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 グレーウルフのむれがあらわれた!▽


 古き良きコマンドRPG風に今の状況を説明するとこうなるだろう。

 画面には敵のドットイラストが表示されていて、その上にはきっとこう表示されることだろう。

 

 グレーウルフA

 グレーウルフB


 対するプレイヤーである俺のコマンドはこれだけだ。


 【たたかう】

 【どうぐ】

 【にげる】


 今の所、俺には戦闘用のスキルが無い。

 道具だって今来ている布の服くらいのもので戦闘に使える類の物ではない。

 

 グレーウルフAのこうげき。

 俺はひらりと身をかわした。


 RPG風テキストだと淡々とこんな事実だけを述べるが、実際の俺は滅茶苦茶必死だ。

 グレーウルフは名前の通り灰色の毛皮を持った狼である。

 大きさは中型犬くらいのサイズ。

 ただし、牙は滅茶苦茶鋭くて攻撃性が高い。

 絶望するほどの相手でもないが、決して油断できない相手だ。

 多分噛まれたら手足の一本は間違いなく食いちぎられる。


 要は噛まれないようにだけ注意を払っていれば良い。

 幸い爪の方はそれほど鋭くはなさそうだ。

 引っ掻かれれば間違いなく痛いだろうが、致命傷には到らないだろう。


 ゲームとの違いは俺のステータスがわからないこと。

 ただ、見習い戦士のレベル1なのでなんとなく自分が弱い事だけは分かる。

 あとは、ターン制では無いこと。

 どちらかと言えば、この世界はコマンドRPGじゃなくてアクションRPGの系譜だ。

 大丈夫。俺はそっちもやりこんでいる。

 おおよそやり込みには二種類タイプがあると俺は思っている。

 全アイテムや全モンスター図鑑をコンプリートする、所謂最強データ作成系。

 もう一つが制限攻略。

 レベル1や装備無しといった枷をを自らに課すことで難易度を上げて楽しむという方法だ。

 プレイヤーは与えられた制限内で必死に最適解を見つけ出す。

 そして、普通だったら絶対使わないようなゴミスキルに案外答えがあったりする。

 最強データ作成と違って図鑑などを埋められない場合が殆どだが、こちらはこちらで中々に楽しい。

 制限内容を変えることでまた違った戦略が必要になったりとゲームを隅々まで味わい尽くすことができる。特にレベル1、装備無しのやり込みプレイだと終盤殆どダメージが通らなくてボス相手に二時間くらい戦い続けることなんてざらにあった。そして二時間の間一撃も貰ってはいけない極限プレイ。

 何回も何回も数え切れないくらいやり直して半年ぐらいリアルタイムを費やしたあの日々は間違いなく絶望に彩られていた。

 それに比べれば序盤の雑魚な風体をしているグレーウルフはまだ勝てそうな印象を受ける。

 負けたら死ぬ。それだけだ。

 

 さて、改めてこの状況をどう打開すべきか。


 一見すると二対二の状況だが、こっちはパッシュが負傷している。

 パッシュが戦えない以上、俺が二体を相手取る必要がある。

 二体の注意を引いてパッシュに攻撃外界ないようにしなければいけない。

 且つ、俺が攻撃を受けてもいけない。


 ……無理だな。


 俺は狼たちから目線を外すことが出来ない。

 外した時点で隙だと見なされて襲いかかってくることだろう。

 だから、両の目でしっかりと狼たちを睨んだまま言う。

 

 「パッシュ。怪我してるところ悪いが何とか街まで帰ってくれ。ここは俺が時間を稼ぐ。誰でも良いから応援を呼んできてくれ」


 「お、お前はどうすんだよ!?」


 「あいつら二体くらいなら相手取れるし、最悪逃げ回る事だってできる。ただ、お前を庇いながらじゃ無理だ。それともお前はその足で戦えるのか? 無理なら応援を呼んでくれ。それが一番今生き延びられる可能性が高い」


 パッシュは何か言いたげだったが、状況が状況だけに口を諫めたようだった。


 「わかった。すぐに誰かつれてくるから、死ぬなよ」


 パッシュは足を引きずりながら町の方へと歩き始めた。

 応援には期待しない。

 あの足ではどうしたって街へ帰るのに時間がかかる。


 狼たちの一体が俺を襲うのを諦めて、背中を見せたパッシュに飛びかかろうとする。


 「お前の相手は俺だろうが!」


 その横っ腹に拾った小石を思い切るぶつけてやった。

 怒り狂った狼がその足先をこちらへと向けて飛びかかってくる。


 それにタイミングを合わせるように反対側からもう一体の狼がコンビネーションを仕掛けてくる。


 「さぁて、こいつらをどう処理しようか」

 



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