不思議な二度目
「・・・・うっ!?」
瞼が痛いぐらいに瞳を開いた俺は、耐えきれない吐き気に体勢を崩して四つん這いになった。こみ上げてきた苦みを抑えることができず、盛大に吐いた。酸っぱい臭いが森に広がる。
胃の中の物を吐き切った後もそのまま動けなかった。頭の中に悪夢のような光景が繰り返し再生されて、そのたびにえづく。結局何とか座れるようになったのは十分ほど経った後だった。俺は肩で息をしながら、近くの木の幹に寄り掛かった。そのまま目の前をちらりと見ると、狼は白の毛を月に輝かせていたところだった。瞳は閉じられていて、起きだした様子もない。
ならばあれは何だったのか。
あの首を噛み砕かれる感触も、死の直前の絶望感も、少しも夢だとは思えない現実味を帯びていた。その元凶ともいえるのが、今目の前にいる狼だ。
たしか……居眠りをしてやられたんだっけな
あまり思い出したくないが、今あるヒントはこれしかない。必死に曖昧な内容を手探りに思い出し始める。
あれがただの夢なわけがない。おそらく予知夢か、それに似たもの。ここは何でもありの異世界だ。常にあらゆる可能性を模索しなければ。
まずこの狼をなんとかするのが一番早い解決方法だ。紐か何かがあれば拘束できたのだが、生憎俺は一文無しどころか食べ物にすら困っている状態だ。紐どころか糸すらない。
ならば俺が逃げ出すか?いや、それも却下だ。この暗い山道を月明かりだけを頼りに下りるなど、よくよく考えてみれば無謀にもほどがある。その意味では狼を見つけて戻ってきたのは幸いだ。
どうしようか。すっかり行き詰まってしまった。それでものんびり考え込んでいる時間はない。
いつのまにか俺は、目の前の狼から少しずつ後ずさっていた
最近寝起きが悪いです。
……