は作者オリジナルの設定を付ける人も多いでしょうが、さすがにジェスチャーとなるとオリジナルを作るのは難しそうです。どうしても、日本人作者なら日本の作法を小説にも反映させます。たとえ小説の舞台が異世界でも。


 設定を組む上での困難さ・煩雑さが、「日本と異世界の文化が類似している」一番の理由ではないかと思います。



○異世界風テーブルマナー


 ナイフを右手に、フォークを左手に。

 フォークがたくさんある場合は、外側から。肉用と野菜用では種類も違う。

 食事中に食器を置く場合は、ハの字型。終わった場合は脇に二本寄せる。


 テーブルマナーですね。


 異世界に登場する貴族はやはり偉い人だけあって、テーブルマナーも完璧です。

 そう、地球風のテーブルマナーの。



 極端な話、異世界における最上級のテーブルマナーが「マンガに出てきそうな骨付き肉を両手で掴み、肉汁を飛ばしながら豪快に食す」というものである可能性だってあるのです。


 フォークで芋をぶっさして食べるのが上品、食器は華やかにカチャカチャ音を立てるのが優美、肘を突いて食べるのがエレガント。


 おいおい、と思うかもしれませんが、お話の舞台が地球じゃないどこか別の星ならば、その世界独特のマナーがあってもおかしくありません。

 自分にとっての「良」が必ずしも、他人にとっての「良」とは限らないのです。

 


○千年前の日本貴族令嬢は、おかめだった


 国によって異なるのは、ジェスチャーなどの作法や文化だけではありません。ましてや、同じ国なら何年経っても考えが変わらないということもありません。



 千年前の日本、平安時代。

 その頃の貴族のお姫様の「美」の条件は、今のセレブの「美」の条件とは全く違いますね。


 時が経てば、同じ国でも考え方が変わります。

 千年前の貴族女性は眉毛を全剃り、真っ白なおしろいで顔を塗りたくり、髪は長くて真っ直ぐならよい、洗わない。鼻は低くて口は小さいのが美しい。

 今の文化とは全く違います。


 何を美しいと思うかは、その時代、その国によって全然違います。化粧の仕方や髪のセット方法もそうですね。現代日本でさえ、流行は絶えず変わります。私が高校生だった頃の「女子高生が可愛いと思うスタイル」と今の「女子高生が可愛いと思うスタイル」は異なります。私が高校生だった頃はストレートパーマが流行っていたなぁ。あと、やたら大きな髪留めクリップを前髪に差す。眉毛は細く長く……という時代でした。


 つまり、日本における十数年ですらこうなのだから、世界の枠を越えた異世界なら、「美しい」と思うものが違う可能性もあるんですね。

 最近たまに見かけます、美醜逆転小説。あれも発想の勝利だな、と感じます。私たちの考える「美」が異世界人にとっての「美」と一致するとは限らない。むしろ、完全一致する方が珍しいのではないでしょうか。



○そもそも私たちと同じような体を持っている奇跡


 異世界人がどろどろスライムだった件。

 異世界人は目が三つあるのが常識だった件。

 異世界人は上半身が三百六十度ツイストできる件。


 なんだってありですね。

 そんな中、主人公がトリップしたのは私たち人間と同じような体を持った生物が生きる世界だった。

 なんて幸運なのでしょう。

 三つ目が当たり前の世界にトリップしたなら、私たちはきっと珍獣扱いです。


 そう考えると、異世界人の髪が緑やら青やら紫やらなことなんて些事ですね。

 そして、異世界人と地球人が結婚して子どもが生まれるというのも、とても幸運なことなのですね。

 たぶん。






○結論


 考えだしたらキリがねぇ!

 気になるなら工夫する!

 気にならないor考えるのが面倒なら、何でもいいじゃん!


 どろどろスライム帝国にトリップした日本人の奮闘記があってもいいし、目の数がひとつ少ないから珍獣使いされる話があってもいいんじゃないでしょうか。

 ただ、それは若干マイナーな嗜好に入ってしまいそうなので、注意が必要かもしれません。


 国が違えば文化が違う。

 世界が違うなら、言わずもがな。


 今度は、一体どんな世界に出会えるのでしょうか?

「当たり前」の枠を飛び出すのは大変なことだと思います

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― 新着の感想 ―
[一言] 地球の生物にはある一定のフォーマットがあります。 例えば、目が左右一対と言うのは、大抵の動物がそうです。 昆虫は複眼と言って複数の目が塊となったものですが、それはやはり一対となっています。 …
[一言] 「手招きの動作がアメリカでは意味が違う」という事をよく目にしますが、実は厳密には同じ動作ではありません。 絵で説明すると同じ様に見えます。 ですがそれは動作を繰り返すからです。 動作を一回…
[良い点] 『異世界人がどろどろスライムだった件。』 ショゴスの中ではイケメンに生まれ変わった作品を思い出しました!
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