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異世界への能力(改訂前)  作者: 吉凶 巧
3/8

第2話 転移/その2

「……つまり、僕にも何らかの『能力』があるという事か。」

やっと理解ができた。要するに、ガルシアの話によれば、僕達がいた世界から

転移して来た人達は、想像を超える程の「魔法耐性」と一つだけ「特殊能力」

が備わるらしい。紛争を止めるために選ばれた、いわば僕は「特別な存在」と

いう訳だ。

ともかくこれで退屈な日常ともおさらばできそうだが…


「ええ、貴方にも能力が備わっているわ。ちょっと待ってね、私が目覚めさせて

あげる!」

……と言い終わると同時に、僕の周りが突如神々しい光に包まれた。僕の周りに

不思議な魔法陣が出来ているのである。

「……っつ!!」

すると、僕の体の中に突然熱く燃え上がるようなものを感じた。

脳裏に自分の出来ることが流れ込んでくる。

硬度……。強度……。

まるで灼熱の業火のように、自らの体の中に何か、とてつもないものがあると

実感した。

―――そして、僕は「能力」を手に入れたのだ。



……と言っても、単語だけ流れ込んでくるわけで明確には分からなかった。実践

すればわかるだろうと彼女はそう言っていた。

「何してんの?速くいこーよ!」

隣から涼の声が聞こえる。少し長く話しすぎてしまったかな?


勿論、同じく転移を果たした赤羽根、久山にも能力が備わっていることだろ

う。どのような能力か気になりそわそわしていたら、依頼が飛び込んで来た。

少し心が躍る。


「ガルシア様!盗賊です!盗賊が現れました!」

この街の住民の男性であろうか。酷く急いだ様子でやって来た。どうやら、盗

賊が暴れているようだ。


「盗賊?……もしかしたら、独立軍と関係があるかもしれないわ!早速向かいま

しょう!」

「おー!」

「……うーん、盗賊と独立軍って関係ないと思うんだけど……」


元気な二人と対照的に、久山は少し気が向かないようだ。……まぁ、どの道村の

住民が困っているというなら助けた方がいいのは確かだ。それに、この「能

力」も試してみたい。


「……よし、向かおう。場所はどこだ?」

「あっちだ!」

街の外れの方を指差す。早速僕達は、その現場へと向かった。



「ふぅ、この辺かしら?」

街の外れまで来た。……が、ここは枯れ草の生えた荒野が広がっているだけであ

り、人影などは無さそうだ。しばらく探索してみるが、ここには誰もいない。

……すると、


「……ん?今のは何?」

久山が何かに気づいたようだ。しかし、僕達は特に何も感じないが……あ。

「……風?」

そうだ、心なしか風が先程より強く吹いているのだ。その風は段々と強くなっ

ていき、荒れ狂う風が高野の草を撒き散らし、小さな竜巻のようになってい

る。


その小さな竜巻は、段々段々と小さくなっていく。……すると、何やら5人の人

影が見えた。

「やあガルシア、私の落ちぶれとは裏腹に、随分偉くなったじゃないか」

「その声は…レイシスかしら」


……中の5人の人影の姿がくっきりと見えた。その内の一人は、ガルシアと同じ

ようなローブを着ている。この二人は面識があるようだ。

「あなた…ついに盗賊にまで成り下がったようね」

「盗賊もいいものだぞ?よければ君も一緒にどうだ?」

「お断りよ。敵対するつもりなら、私はあなたを倒さねばならない」


「ガルシア、あの人知り合いなの?」

「ええ、ちょっとね。前にこの王国で一緒に魔術師をしていたの」

涼の問いにガルシアが答える。彼はガルシアと同じ魔法を使える存在であり、

恐らく風を操るのだろう。

それからガルシアが攻撃を始め、敵の内の一人を倒すまでは一瞬だった。ガル

シアは雷を召喚したようで、雲ひとつない快晴であるにもかかわらず、一条の

雷が。真っ直ぐに、そして、無慈悲に落ちた。


「ぐわぁぁぁぁああっ!!!!」

盗賊の内の一人が悲鳴を上げて倒れる。

「ええっ?!そんな!殺しちゃうの?!」

涼の悲鳴を帯びた声が聞こえる。僕も同様だ。確かに紛争を止めるというのは

こういう事だが、やはり間近で見ると惨いものだ。

「いえ、峰打ち程度よ。王国の魔術師は、人を殺すことは禁じられているの」

ガルシアが答える。王国の魔術師は、人を殺してはならない…その束縛の中で

魔法を使えるとは、相当の実力なのだろう。


「……ほう、腕を上げたな、ガルシア」

彼、レイシスが呟く。こちらも負けてはいられない、何か出来ることはないだ

ろうか?

「貴方達は下がっていて。レイシス達はもう王国の魔術師ではない。人を殺すの

に躊躇なんて無いわ」

「そんな余裕でいられるかな?」

……と、いつの間にかガルシアの目前にレイシスが姿を現した。

疾風の如き速さで接近してきたのだ。

「お返しだ。喰らえ!」

レイシスが手に力を込めたかと思うと、今にも吹き飛ばされるかというような

風を拳に纏わせ、ガルシアを殴り飛ばした。


レイシスに気を取られている間に盗賊の一人が背後に回り込んでいた。

「喰らえ!!」

その瞬間、僕は理解した。自分の「能力」を。

咄嗟に自分の体を硬化させ、剣を生身で受ける。

かなり痛みはあるが、傷はなかった。

「なるほど…『物質の硬度や強度を変えられる能力』…か」

「……ほう。そこの盗賊、死なないように気をつけろよ!」

僕は硬化した自分の拳を、盗賊の顔面目掛けて思い切り突き出した。


「ふぐぅっ!?」

間抜けな声を出し、2、3mほど吹き飛んで行く。

「わー、慎滋すごい!……僕達、なんか出来ないの?!」

涼が焦っている所に、先程とは違う盗賊の1人が涼目掛けて鉈で切りかかろうとしている。

「涼、危ない!」

咄嗟に体を硬化させ、涼を庇う。

「慎滋、大丈夫?!」

盗賊の鉈を背中で受けつつ、涼の心配を受ける。

「僕は…僕は…あっ!」

何か閃いた様子を見せると、僕に鉈を喰らわせていた盗賊は空高く吹っ飛んで

いった。

「私のはー……なんだろ?」

暫くすると、盗賊は枯れ草の積もった平原に落ちて行った。


「嬢ちゃん、あんたの相手は俺だ!」

久山に殴りかかる一人。

頭に思い浮かぶ。体が軽くなる。

「はっ!」

力強く息を吐き、手を地につき体を回す。

「ぐっ…」

「なるほど…私は身体能力強化ね」

盗賊は無念の表情で、地にドサリと倒れ込んだ。


「……何?こいつら全員転移者か!!」

レイシスは突然の事に頭が回らなつつも、咄嗟に身構えた。

「クソっ、これを喰らえッ!」

手にしていた杖から強力な突風を繰り出した……が、僕には大して効かない。効

くはずもない。……そう、転移者には全員「魔法耐性」があるからだ。

「転移者の魔法耐性が想像を絶する事はお前も知っているだろ?最後の最後に…

バカをしたなッ!」

僕は言い終わると同時に、渾身の一撃をレイシスの腹に叩き込む。

「ぐッ……ふ」

2、3歩ヨロヨロと後ろに後ずさり、レイシスは倒れ込んだ。

どうも。吉凶(きっきょう) (たくみ)です。第2話投稿完了です!

今回は前回の回想の続き、そして盗賊との戦いでしたね。果たして彼らは独立軍の手先だったのでしょうか?ここからなにかきっかけが掴めればいいですね。

それでは、3話にてまた会いましょう!

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