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神様が仕事を放棄して下界に降ります  作者: 三宮 琳
第一章〜ヒズミルの町の残念な人たち〜
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神託と断罪とパンツ

 さて、この状況をどうしたものか。


 冤罪だが聖女のパンツは確かに俺のポケットから出てきたところを目撃され、先ほどまで俺はそれを必死に隠そうとしていた。


 唯一俺の無実を証明できるクランネは裏切り自らの保身を優先した。


 詰んでないですか?


 「おい、てめぇクランネ!!覚えてろよ!!」


 とりあえずこのやりきれない感情を共犯、いやもう主犯といってもいいであろうクランネにぶつける。するとクランネはまたも口の形だけで言葉を伝えてきた。


 「ご め ん な さ い で すぅ、 1 回 だ け デ ー ト し て あ げ ま す か ら 許 し て く だ さ い !」


 「お前は相変わらず自己評価高いな!」


 それよりも問題なのは目の前の聖女である。


 凍えるような覇気を放つ彼女に初めて出会った時の慈愛あふれる表情はもはや微塵たりともない。


 「その⋯⋯」


 「そこに座りなさい。」


 「はい⋯⋯でもこれはっ。」


 「誰が発言していいと言いましたか?」


 「⋯⋯」


 思っていたよりもやばそうなんだが⋯⋯。


 「今日、私のもとに幸運と不運が1度に訪れるとの神託がおりました。幸運は確信はないですがおそらくクランネが自らの間違いを隠さずに反省したことでしょう。不運は⋯⋯わかっていますね?」


 「はい⋯⋯。」


 いや、その幸運も偽物なんだが、と思うとクランネも同じ気持ちだったようで居心地が悪そうにしている。


 「このパ、パン⋯⋯ツは、少し前に私のもとから無くなったものです。クランネから盗まれた可能性がある。と言われましたがどうやら事実のようですね。」


 「いやそれを盗っていたのはそこのクランn」


 「ひどいやつですぅ!もぉ許せません!聖女様ったらかわいそうに!」


 と、クランネが割り込んできた。


 コノヤロウあくまでも自分だけは助かるつもりか!


 「あなたも年頃なのでしょう。こういうものに興味があるのはわかります。ですが相手のことを考えて⋯⋯」


 こうして聖女の長い説教が始まった。










 「⋯⋯そもそもそんなことをしてはお世話になった方々や家族だって悲しみます。それで⋯⋯」


 あれから3時間ほど過ぎました。未だ説教中です。年下の少女にパンツを盗んだことについて叱られるのはかなり心に刺さるものがあります。俺、王なのに⋯⋯。


 「⋯⋯それを見越して女神様は神託をくださったのでしょう。女神様にまで迷惑をかけるとは何事ですか。」


 冤罪なのになぁ。事前に神託が下っていたってせいで、完全に俺の無実が聞き入れてもらえない。


 神託だけじゃなくて、本人も信じてくれよ⋯⋯。神託ばっかり信用されて⋯⋯


 あれ?⋯⋯神託ばかり信用される⋯⋯神託は信用される⋯⋯神託ならば信用される?


 これは⋯⋯やってみる価値が!!!


 そうしてシオンはひっそりと神気を放ち始めた。


 「シオンさん!貴方聞いているんですか?」


 「ああ、すみません。」


 「まったく!反省の色がまだ見れませ⋯⋯」


『⋯⋯じょよ⋯⋯聖女よ⋯⋯神託を告げる。』


 「なっ、女神様!?シオンさん、いったんお待ちを。神託が下りました。」


『聖女よ⋯⋯その者が疑われている罪は冤罪である。その者はまったくの無実だ。』


 「それは本当ですか?いえ、でもしかし確かにシオンさんのポケットから私の下着が出てきたところを見たのですが。」


『それは悪しき精霊の悪戯である。その者は無実だ。』


 「そうだったんですか!それならば私は相当な失礼をしてしまったのでは⋯⋯。」


 この神託⋯⋯もちろん俺からである!


 信仰する神様から言われたら、少しは話を聞いてくれるかなと思ったんだが、これは効果絶大だな!


『聖女よ、その者に失礼をはたらいたと思うならば、誠意のこもった謝罪をし、その者の無実を認めよ。』


 「はい!ごめんなさいシオンさん。話をまともに聞かずに疑ってしまって。」


 「いや、わかってくれたならいいんだ。お互いこの事は忘れよう。」


 「はい、本当にすみませんでした。」


 と、上手く収めることができた。だが俺のやるべき事はもう一つある。それは⋯⋯


 「ふぇ?聖女様が何やら神託を聞いてからいきなりシオンさんに謝りましたぁ。これは、わたし助かったんですかねぇ?」


 と、馬鹿なことをのたまうアホシスターの断罪だ。安心しろ、きっちり裁いてやる。


『聖女よ、続けて神託をくだす。そこのシスター⋯⋯クランネのパンツをシオンに捧げよ。これは絶対である。さすれば世界に平和は訪れるであろう。』


 「ええ!?クランネのパ、パンツをですか?いきなりどうして。」


『世界には人の身では理解できないことが多くある、そのうちの一つだということだ。』


 「はあ⋯⋯ではクランネの自室から持ってくればいいのですか?」


『いや!今履いているものをだ(・・・・・・・・・・)


 「なっ⋯⋯」


『時間が無い、急ぐのだ。』


 「いや、でもクランネの⋯⋯でも世界が⋯⋯。」


『これは神命である!!!』


 「はっ、わ、わかりました女神の御心のままに。」


 「何を話していたんだ?」


 「その⋯⋯シオンさん、目を閉じ耳を塞いで後ろを向いてもらってもいいですか?」


 「まあ構わないけど。」


 「ありがとうございます。では⋯⋯ごめんなさいクランネ。」


 「へ?聖女様?なんでにじり寄ってくるんですか?はぅ⋯⋯なんでわたしのパンツ引っ張るんですか?え?聖女さま?きゃぁぁぁ!!!」










 「何も言わずにこれを持ってお帰りください。」


 といって渡されたのはまだ温かさの残る布。


 「お、おう。」


 ちょっとやりすぎたかもしれない。どうしよう。実はこの神託は冗談でしたなんて言い出せない。


 「うぇっ⋯⋯ぐすんっ⋯⋯ひっく⋯⋯ぐすっ⋯⋯わたしのぉ⋯⋯わたしのぱんつぅ⋯⋯。」


 まあこれでこいつも反省しただろう。


 そんなわけで『神王』は『クランネのパンツ』を手に入れた。

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