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異世界への能力(改訂前)  作者: 吉凶 巧
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第5話 使者

しばらく走り続けていると、ここら辺で一番大きな街が見えてきた。

「ふぅ、ここら辺でいいか」

僕達は街の外れに車を停めておき、この国を楽しむことにした。


ガルシアと出会ったあの国の建物と似ているこの国の建物を見つつ、僕らはまず両替所へ向かった。

「はい、じゃあ15000イロンに交換だ!」

元気な両替人から両替してもらい、早速散策を始める。


まず目についたのは武器屋だった。この国独特の武器が売っているらしい。

僕は攻撃を受け流す短剣だというパリングダガーを買った。

「んー、私はどれにしよっかなー」

赤羽根も今まで素手で、武器が欲しかったようだ。

「じゃあお兄さん、これください!」

「はいよ!重たいから気をつけな!」


そう言って赤羽根は棍のような武器のメイスを買った。

「赤羽根、そんな重い武器持てるのか?」

「へーきだって。空から落として攻撃しようかなって思ってるんだー」

「それ絶対危ないでしょ!?」

久山のキレッキレのツッコミ。そういえば、この世界に来てから久山のツッコミを初めて見た気がする。

「久山、武器は買わないのか?」

「まだいいわ。なんか重そうだし」

身体強化出来るじゃん、とツッコミそうになったが、やめておいた。


「武器を手に入れたら、次は防具じゃない?RPG的に!」

そんな訳の分からない事を言われ、僕達は服屋に向かった。

「おい、なんで防具なのに服なんだ?」

「えー、防具ダサいじゃん!」

少しガルシアの顔が険悪になった気がしたが、きっと気のせいだろう。

どうやら赤羽根と久山は、お互いをコーディネートし合うらしい。

店の中で待っているだけでは暇なので、ガルシアに気になっていた話を振ってみた。

「ガルシア、どうしてあの国では伝統衣装をみんな着ていたのに、この国では僕達の世界のような服があるんだ?」

「私の国にもこういう服はあるわよ。ただみんな着ていないだけ」

どうやらその中でもガルシアのいた地域は特別で、伝統を重んじる方針で統治しているらしい。だから制服もローブなのだとか。


そんな話をしていたら、コーディネートが終わったみたいだ。

「じゃーん!」

赤羽根がまず更衣室から出てくる。白いタンクトップに、デニムのホットパンツ。そして、ベリーショートの靴下に白いスニーカーだ。引き締まったお腹がタンクトップの下端の方から少し見えている。

「いいねぇ、赤羽根ちゃん!」

いきなり後ろからルイが現れた。どうやら何か用事があったようだ。


「…どうかな?」

続いて久山が登場する。久山の服装は、黒いTシャツ、グレーのスキニージーンズ、黒のサンダルだった。

「素敵じゃない!とても似合ってるわね!」

ガルシアは久山に好評だった。

「慎磁は、服買わないの?」

「僕はこの、転移してきた時のままのやつでいいよ。洗濯もできるし」

「いやいや、そんなこと言わないの!私達が選んであげるから、こっち来なさい!」

半ば強制的に連行し、僕の服を選ぶ二人。


僕が着せられたものは、黒のワイシャツの上に紺のジャケット、紺のズボン。そして、黒の革靴。

「どうかな、ルイくん!?」

「うん、いいコーディネートだ。素敵だね」

「かっこいいわね!」

お、高評判。

自分で選んだわけではないが嬉しかったので、僕はこの服で行動することにした。

武器を新調し、服も新調した僕達は、最高の気持ちで歩いていた。


昼食をとるために僕達は店に入った。

注文して、まず最初にルイの頼んだパスタが来る。

すると、ルイはパスタを食べながら話し始めた。

「実は、今日一緒に行動できなかったのは、独立軍の手先が住民と喧嘩してて、それを止めに行ってたんだ」

「へえ、ここら辺にも独立軍がいるのか」

「むしろこっちの方が多く見かけると思うわよ」

「ふーん、でもなんで?」

「最新の情報なんだけど、ここから北の辺りに本拠地があるらしいわ。本拠地に近くなっているから、多いということよ」

そんな話をしていたら、規模の小さい商店街の辺りから悲鳴が聞こえた。

「ん?あそこのあたりから悲鳴が…行ってみよう」

「「おー!」」

「…はいはい」

みんな出て行ってしまって、代金は結局僕が全て支払った。


急ぎに急いで、僕達は商店街にやってきた。

「やあ、元気かい?」

チェーンのベルトをした若い金髪の男。謎のオーラを感じる、あの時の…雅崇のような。

「幹部だね?その魔力の量」

「それにあの服装からしてあいつら、多分転移者よ」

ルイは前回とは違い、綺麗な装飾のパルチザンを構える。

ガルシアは召喚魔法の準備をする。普段とは違う、赤い魔法陣。


ルイはパルチザンで、まずは金髪の男に斬りかかる。

「おいおい待てよ!まだ自己紹介が済んでねえだろ?」

金髪の男は斬撃を華麗に避けながら言う。

「俺は海藤だ。あいつは(さとし)

言い終わると同時に、ルイの突きをかわす。

「……こいつらも転移者か。まったく、面倒な敵しかやってこないな!」

言い終えると同時に、僕は体とダガーを硬化させる。

久山、ルイも強化を完了させたようだ。


「へぇ、凄い殺気だ……じゃあ、少し小手試しと行こうか」

海藤がそう言い終えたかと思うと、彼の体はみるみる内に透けていき、やがて透明になってしまった。

「何?!皆、警戒してくれ!」

このままでは何処から攻撃が来るのか分からない。後ろの皆に警戒を促す。

「そちらばかり気にしてていいのですか?」

……と、僕の前から賢の声が聞こえた。

すると、賢が腕をバッ、と挙げた瞬間に彼の周りに多数の銃器が出現した。

一斉射撃が来ると同時に、周りが赤い透明な壁で覆われたが、射撃に対応する方を優先して、よくは見えなかった。

「ぐっ…!!」

最初のうちは耐えられたが、もう限界が近づいている。


「ん…?ちょっとやってみるか!」

赤羽根は何か閃いたようだ。銃器に向けて腕を伸ばす。その瞬間、全ての銃器の銃口が浮き始める。

「中々ですね。しかし、これはどうでしょうか?」

今度は結界の壁から銃器が隙間なく現れる。

賢はその銃器のうちの一つに乗り、腕を組む。

解決策を探さないと。


「今ね!」

ガルシアの魔法陣から、赤雷が出てくる。赤雷は結界の壁を伝い、一瞬で全ての場所へ回った。

「ふっ……!」

賢は一瞬回避が遅れ、少し感電したようだ。

赤雷はその後消え去る。


「……!」

久山は何か気づいたようだ。

「……ならば、もう一度銃器を出すだけです」

そう言い終わるとほぼ同時に、賢の右腕を蹴る。

「何っ……!?」

賢が右腕を抑えていると、

「おいおい、何やってんだよ賢」

海藤が僕らの背後に姿を現した。

逃すまいと久山とルイが強化を施し追うが、また逃げる。


「仕方ない。僕の能力を使うか。反動があるから嫌なんだけど……」

ルイはそういうと、右目を手で塞ぐ。そしてすぐに手を離しパルチザンを握り、力を溜めるようなポーズをとる。

「久山ちゃん!僕が投げたところに蹴りを!」

そう言ってルイは思いっきりパルチザンを投げつける。

そしてそれは「何か」に刺さった。見えない何かだ。

そこに久山は蹴りを入れる。

「ぐっ……」

海藤の透明化が切れると同時に、結界も崩れ去る。

最後に一発、久山のかかと落としが決まる。

海藤は力尽きたように、地へと倒れ込んだ。


「海藤さんを倒しましたか。でもまだ終わりではありませんよ?」

賢は街の外れを指差す。見ると、海藤が透明化させていたと思われる相当の数の独立軍が、一斉に姿を現していた。

賢はバックステップのような飛び方をして、独立軍の中ほどへ飛んでいった。

「おっと、反動がきた。それじゃあ僕は避難させてもらうよ」

ルイはどこかへ去ってしまった。独立軍の数は、ざっと数えて100から200人ほどにはいると見える。

「この人数を4人で相手するのは、流石に無理があるだろ…」

「一斉に倒すしかないわね」

と何か覚悟を決めたような表情のガルシア。


「召喚!」

ガルシアは独立軍の足元に赤い魔法陣を作り出し、先程の赤雷を呼び出す。

赤雷は魔法陣を起点として放射状に広がる。

あっという間に独立軍の前衛は倒れ、陣形はえぐられたような形に崩れる。


「……強化」

さらにそこから縦に敵をなぎ倒して行く。すると、陣形は二つに分かれた。

ガルシアの思いついた策は、分断させて倒すという方法だったようだ。

ガルシアと久山は、赤雷と拳技でどんどんなぎ払って行く。


「僕達も負けないよー!」

赤羽根は低空を飛び、メイスを下に構えて頭を叩くというえげつない作戦に出る。


僕は強化したダガーで攻撃を受け流しつつ、平面で叩いて気絶させるやり方をとった。あと3人ほどになった時。

「油断しましたね」

と後ろから聞こえる。

振り向けば、風景を全て覆い尽くす程に並んだ銃器が僕達を捉えていた。




もう終わりだ、と思ったその時、

「強化!」

何者かが身体強化をかけてくれた。

そのおかげで、文字通り死ぬほど痛いが、反撃のチャンスを得た。

再び賢が腕を上げようとしたその時、赤羽根が飛びながらメイスを賢の腹に当てる。あまりの痛さに悶絶した後、賢は気絶した。




僕達は、礼を言おうと周りを見回すが、僕達以外誰もいなかった。

「ねえねえ慎磁!」

向こうで何か見つけたらしい。

「なんか手紙が落ちてるよ!『慎磁くんへ』だって!」

そう言って赤羽根は手紙を開け、読み始める。


「『さっきは間一髪のところ、と言った感じだったね。そこより北に独立軍の本拠地があるっていうガルシアちゃんの情報は本当だ。日本に向かう前に、そこを鎮めてきて欲しい。よろしく頼む。(つかさ)』だって!」


「……司?誰だ?それは。今まで会ったことどころか聞いたこともないぞ?」

何故見ず知らずの筈の人物が、僕達に助け舟を出したのか。いや、それよりも、何故僕、そしてガルシアの名前を知っているのか。魔法使いならばガルシアの名前は知っているかもしれないが……

いきなり見つけたり、道に落ちていたりとどうも信憑性が薄い気がするが、僕達はこの手紙に従うことにした。車のトランクに各々の武器を入れ、僕達は山地を進む。

皆様ご無沙汰しております、吉凶(きっきょう) (たくみ)でございます。

第5話 使者 投稿させていただきました!今回、ラストで何者かの助けによって見事勝利を収めることが出来ました。手紙の差出人は「司」……?

それでは皆様、また第6話にてお会いしましょう!

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