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何も知らない


精神的な疲れからか、珍しく寝坊しそうになったカラム。

使用人に起こされなかったら、昼まで眠っていただろう。


使用人は屋敷の中を忙しなく動いている。

しかし、彼らが主人たちの邪魔になることは決してない。


人でありながら、彼らは陰であることを貫いている。

事実、存在は知りながらもカラムが見たことがない使用人がいる。

そうした使用人の多くは本当の下働きであり、執事やメイドのような綺麗な服も着ていない。


朝食をとった後、書庫に向かう。

調べたいことがあった。

その途中で執事に今日の予定をきいておく。

「本日は、ピメンタ様がお越しになると。」

「いつだ?」

「午後を予定されております。」

つまり午後までに帰って来れば問題ないと。


「カラム様。」

「なんだ?」

一瞬の静寂。


「お出かけになるときは私どもに一声お掛けください。」

「っ!」

どこまでもお見通しなのか。

流石は長年勤めてきた者。


「今日は…行くつもりは……。」

「カラム様?」

最近の抜け出していたことに対して、注意をしているだけなのかもしれない。

母親にでも告げ口されたら面倒臭いことこの上ない。

ためらいながらも、

「……サーシス!ついてこい!」

と言う他なかった。

「かしこまりました。」


書庫につき、本を探す。

伝説について書かれたものを探っていく。

書かれている内容は、昨日見た風景とは大きく異なっていた。


美しい魔法が、邪なる怪物を倒していくという内容。

脚色しているにもほどがある。


いや。

言葉として残すにはこうするしかなかったのかもしれない。


「はあ…」

溜息を吐きながら本を戻す。


「とりあえず、リクのところに行くか。」

つぶやくように漏らす。


「サーシス。」

「はい。」

「出かけようと思う。ついてきてくれるか?」

「先ほど、承りましたので。」

「はは。そうだったな。」



林に行くと小屋は同じようにあった。

コンコンとノックをする。

「どうぞ。」

返事が返ってくる。

扉を開ける。


「待ってましたよ。お湯が湧いてますから。どうぞお茶でも。」

リクは、机で何かを読んでいた手を止めて、こちらに向き直った。

そして、サーシスを見て

「こちらの方は?」

とカラムに尋ねた。


「ジンギバー・サーシス・ヌァダ。うちの執事だ。

サーシス、こっちが…「リク・シマザキです。」

カラムの紹介の前に、リクは自己紹介を済ませてしまう。

その様子にサーシスとしては驚きを隠せない。

しかし、それよりも主人たるカラムに聞いておくべきことがあった。


「この方は何をなされているのですか?」

職業やその他、尋ねたいことをいろいろ含めた言い方だ。

「彼は…何をしているんだ?そうだ、リク。貴様は何を生業としているんだ?」

ここでカラムは、リクについて何も知らないことを知る。

(1日の間ではあるが)今まで流れで彼に引っ張られていたので、カラムは名前以外情報を聞いていない。


「私は、歴史観察学というものを学んでいる研究者です。」

「レキシカンサツ?」


「少し前までは考古学と呼んでいましたが、今はいわゆるタイムマシンが有りますので、その時代を見てくることができます。そうすれば、より具体的に過去を観て、調査をすることができます。なので、「古きを考える」学問から、「歴史を観る」学問へと名称が変わりました。」


「要するに、研究者なのだな?」

「はい。」


しかし、カラムやサーシスの頭の中にある研究者のイメージと、リクの姿は大きく異なっている。

研究とは、神官など、上級職についている人間が行うものだ。

必然的に厳かな雰囲気であったり、大きな器具を必要としたりするのだが、リクの場合はほぼ何も持っていない。

その辺りが、リクと自分たちのズレなのだろうかとカラムは考える。


「しかし、本当に執事さんですかあ…。あとで写真に残させていただきますね。」

リクはそう言いながら、小型のティーポッドから茶を注いでいる。

しかし、淹れているカップには取っ手がないようだし、何より茶が毒々しい緑色だ。

かなり気味が悪い。


カラムが、目の前に出された緑色の液体に口をつけようとしないのを見たリクは、部屋の箱の中からスプーンを取り出した。

「銀でできていますので。」

銀は毒に触れると変色する。

毒ではないことの証明だろう。

「カップは湯呑み茶碗と言います。その緑色の液体は緑茶です。」

「緑の茶というわけか。」


「さて…。」

とリクが切り出す。

「何かをご用件がお有りだったのでしょう?」


「教育を広めたい。そのための助言を受けたいのだ。」


彼なら、それを成し遂げるために必要なことを知っていると思ったからだ。

リクなら、即座に飛びついてくれるだろうと踏んでのことだ。


しかし、リクは明らかに動揺していた。

「あ、カラム…教育…これは、あれですね…あの、いわゆる…。」

手元の道具を動かしながら右往左往している。


「大丈夫か?」

「えっと、あの、これ以上の干渉は…確認してみてもいいですか?」

「構わないが。」


リクはすぐに、部屋の奥にあった装置を触る。

耳に小さな機器を入れ、口の前に小さな板のようなものを持ってくる。

誰かと会話をしているようだ。


「サーシス。」

「はい。」

「彼はどうだ?」


「魔力も筋力も貧相に見えますね。しかし、この部屋自体から複数というより無数の魔力を感じるのでそれに覆われて見えないだけかもしれません。しかも、あの服ですと体のラインがはっきりとは見えませんので憶測でしかわかりません。」

「なるほど。今の所不可解な点などは?」

「彼の話自体が不可解と言えば不可解ですが、昨日カラム様にそれを証明なさっているのなら信じます。それに彼の表情などからは嘘をついているようには見えませんでしたし、今の動揺も演技には見えませんでした。」


長年色々な人を見てきたサーシスの観察眼は信用を置ける。

また、武術にも長けているので人の体つきで物理的強さを計ることができる。

魔法も使えるというのを親から聞いたことがあるが、使っているところは見たことがない。

使えるから、人の魔力を見ることができるのだろう。



「なにやってんのよ‼︎‼︎」


そんなことを話していると、部屋に大きな女性の声が響く。

見ると、リクが耳から装置を外して、耳を抑えている。


「わかってるけど…俺の耳が…。」

「なに考えてんの⁉︎歴史干渉は禁止事項じゃない‼︎」


かなり大きな音のようで、カラムたちにも女性の声が聞こえてくる。


「どうしようもないから…宮っちに聞こうかと思ったら、お前が出たんじゃねえか。」

リクは嘆いている。

自分のせいでなにか悪いことになったかと思ってしまい、居心地の悪いカラム。


「宮っちいないの?いるなら変わってくれ。お前の声で耳が死にそうなんだが。」

「声大きくて悪うございましたね‼︎」

「っ‼︎痛えっつってんだろ…。」


リクの耳元から聞こえてくる声が高い女性の声から低い男性の声に変わる。

その瞬間、リクの口調が変わる。

「所長。話は…はい。ええ…そうなんですよ。そういうことに…はい?え、僕がですか?なる…ほど…わかりました!」

何を話しているのかはカラムにはわからないが、リクの表情が明るくなっていくのはわかった。


「はい。失礼します。」

リクの会話は終わったようだ。


「どうだった。」

「特例で許可がおりました!これで心置きなく、この歴史に干渉できます!」


言っていることがちょっとずれている気がするが、カラムに助言するということが許可されたのだろう。


「では、まず外に行きましょう!」

「え、いや…」

「服はこちらで用意したものに着替えてもらいます。あーっと、執事さんも一緒に!」


昨日と同じように、リクの勢いに流されてしまいそうになる。

だが、今日は一人ではない。

サーシスがいる。


「お待ちください。何故、カラム様のお召し物を変える必要があると?また、カラム様はあなたにお話を伺いに来たのです。ですから、話をする前に外に出るというのは…。」

「百聞は一見にしかずってね。要は、卓上で議論するより、実際見たほうが早いだろうって話です。着替えるのも、より見やすくするためです。いいですか?」

リクの言葉から所々敬語が抜けている。

それだけ、リクが興奮しているということだろうか。


カラムは、もはや唖然とした表情でされるがままだった。

サーシスは、やれやれといった感じでその様子を眺めている。



「では、行きましょうか!」

リクは勢いよく扉を開けた。


このページを見てくださりありがとうございます。

高砂団子でございます。

やっと、リクの正体が多少わかりました。

それに加え、なにやらリクの仲間がいるようですね。


読んでくださればわかると思うのですが、三千字ではほとんど話が進まない。

よって、二週間かけてこれしか進まないというのが現状です。

実際、これが限度です。


未だにあらすじを回収しない中、この先続けられるのでしょうか?

次回あたりには回収したいです。


それではまた次回。

失礼いたします。

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