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人が神を作った

王国歴582年。

その年を過ごす彼らにとって、今という時間はまさに今しかないものだ。


その中の一人、カラムも今を考えていた。

「一度帰ってこれからのことを検討せねばなるまい。」

「ですがカラム様。お時間が…。」


12時を告げる鐘が、街に鳴り響く。


「正午…午後には、ピメンタが‼︎」

先のことより、目の前のこと。

今はまだ、貴族の子息であること以上には物事を望めないのである。


「では、一度帰りましょう。」

「そうだな。急がねばならない。」


軽い服のおかげで、ある程度は早く帰って来られた。

リクの研究室で、服を取ってから自宅へ向かう。

リクは一度未来に帰ったが、1分ほどで帰ってきた。


「なぜ、そんなに早く帰ることができるのだ?」

「秘密はとても単純ですよ。」

リクは笑いながら告げる。


「時間を選択しているんです。」

「選択?」

「ええ。出発するときに、帰る時間を設定しておくんです。その時間を出た五分後とかにすれば、どんなにむこうで時間かけても、こっちでは一瞬ですね。」


簡単そうに言っているが、カラム達からすればとんでも無いことだった。

時間を操る。それも正確に。

聖人たちが知れば、神への冒涜だとか言いかねない。



リクの研究所から、少々歩いてビスカス邸に着く。

もう一度街に戻ってくる形になったが、南門は中心部の喧騒からは離れていた。


特権階級のみが住むこの地区。

皆総じて、優雅でなんの不自由もない生活を送っている。

そして、その使用人が苦労を背負って、ここで生活しているのだ。


カラムたちは一際大きな屋敷を目指して歩く。

カラムは純白の服、サーシスは執事用の燕尾服、リクは帽子をかぶり少し厚手の長い服を着ていた。

「あー、コートはこの時代に合わないかもしれないですねえ。暑いですし。」

リクはそんなことをつぶやいていた。



「おかえりなさいませ。」

「「「おかえりなさいませ。」」」


輪唱する声がエントランスに響く。

使用人たちは忙しそうに働いていた。


「さて、リクの部屋は何処にすべきかな?客室の空きは十分だっただろう?」

「8部屋はありますから、一部屋埋まっても問題ないかと。」

「では、一番手前の部屋にしよう。」


奇怪な四角い道具を周囲に向け、何かを記録しているリクを引っ張りながら、部屋に向かう。



しかし、リクの存在を両親に伝えていない。

早めに彼のことを伝え、そして自分の隣にいてもらわなければ。


ただ、自分の道を両親が許すわけがないことはわかっている。

どうにかして、自分の道を隠さなければならない。



「この部屋を自由に使っていい。何かあればサーシス始め、使用人に言ってくれ。」

「ありがとうございます。」

「だが、まず父上に挨拶しに来てもらう。」

「それはもちろん。」


エントランスから向かって右側が客室。

反対に向かって左側がビスカス家の部屋である。

その中でも、大きい部屋が父親の職務室である。


ノックをしてから、入る。

「失礼します。」

「カラムか。最近は外に出歩いているそうだが、格を落とさないように気をつけてほしいものだな。」


開口一番、息子にさりげなく毒を吐いたこの男がラウルス・ビスカス・ヌァダ。

カラムの父親である。

ペンを持った手を止めずに、話を振ってくる。


「何用だ?今日はツリパ家の令嬢が来るはずだろう?準備はしなくていいのか?」

「ピメンタのことは大事に考えています。」


ラウルスは、カラムの言葉に持っていたペンを置いた。

「まあ、カラムはまだ子供だからな。愛だとかくだらないことに目を向けるより、今を楽しむべきだろう。嫌でも、彼女とは結婚することになるのだからな。だが、あまり羽目を外しすぎるなよ?我がビスカス家の名に泥を塗られたくないのでな。」

嘲笑するような調子で言う。

カラムの手にグッと力が入るのをリクは見逃さなかった。


「そして、ここに連れてきたそこの者の名も聞いておきたいのだが。」

「彼はリク・シマザキ、私の家庭教師です。」

「家庭教師?それなら既につけていたはずだろう?あの者はどうする。」

「それは…。」


黙ってしまったカラムの横にリクが歩み出る。


「ご紹介にあずかりました、リク・シマザキです。私から申し上げてもよろしいでしょうか?」

「良いだろう。」


「私は、歴史を専門的に扱っています。それ以外にも数字的学問や芸術にも一定の知識はあるつもりです。しかし、魔法力学や言語学は圧倒的にできません。ですから、問題はないかと存じます。カラム様の歴史に対する知識を少々補うだけですので。」

「確かに、歴史を教えられるものはいなかったな。しかも、名を聞けば無信仰と見える。これは偏った見方が無さそうだな。」

「お褒めにあずかり光栄です。」


表面的にはお互いに笑顔を見せているが、内心ではどう考えているのか全く読めなかった。


「しかし、無信仰とは面白いな。恩恵を受けたいとは思わなかったのか?」

「『神が人を作ったのではない。人が神を作り上げたのだ。』」

「何?」

「私の尊敬する人物の言葉でして、宗教観にとらわれると正しい歴史認識ができなくなる、という意味だそうです。」

「それはもっともだが。」

「何か上手くいっても自分の力ではなく神の手助けだといい、悪いことがあれば神に縋って全く行動しないのは愚かではありませんか?少なくとも私はそう考えますがね。実力は誇るべきであり、窮地に陥ったのなら、最善策を打ってから最後の最後で運に頼るべきでしょう。もっとも、運ですら実力のうちと考えています。ラウルス様は神に縋るような人ではないと、信じていますので。」


部屋に沈黙が訪れる。

数瞬の間の後、それを破ったのは、全く予想しなかったラウルスの笑い声だった。

「ふふふ…ハッハッハッハッハ‼︎なかなか面白い!気に入ったぞ!」

「ち、父上?」

カラムはついていけない。

「君は愚民共とは違うな。カラム、彼には歴史以外にも様々なモノの見方を教えてもらえそうだな。」

「は、はい…?」

わからない。

二人は一体何を交わしたのだ?

「よし、下がれ。話は以上だろう?」

「では、失礼いたします。」

先に部屋を出て行ってしまうリク。

「リク、待て!し、失礼します!」

カラムは慌てて追いかけていった。


一人残った職務室で、ラウルスは笑みをこぼす。

久しぶりに面白いものが見られた。

そんな笑みだった。

しかし、彼は知らない。

リクも同様に笑みを浮かべていたこと。


「なかなか楽しめそうじゃないか…。」

同時に彼らが呟いたのは、それこそ神の悪戯ではないだろうか。


このページをご覧くださり、ありがとうございます

高砂団子です


今回の話は少々短めです

正直に言うと全く書き進みませんでした

書き終わったのが日曜の昼。推敲する時間などございませんw

今回の文章はかなりひどいですね


次話は頑張りたいと思います


次回投稿は6月27日です

それではまた次回お会いしましょう

失礼いたします

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