見上げてみれば
木々とすれ違うたびに罪悪感が心に突き刺さる。俺は苦しくて苦しくて、その苦しさから逃げるためにさらにスピードを上げた。
「・・・・はあっ・・あっ!?」
真夜中に、それも足元なんて見ないで全力疾走したせいだ。俺は地面に飛び出た木の根に躓いて転んだ。それなりに早かったせいか数秒ほど宙に浮かんで、それから膝から地面に投げ出された。ゴロゴロと二三回前に転がって、木の幹にぶつかって俺は止まった。
「うっ・・・・」
痛い。見れば膝が擦り切れていて血が出ている。打った背中も負けないぐらいにジンジンと熱い。
気が付けば俺の頬に涙が伝っていた。うわ、かっこわりぃ。この年になって転んで泣くとかだせぇ。歯を食いしばって涙を拭くも、まるで意味がないぐらいにあふれ出してきた。
「・・・・クソ」
わかってる。痛いから泣いてるんじゃない。
「クソ!」
なんで俺が。
「クソ!!」
あいつが悪いんだ。悪夢が悪いんだ。
「クソ・・・・ッ」
俺は悪く・・・・。
顎が痛いくらいに歯を食いしばって、俺は涙を拭き続けた。
俺は悪くない。だってあんな夢を見たらだれだって逃げるにきまってる。それに加えてここは異世界だ。あんなでかい狼がいる時点で何が起きたっておかしくない。そんな状況で、俺みたいなただのキモオタがなにができる?もしもあの夢のとおりに俺が死ぬんだとしたら、そんなことを想像するだけで身の毛がよだつ。
要は俺はもう二度と、死にたくないのだ。
死ぬことがどういういうことか、それは身をもってしてしまったことだから。
ふと見上げてみると満月が見える。しかしもう、あの月光に照らされた狼の美しい毛皮を見ることはないだろう。そう思うと少しだけ名残惜しい気がしなくもなかった。
うおおお!連休嬉しいぃぃ!




