パーキングエリアのトイレ
最近はパーキングエリアのトイレも技術が発達したな。
空いているトイレは青、入っているトイレは赤のランプで
示されているらしい。
しかも そのランプはトイレの個室に付いているだけでなく、
トイレに入ってすぐのところにパネルでも表されていた。
そのパネルは全て青色のランプ埋まっている。
ちらり、と周りのトイレを見回してみたが、確かに
人は一人もいない。素晴らしいな。やはり機械は優秀だ。
すると、その瞬間。
ぱっとパネルのランプの一つが赤を光らせた。
それは、いま私がいる場所からいちばん遠い場所。
いや、嘘だ。だって、今誰もいなかったんだぞ……。
……いやいや、所詮は人間の目だし見えなかっただけだろう。
いちばん遠いんだし。
パネルを眺めていると、その場所のランプは青色へと変化した。
……でも、明らかに今のはおかしい。
赤から青に変わったってことは、用を足し終えて
個室から出たということ。そう、そのはず。
……音は、ひとつもしない。
すると次はさっきよりも近い、でも まだ私とは距離が
あるくらいの微妙な遠さのトイレのランプが赤色に変化した。
……音はしなかった。
これまた数十秒で青色のランプへ姿を変え……次は私からいちばん
近いトイレのランプが赤く光る。
私はとうとう怖くなり、そのトイレから逃げ出した。
まずい。本能がそう叫ぶ。
正体不明の恐怖が私の体を震わせる。
感じたことも無いような……なんだ、この感じ。
一目散に車へと走り、エンジンをかける。
ちらりと見えた、あの不気味なパーキングエリアには
得体の知れない、なんと言い表せばいいのかも分からない
黒く禍々しい【ナニカ】がいた。
何かだなんて分かるものか。
悪いが、本当に分からない。言葉でなんて表せない。
見たのは一瞬で、その後はすぐに車を出して
逃げたもんだから、分かるわけがない。
ただ、あそこのパーキングエリアにはもう二度と行かない。
絶対だ。