ゴーストに救いを
クランネがすがり付いた布から何やら声が聞こえてきた。
「これが美少女の鼻水か。」
どうやらあの布がゴーストさんだったか。クランネちゃんったらドジだなぁ。ははっ。
「ぴぇっ!⋯⋯⋯⋯きゅ〜ーーー。」
ドサリとクランネが再び気を失う。どっから声出してんだ?それにやっぱりコイツなんの役にも立ってないなぁ。
と、倒れるクランネを一瞥し、とりあえずはゴーストと対話を試みてみることにした。
「お前がゴーストだな?」
「ああそうだとも。」
「俺はこの家を買う予定なんだ。出ていってもらえないか?」
「それは無理な相談だな。俺にはここを拠点にしてやる事があるからな!」
やること?はてさてなんだろうか。
「聞きたいか?いいだろう聞かせてやる。」
聞きたいなんて一言も言ってないが、せっかく語ってくれるみたいだしここは大人しく聞いていよう。
「俺は生前、冒険者学校に通っていて、頭もよく喧嘩も強かったんだがなぁ。容姿があまり優れていなくて女の子にモテなかった!」
そうか。
「だがある日、1人の女の子がトレーニングを終えた後の俺にタオルや飲み物を差し入れてくれたんだ。」
「良かったじゃないか。」
「そこまではなやっと春が来たかと浮かれた俺は親友⋯⋯いや親友だった男にどう仲良くなればいいかを相談した。」
展開が読めてきた気がするんですが。
「そいつはたくさんのアドバイスをくれたさ。そしていざ俺の想いを伝えようと彼女を探していたら⋯⋯俺は見つけてしまったんだ。」
あー⋯⋯。
「彼女が俺の親友だった男に告白するところを!!!」
あちゃー⋯⋯。
「俺は訳が分からず呆然とそれを見ていた。すると親友は何と言ったと思う?『君みたいな可愛い子はアイツには似合わないと思ってた。僕を選んでくれて嬉しいよ!』なんて言いやがって!」
「それはご愁傷様⋯⋯としか言いようがないな。」
「そしてそれに対する彼女の返答は『最初から貴方にアピールしたくてあの男に近づいていたのよ。やっと想いが通じあって嬉しいわ!』だった!チクショウ!最初から俺のことなんて誰も見てなかったんだ!」
よしよし神様が慰めてあげよう。
「さらに!」
まだあんのかよ。
「アイツらはずっと俺を利用していたという事を打ち明けはじめた!雑用を押し付けるのに都合がいいので友人の振りをしていた、タオルを渡した後のお礼がしつこくてウザイ、最近金を貸してくれないから友人を辞めようと思っていた。などなど!」
「うう⋯⋯酷いよ⋯⋯。そんなことするヤツら2人もサイテー!」
リリさんもそう思うか、俺も同感だ。
「いたたまれない気持ちになりその場に居られなくなった俺は一心不乱にその場から逃げた。そして逃げ続けたところ目をつぶって走っていた俺は冒険者学校近くの崖から落ちてしまった。」
そんなー⋯⋯。
「薄れゆく意識の中最後に見たものは、俺が丁寧に洗濯して返したはずの彼女のタオルだった。アイツはあろう事か俺の返したタオルなど要らないと捨てやがったんだ。どこまで馬鹿にすれば済むのかと怨みながら目を閉じると、俺はゴーストになりそのタオルに憑依していた。」
そりゃあゴーストにもなるわ。でも不思議なのは
「えーでも何で?この家を拠点にして計画?とかをやらないといけないの?」
そうその事だ。
「それはな!恋愛を怨んでゴーストになったからには、俺は人々の恋愛を引き裂くような行動をしなければならない!よって女子達を攫ってこの屋敷に閉じ込めてやるんだっ!」
そこで間違った方向に曲解しちゃったかぁ。
「そこで間違った方向に曲解しちゃったかぁー。」
リリがそのまんま言ってくれた。
「む?間違っているだと?やはりそうなのか⋯⋯。」
「心当たりがあるのか?」
「いや、女の子を攫うのだからな。なるべく下衆な口調になるよう努めてみたがどうにもしっくり来ない。それに、今までもいざ攫うとなると気乗りしなくて逃げられてばかりなんだ。」
犯行件数も実質0なのか⋯⋯。よし!
「なあリリ、俺ちょっとゴーストと1体1で話がしたくなったんだ。クランネを連れて外に行っていてくれないか?」
「わかったよー!じゃあ待ってるねー!」
そう言ってリリはクランネを抱えて出ていった。
「なあゴーストさんや。たぶんあんたが怨んでいるのは恋愛じゃなくてその2人だけだ。今やってることは無駄だと思うんだ。」
「やっぱりか!最近俺がやろうとしていることは何か違うと思いはじめていた⋯⋯。」
「そこで⋯⋯だ。」
そこまで言うと俺はさらに声を潜めてこう言った。
「もしお前が望むなら第2の人生を送ってみないか?」
「それはどういう意味だ?」
「突拍子もないことを言うが俺はそこそこ偉い神だ。お前を転生させることくらいならできるんだ。」
そこそこじゃなくて1番だけどね!
「それは本当か!?信じていいのか?」
「信じていいとも。神に誓える。」
「そりゃあその事が本当だったらお前⋯⋯いや⋯⋯神様?」
「今までどうりでいいぞ。転生した後は俺がお前の友達1号な!」
「な⋯⋯なんて幸運だ⋯⋯。」
おう喜べ喜べ。
「それで、もし生きてたらお前は何歳なんだ?もしかして爺さんになってたりするか?」
「いや死んだのは二年前だから18だ⋯⋯です。」
「敬語は必要ないって。割と最近だったんだな。」
俺の設定上の年齢とも同じだし。
「よし、それじゃあさっそく転生するか。一緒に成人の儀の祝福も付けといてやる。あ、でもこの事は誰にも秘密な?」
「わかった、神に誓おう。正直急展開過ぎて何が何だか。」
「誓われたぞ。まあなるようになるさ。いきなり18歳にしとくからな。冒険者にでもなって頑張れよ。⋯⋯汝に我が祝福を、新たな生命となりてこの世界へ転生せよ!」
そう俺は唱えた。するとゴーストを柔らかな光がつつみこんだ。あとに残ったのはゴーストだった布と青年。どうやら転生は成功したようだ。
今の俺、人間界に来てから史上最高に神っぽい!
『神王』は『ゴースト』を救った。
やっと本当に神様らしい1面をだせた




