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異世界への能力(改訂前)  作者: 吉凶 巧
8/8

第7話 能力

夜。日中の戦闘を忘れさせてくれる団欒の時間、夕食。

「慎磁、みてみてー!!」

さっきより上機嫌な赤羽根。見ると、左側にかきあげていた前髪を下ろしていた。

「かわいいと思うぞ、そっちの方が」

あまりにも好みだったので、普段なら絶対言わない言葉を発してしまった。

「ほんと?ありがとー!」

笑顔でパンを頬張る赤羽根。

「やっぱり私も、洋服買ってイメチェンしようかしら」

「喋り方が赤羽根に毒されてるぞ、ガルシア」

「さんせー!!」

「いいと思う」

無視された。そんなわけで、明日は午前中服屋に行くことになった。


―――――――――

翌日。

「でもさーガルシア、ローブしか着れないんじゃないの?」

赤羽根は珍しく真面目な顔をして聞く。確かにそんなことを言っていた気がする。

「あー、それはあの国だけでなの!この前買わなかったのは、ただ気が向かなかっただけだわ」

成程……ガルシアらしい。

「ガルシアちゃんもおしゃれしたいだろ?俺だってローブは着ないよ。一応魔術師だけど」

「って、あんた魔術師かよっ!!」

少しツッコむ場所が違うような気がするが、勢いのある久山のツッコミが決まる。

「まあ、一応日本から派遣されてやってるよ。ガルシアちゃんとこの北隣の国だね」

「へー、ルイくんも魔術師だったんだ!」


そんな会話を交わしつつ、僕達は服屋にやってきた。

「わー!この町の服屋はひっろいねー!!」

いつもより数倍大きな声で赤羽根は感想を述べる。服屋の中ではマネキンが並んで着飾っており、僕たちが元いた世界のお洒落な店、といった感じの風情だ。

その店は品ぞろえが多く、一面にいろんな服が広がっている。中にはコスプレ服のようなものまであった。

赤羽根と久山は目を見合わせる。

「優紀も私と同じこと考えてるでしょ?」

久山は

「うん、多分」

と述べたのち、表情を隠すように頷く。


「「私たちがコーディネートしてあげる!」あげるわ」


次の瞬間、ガルシアはたくさんの服たちとともに、試着室に連れ込まれた。


「...あいつら、本当他人の服装をコーディネートするのが好きなんだな...」

「まぁ、センスあるからいいじゃん。その服も、久山ちゃんと赤羽根ちゃんが選んでくれたんでしょ?似合ってるよ」

ルイが答える。確かにこの服は彼女らに選んでもらったもので、中々気に入っている。彼女らに任せておけば大丈夫だろう、と思い、僕達はこっそり近くの喫茶店に入っていった。



30分くらいしてから、ガルシアたちは出てきた。僕達は秘密でここら辺の名物だと聞いたパイの上に細かいクッキー生地を載せてあるものを食べていたので、暇ではなかった。

気になるガルシアの服装は、僕ら転移者にとっては見慣れた姿だった。

ブレザー。しかし、僕らの学校のような中途半端に長いスカートではなく短いスカートで、非常に似合っていた。後から聞いた話だが、手が少し隠れているのは、久山が考え出した仕様らしい。

「似合ってるかしら!?」

「いいね。すごく似合ってるよ」

ルイのいつもの褒めが入る。跳ねて喜ぶガルシア。

「ちょっと、着崩れちゃうよ~」


そういってガルシアを諭す赤羽根。こんな幸せな日々が、いつまでも続けばいいと、僕は心の中で祈った。



―――――それは、あくる日の午後。


和気あいあいとしたこの国の雰囲気を楽しんでいると、空は禍々しい雲で覆われていく。その雲は次第に地上へと近づく。正しくは、厚さが増している。

その雲は、ガルシアに纏わりついていく。ここで僕たちは、こいつが単なる水蒸気の塊ではないことを確信した。


「うッ?!な、何これ...ぁ...う....」


「強化!」

久山は身体強化を施し、雲を取り払おうとする。

「消えてーーーー!!」

赤羽根はその能力で雲を浮かそうとするが、少し浮くだけでまた纏わりつく。

慌てて僕も攻撃し始めると、何やらルイが気付いた顔をする。

「ッ!!離れろ!!」


ルイの声を聞いた僕らは咄嗟に離れる。それと同時にガルシアの声と雲もやむ。僕は、急いでガルシアのもとに駆け寄る。

「…ガルシア!?」

そこにはもう原型がわからないほど雲を取り込んだ、ガルシアが倒れていた。


「…落ち着いて聞いてくれ。ガルシアちゃんを兄さんのとこまで連れていく」時は急げだ、と言ってルイが指を鳴らすと、元の世界で見たようなヘリコプターが上空に突如出現する。驚愕する暇もなく、僕たちはそれに乗り込む。



ーーーーー次の日の早朝。急ぎに急いでやってきたのは、僕たちは見慣れた、東京の街だった。


「ようこそ、我が研究所へ」


そういって出迎えたのが、井川司(いかわつかさ)さんだった。

「話は弟から聞いている。その子は『呪い』に蝕まれているんだ」

と、司さんは白衣を翻しながら振り返って言った。

「呪いとは一体、何ですか!?」心配した面持ちで赤羽根は聞く。

「君たちが思っているような呪いじゃないよ。呪いは、所謂反動なんだ」

と、司さんが語りはじめる。


―――――――

最初にこれを話しておくべきだね。大昔に、ある一人の兵士がいた。世界中が争う戦争の中、彼は君たちの日本を守るために戦った。

でも、彼が生まれなかった世界線がある。

日本が敗けた世界線。ここまで言えばわかるだろう?


そう、君たちの世界だ。


話を戻そう。彼は、戦時中にあることを発見してしまった。それこそが魔法だった。

彼は強化魔法を得意とした。船体や兵器なんかを強化して、戦争に導入した。

それから間もなく、日本は勝った。

すべての国が一つとなり、平和な国家が作られた。

だが、彼は長生きしなかった。

魔法には反動があったんだ。それが「呪い」だよ。しかし、統一国家は科学も発展させて反動を消したはずだった。


過去へ行って突き止めるんだ。呪いのありかを。そして、彼女を救うんだ。君が幸せであれと祈った、彼女を。



これは、二つの世界を分かつ、能力(トリガー)の物語。

ご無沙汰しております、吉凶 巧です。

長らくお待たせして申し訳ございませんでした。お詫び申し上げます。

今回はついに謎の一部が明かされますね。

それでは、次の第8話でお会いしましょう!

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