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神様が仕事を放棄して下界に降ります  作者: 三宮 琳
第二章〜白女神祭の大波乱〜
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炎舞姫カーラ

 「いくよっ!」


 その声とともにカーラが地面を踏みしめ飛び込んでくる。思ったよりも大分速い。


 竜人属の彼女は武器の類は持っておらず、その身体を駆使して戦うスタイルのようだった。気になるのは炎舞姫って名前なのだが。


 とりあえず回避して様子見だな、そう思い俺は横に跳ぶ。


 「甘いよ!」


 瞬間彼女の拳から炎が飛び出し、俺の服に燃え移った。


 「熱っ!やばい服が!」


 ああ、リリさんへの借金がどんどん増えていく。これは何としても勝って賞金を得なければならない。この闘技場のヤツらは服をダメにするのが趣味なのか!?


 そう、対峙するカーラを見据える。


 「まだまだ行くよ!『炎掌』。」


 彼女が繰り出す張り手の先から炎が溢れ出る。見たところ身体に炎を宿らせてそれを操り戦うようだ。


 竜人族は見た目は完全に人間だが、普通の人間と比べて耐久、素早さ、そして炎属性の適性が飛び抜けている。


 確かに彼女の炎に当たった部位に火傷のダメージが来るのは厄介だが、当たらなければ問題は無いだろう。


 俺には逃亡スキルがあるからな!⋯⋯というかなんで俺、こんなに真面目に分析して戦っているのだろう。


 神の力で、こう⋯⋯パァンっとやっちゃいたい。


 などと考えても仕方ないことに思考を割いているとさらに多くの炎を纏った拳が唸りをあげてきた。


 「『炎撃』!!」


 「危ねっ、『逃亡』。」


 よし、背後は取れた!ここまでは必勝パターンに持っていけたのだが、たぶん対策されているよなあ⋯⋯。


 そう思いながら、カーラに目潰しをするべく手を伸ばする瞬間。


 ドカンっと爆発音と共に、カーラの体が吹っ飛んでいった。行き場を失った俺の手は空をつかむ。


 どうやら、自分を爆破して俺の攻撃から離脱したみたいだ。何ていう避け方だ。誰も真似出来んだろう、というかしたくない。


 もっと自分を大切にしないと!女の子なんだから!


 まあ、その女の子に目潰しをしようとした俺であるが。


 「ふーん。あくまでも正面から戦わずに死角を狙うつもり?」


 自分についた煤を払い、カーラが問いかけてくる。


 「そりゃあ、勇者パーティーの武闘家なんて正面から相手にしていたらすぐに黒焦げにされそうだからな。」


 「うちは正面から来ない人は好きじゃないなあ。まあ、どうしても死角からしか来ないっていうならうちにも考えがあるよ。」


 と、言ってカーラがその場で舞い始めた。それに伴い、カーラの周りを炎の渦が覆っていく。


 カーラの舞は燃えるように情熱的で勇ましく、いや実際燃えているのだが、見ているこちらが炎の圧で心が呑まれそうだった。


 カーラが一通り舞い終わった時、彼女は髪の先からつま先まで全身から炎を纏って、それを周囲に溢れ出させていた。


 「どう?これがうちのスキルだよ?」


 これが炎舞姫と呼ばれる所以か。全身から炎が出るのであれば、確かに背後に回ったところでこちらが火傷をするだけだ。


 ちなみに何故舞踊っている最中に攻撃しなかったというと。せっかく技を繰り出している途中なのに、こちらの攻撃で中断させたら失礼に当たると考えたからである。


 決して見蕩れていたなどということはない!


 いい腰とおへそだった!


 ともあれ、この炎をどう対処すべきかと迷っていると、後ろの観客席の会話が聞こえてきた。


 「なあお前、今回どこまで行けた?」


 「俺は3回戦で負けたな。」


 どうやら彼らは試合に出場していた選手らしい。と聞き耳をたてていると、


 「そーか、大銀貨1枚か。羨ましいぜ。」


 「久しぶりに3回戦まで進めたからな、仕方ない。今日の飲みは奢ってやろう!」


 「マジか!?ありがてえ!俺は1回戦で負けちまったから収入無しだったんだ。」


 ⋯⋯⋯え?負けても報酬って出るの?


 完全に予想外だった。負けても報酬が出るならこんな律儀に戦闘に付き合ってやらなくてもいい!


 「炎舞姫の舞⋯⋯いつまで逃げられるかな!」


 そんなことを言って目の前の燃え盛るカーラが舞うように打撃を繰り出してくる。


 それを俺は⋯⋯


 わざと(・・・)顔面にくらいその場に崩れ落ちた。


 「うぅ⋯⋯参った!俺の負けだっ!」


 大きな声で観客たちに宣言する。


 「⋯⋯へ?」


 一方、勝ったはずのカーラは気が抜けたように突っ立っている。まあ今まで全て避けられていた攻撃がいきなりクリーンヒットしたんだ。驚くのもわかる。


 「はっ!勝者、『炎舞姫』カーラ!またも無敗記録を塗り替えたぁッ!」


 司会のその言葉でカーラの意識が現実に戻された。


 「ちょっ、ちょっと待って!今キミわざと!」


 「ごほんごほんっ、いやーさすが炎舞姫!強かったなぁ。完敗だっ!」


 余計なことを言おうとするんじゃない!これ以上抗議されても困るので、俺はそそくさと舞台裏へと退場した。


 「あ!待ってよ!まだ勝負は⋯⋯。」


 聞こえない聞こえなーい!

















 「ふんっ!それなりに戦えるようだってけれど、勇者様のパーティーメンバーに負けるならあんたの力は所詮紛い物のようね。やっぱり勇者様は勇者様だけだわ!」


 俺が報酬を受け取ろうと受付へ行くと、そこには聖女ロゼッタが待ち構えていた。


 というか開口一番嫌味かよ。こっちだって優勝するくらい頑張ったんだぞ!


 実際はブヒータからの刺客を払っていただけだが。


 「そりゃあ俺は勇者じゃないし、なるつもりもないからな。いい加減比べるのはやめて欲しいんだが。」


 「ええそうね。あんたなんか勇者様にかなうわけないんだから比べるのもおこがましいわ!」


 一々、気に障るような物言いはちょっとあれだが、とりあえずは比べないでくれるらしい。


 と、そこで、こちらをビクビクも恐れるような視線に気づいた。そちらへ振り向くと、


 「ぶ、ぶひい!そ、その⋯⋯あれはあいつらが勝手にやったんだ!俺は関係ない!」


 ダラダラと汗をかき言い訳を始めるブヒータ。


 そう言えばこいつに報復されてたんだっけなあ。勇者パーティーの武闘家うんぬんで完全に意識からなくなっていたわ。


 「そうか、なんでもいいが俺やリリに近づかないでくれよ。」


 「ぶ、ぶひいー!」


 そう言って逃げていった。後半言葉でも何でもなかったぞ。


 「何なのあれ?まあいいわ、教会へ帰るわよ。⋯⋯ふう、やっとこいつのお守りから解放されるわ、はやく勇者様に会いに行かなくっちゃ!」


 それは俺本人がいないところで言って欲しいなー。無駄なんだろうけど。


 聖女に急かされ、教会への馬車へと乗り込む。


 こうして、俺はブヒータとの因縁に終止符を打ち、また炎舞姫との因縁?を新たに抱え込むのであった。



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