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 父さんと一緒にレオルの町にやってきた。村から馬車で二時間ほどの距離だ。

 そしてその足で教会に行き、司祭に転職をして貰った。


 今回、俺が選んだのは見習い戦士だ。上限レベルは30。

 村人と違って中々レベルの上げ甲斐がある。

 

 さて、町へ来たならばやりたいことがある。

 ……あるのだが今はまだ我慢するしかない。

 俺がやりたかったのはアイテム図鑑埋めだ。

 しかし、今の状況だと図鑑を確認することが出来ない。

 図鑑シリーズの閲覧は【やりこみ廃人】専用のスキルだからだ。

 今の俺には閲覧権がない。そもそも自由に使えるお金も持ってないしね。


 こうなればやけだ。レベル上げだ。モンスターを狩ってレベリング。

 レベル上げこそ我がライフワーク。前世から魂に刻まれた至高の趣味にして我が使命。

 六歳まではジョブが判明しなかったから仕方が無い。そもそもレベルが上がらないジョブだった。

 村人になってからは毎日欠かさずスキルを使って経験値を稼いだ。そしてレベルマックスにした。

 対して今は見習い戦士になったばかり。レベル上限じゃないから経験値が入る。

 レベル上げが簡単に出来るこの状況でそれをしないのは非常に辛い。


 「ロディ、折角町へ来たんだ。どこか行きたいところはあるか?」


 「レベル上げがしたい。魔物が出る場所に行きたい」


 「やる気はあるのは結構だが、少しは息抜きしたらどうだ。ここ一月、朝から晩までずっと剣の稽古漬けだったじゃないか。そうだ、シャンデ通りにある串焼き肉の店は美味いぞ。母さんには内緒で一本買ってやろう」


 串焼き肉は魅力だが、今はそれよりもレベル上げだ。

 串焼き肉は食わなくても死なないが、レベル上げできなくては俺がストレスで死んでしまう。


 「いや、そんな事よりもレベル上げがしたいんだ!」


 「仕方ない。それがロディの望みならば父さんもつき合おう。この近くにも森があったはずだ。比較的弱いモンスターしか出ない。戦闘の練習には打ってつけだろう。だが、木の棒で戦うつもりか? せめてそれなりの武器は用意しないとな」


 確かにそうだ。言われてみればRPGの基本だな。

 木の棒なんて最弱の武器だ。武器が悪ければダメージ効率が落ちる。

 一体のモンスターを倒すのに何度も殴らなければいけない。

 すなわち、モンスターを狩る効率が落ちると言うことだ。

 六回殴って倒すのと三回殴って倒すなら三回の方がいいに決まっている。

 それは戴けない。

 父さんが言うので俺は父さんの馴染みだという武器屋に向かうことにした。


 ケルベン工房。

 木の看板に剣と斧が交差するの絵が描かれている。

 木造で二階建ての建物だ。


 父さんは慣れた様子でケルベン工房へと入っていく。

 工房と言うから作業場のようなものをイメージしていたのだが、カウンター付きの普通のお店のような内装だった。

 カウンターには俺と同い年ぐらいの少年が店番として立っていた。

 こちらと目が合うとぺこりと頭を下げる。柔和な顔をした礼儀正しそうな少年だ。


 「あ、いらっしゃいませ。今、工房の方からお父さんを呼んできますね」


 少年は店の奥へと走り去っていく。

 今の口ぶりだと店部分の奥に工房がある造りなのだろう。

 

 しばらく待つと、片目を眼帯で覆った顔に傷のある強面のマッチョメンが俺達を迎えてくれた。

 これが先程の少年のお父さんだろうか。似ても似つかない。

 きっと母親の遺伝子が優秀だったんだろう。


 「おう。旦那か。今日は武器の手入れか?」


 「いや、今日は息子に武器を買ってやりたくてな。鉄で出来た数打ちで良い。あまり良いものを与えて実力と勘違いされても困るしな」


 あ、父さんめ余計な気遣いを。俺は精神面では一応大人だし調子になんか乗らないよ。

 それよりも効率的にモンスターを狩れる強武器をプリーズ。


 「悪いが、俺は数打ちの鉄剣なんかわざわざ作らねぇぞ。冒険者共から仰山仕事を頼まれてるんでな。旦那ならよく知ってるだろ。他を当たってくんな」


 「勿論さ。だから、あんたの息子が練習用に作った剣で良い。最近鍛冶を教え始めたんだろ?」


 「ちっ、話すんじゃなかったぜ。駄目だ。アイツの剣はまだまだ売りもんにならねぇよ」


 「それは買う俺が決める。とりあえず見せて貰って良いか?」


 「客にそこまで言われちまったら仕方ねぇな。おい、パッシュ。こそこそ見てねぇで出てこい」


 先程の少年が店の奥から出てきて強面親父の隣に並ぶ。

 パッシュと言う名前らしい。


 「昨日造ったあれを持ってこい。あれが一番出来が良かっただろ。あれなら何とか売れるレベルだ。アイツを持ってこい」

 

 強面親父が言うと、パッシュは不穏な空気を感じ取ったのか少し不安げな顔になった。

 しかし、強面オヤジの言うことには逆らえないのか店の奥へと引っ込んでいく。


 しばらく待つと、パッシュは布に包まれた細長い棒を持って店の奥から現れた。

 それを強面オヤジは引ったくるとカウンターの上に置いて布を解き始めた。


 布の中から現れたのは現れたのは刃渡り50センチほどの直剣。


 「ちげぇよ。これじゃねぇよ。俺の目を誤魔化せるわけ無いだろ! バカタレが!」


 ボガッと鈍い音が響く。強面オヤジはパッシュの頭にゲンコツを落としたのだった。

 パッシュは両手で頭を押さえ、涙目になりながらも強面オヤジを見上げる。


 「あれ売っちゃうの? 折角父さんに褒めて貰えた僕の自信作だったのに。ずっと宝物にするつもりだったのに」


 「ったくバカタレが! 鍛冶屋が使いもしねぇ自分で作ったもんを後生大事に抱え続けてどうなる。店の在庫ばっかり増やしてもどうしようもねぇだろうが。鍛冶屋は打った武器を客に売って初めて飯を食えるんだ。そこを勘違いするな!」


 「五月蠅い。あの剣は特別だったんだ。もう父さんなんか知らない!」


 パッシュ少年は店を飛び出していった。

 ああまで揉めるなら武器はいいですと断ってしまいたいが、その場合俺の武器はどうなるんだろう。

 


 

 

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